★阿修羅♪ > 戦争77 > 235.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
□新ニクソンとしてのジョージ・W・ブッシュ [暗いニュースリンク]
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2006/01/wby_e6e5.html
01/02/2006
「新ニクソンとしてのジョージ・W・ブッシュ」byジョン・ディーン
ブッシュの違法盗聴問題を語る場合、ジョン・W・ディーン以上の適任者はいないだろう。法律学者である同氏は、ニクソン大統領の法律顧問を務め、ウォーターゲート事件ではホワイトハウスによる捜査妨害に加担し、有罪を宣告され4ヶ月の禁固刑を受けた人物である。
合衆国史上最初の大統領弾劾劇の渦中に居た当事者として、また合衆国法の専門家として、ディーンはブッシュの弾劾を確実視し、ブッシュ政権に法律上のアドバイスをする司法省職員ジョン・ヨーの能力を疑問視している。法学者であるヨー氏は、チェイニーやラムズフェルドも所属した極右シンクタンク・AEI(アメリカン・エンタープライズ研究所)に客員学者として所属し、ブッシュ政権のテロ容疑者拷問戦略のために独自の法解釈をアドバイスしている。今回は法学情報サイトFindLawに2005年12月30日付で掲載されたジョン・W・ディーンのコラムを以下に全文翻訳した。
------------------------------------------------------------------------
さて、2006年になって、ブッシュ政権は年初からいよいよ窮地に陥るだろう。下院院内総務でブッシュの親友トム・ディレイ議員が起訴された『共和党スーパーロビイスト』ジャック・エイブラモフ事件の捜査は、主犯のエイブラモフ氏が司法取引に応じ事件の詳細を証言することになり、捜査は米議会全体に拡大される予定だ。大学時代から共和党活動を通してエイブラモフと知り合った親友カール・ローブにとっても困った事態になるだろう。
2006年は上院・下院議会選挙の年だが、エイブラモフ事件との関わりが注目されるランディ『デューク』カニンガム事件(国防企業と議会の賄賂スキャンダル)捜査の拡大も共和党には大打撃となるだろう。(ところで、エイブラモフ事件と911テロ主犯モハメド・アッタには意外な接点が見つかっている。なんという偶然!)
ヴァレリー・プレイム事件(プレイムゲート)捜査も、大統領側近の起訴へと近づいている。同事件の捜査継続により、イラク戦争の開戦口実をめぐるブッシュ政権の情報操作疑惑(ダウニングストリートメモ事件)の調査を求める声はより大きくなるだろう。(2004年大統領選挙におけるオハイオ州不正調査も含め、疑惑の追求を続けるジョン・コンヤーズ米下院議員の努力が報われる時期がくるかもしれない)
スキャンダル捜査でがんじがらめのブッシュ政権は、どのような脱出策を用意しているだろう?・・・仮に国内テロ事件が再び発生したら、違法盗聴は正当化され、政府内の内部告発者は全て処罰対象となり、支持率を回復したブッシュはテロ発生の責任をイラン・シリアに擦り付け、次の戦争を開始するだろうか?・・・そんな最悪のシナリオが実現することのないように祈りたい。
新ニクソンとしてのジョージ・W・ブッシュ:違法な盗聴、そして弾劾
国家安全のためなら大統領は議会法を違反し得ると両者共に主張
by ジョン・W・ディーン:FindLaw2005年12月30日掲載(commondream転載)
http://www.commondreams.org/views05/1230-39.htm
2005年12月16日金曜日、ニューヨークタイムズ紙はジェイムズ・ライセン記者とエリック・リヒトブロー記者の手による重要なスクープ記事を掲載した。同記事によれば、ブッシュ大統領は、外国諜報活動偵察法(Foreign Intelligence Surveillance Act:FISA)で定められた手続きを無視し、国家安全保障局(National Security Agency:NSA)によるアメリカ国民に対する令状なし盗聴を承認したということだ。
同記事には、ホワイトハウスの違法行為に関する驚くべき情報が綴られている。それによると、2002年のある時期から、ブッシュは大統領特別命令として、合衆国内と諸外国の間で交わされている電話や電子メールの内、アルカイダと直接的、あるいは間接的に関係していると信ずる通信の探知と傍受をNSAに承認したという。
スクープ公開当初、ブッシュとホワイトハウスは、大統領が法律を無視したかどうかについて口を閉ざし、肯定も否定もせずにいた。ジム・レーラーにインタビューされた際も、ブッシュは話題について話すことを拒否していた。
その後、12月17日土曜日に、大統領ラジオ演説で、ブッシュはタイムズ紙の記事内容が正しいと認めた。そんなわけで、大統領弾劾の要件となる重罪を犯した事実を、彼は認めたのである。
令状なしの盗聴が法律違反であり、弾劾されるべき犯罪であることに議論の余地はない。なにしろニクソンも、違法な盗聴行為によって合衆国憲法第2条にある責任を問われた際、やはり国家安全のための盗聴と主張していたのだ。
こうした二つの違法行為の相似性は、以前に私のコラムで話題にしたように、両政権の憂慮すべき相似性が継続していることをはっきり示している。
実際、今回の件で、ブッシュはニクソンを超えてしまった。ニクソンの違法な盗聴行為は限定的だったが、ブッシュのそれは現在も進行中であり、盗聴範囲もはるかに広範に及んでいる可能性がある。最初のスクープでは、NSAの盗聴対象は国内と国外を結ぶ海外通話に限定されており、一度に500通話を超える盗聴は行われていないとされていた。ところが、最新の報道によれば、NSAは文字通り数百万件の通話を『データ集積』しており、電話会社の協力の下で、海外通話と国内通話の流れを跨って盗聴しているとみられている。
要するにこれは、おおがかりな、ビッグブラザー的電子監視である。
国家安全と密接に関係していることを理由に、タイムズ紙は1年間もこの記事を公開しなかった。そして今、同紙はその記事を解禁し、ブッシュは記事内容を漏洩した情報源の捜査を命じている。大統領は、監視されていないと自信を持っていた人々は、その確信を失い、他の通信手段を模索するだろうと示唆する。暗号化や符号化以外に、どのような方法があるか想定するのは難しい。
そのような情報漏洩元の捜査は皮肉でしかない。情報漏洩の結果として、ブッシュ自身の違法行為が発覚したからだ。犯罪者としていぶり出すことにより、ブッシュは裏切り者を見つけ出そうとしている。
ニクソンの盗聴と議会の対応
ニクソンはFBIを使って、国家安全保障会議メンバーの内5人と、2人の報道関係者、そして国防総省の職員二人を盗聴していた。これらの人々が盗聴された理由は、ベトナム戦争を巡るニクソンの計画(当時は戦争中だった)が、ニューヨークタイムズ紙のトップを飾ったからだ。
盗聴行為についてニクソンは、国家の安全を理由に正当化した。情報漏洩の防止は、国民だけでなく、アメリカの敵も計画を知ることになることを防止できるというのだ。しかし、盗聴から得られた情報の利用は、そうした正当性を超えていた。数件のスキャンダラスな断片情報が、政治目的に利用された。それ故に議会は、そうした盗聴活動が、それにより集積された情報の悪用と一体化しており、弾劾されるべき違法行為とみなしたのであった。
ニクソンの辞任に従い、フランク・チャーチ上院議員は盗聴活動による情報の悪用について調査する委員会を設置した。電子盗聴に関する同議員の報告が契機となって、外国諜報活動偵察法(FISA:Foreign Intelligence Surveillance Act)が提起されたのである。同法により、電子盗聴への制限が生まれ、司法省内に秘密法廷(FISA法廷)が設立され、その秘密法廷は、同法の制限内において、政府機関による盗聴活動申請の許可を行うことになった。
外国諜報活動偵察法の目的が議会の承認しない盗聴活動の抑制だったことは、同法の成立過程を見れば明らかだ。従って、FISA法廷の許可なき盗聴活動をブッシュが承認したことは、違法なのである。
盗聴の是非については議会次第
活動の目的が問題となっているわけではない。テロの可能性については疑いようもなく、いつ発生するかだけが問題なのだ。そうした攻撃を防止することの重要性についても疑う者はない。
今問題になっているのは、目的達成のためにブッシュの選択した手段である。大統領の決断は、単に議会を迂回しただけでなく、この分野ですでに確立済みの法律に違反しているのだ。
現在の議会は共和党の支配下にある。世論調査によれば、アメリカ国民の大半はテロ防止のためなら人権を諦めると回答している。合衆国愛国法(USA Patriot Act)は多数の支持を得て可決した。ブッシュ大統領は、自身が必要と考えた許可を、なぜ議会に求めなかったのだろう?
その答えは簡単に言って、議会が大統領職を点検する時代に、副大統領ディック・チェイニーはフォード大統領の首席補佐官だった頃から変わりないということのようだ。そしてチェイニーは、大統領特権の行使に際して議会法を無視する権限が大統領にあるという彼の考えを強調したかったのだ。ブッシュはチェイニーの計画に沿って行動しているに過ぎない。
ブッシュほど最高司令官としての権限---合衆国憲法第2条に規定される、国家安全の名の下にいかなる行為も許されうるという立場に積極性を持った大統領は過去に例を見ない。もっとも、私の元上司リチャード・ニクソンも似た姿勢の持ち主だったが。
国家の安全における大統領の権限:ニクソン支持派の視点
国家安全の名の下に大統領が行う行為は、たとえ法律を犯していても違法ではない、というニクソンの辞任後の主張は有名である。
ニクソンの考えは(彼は法に精通していた)、市民戦争時代のエイブラハム・リンカーンの先例によるものである。ニクソンは、リンカーンを引用しながら、インタビューで言った:「憲法違反の恐れがある行為も、憲法と国家の保全を目的に行われた場合は、合法たり得るのです。」
インタビューをしたデビッド・フロストは、ニクソンが違法な盗聴の標的としていた反戦活動参加者達を南軍に喩えるのは無理がある、と即座に反論した。ニクソンはそれに応えて、「ベトナム戦争によってこの国はイデオロギー上分断されており、リンカーン大統領時代に市民戦争によって国が分断された頃に等しいのです。」と反論した。脆弱な答弁だが、彼としては精一杯であろう。
上院政府諜報活動調査特別委員会(委員長に因みチャーチ委員会という呼び名で知られる)において質問された際にも、ニクソンは同様の主張をした。特に、ニクソンが委員会に対して言ったのは、「1969年、私の政権時代、令状なし盗聴は政府が行ったとしても違法ですが、国家安全上の利益のために大統領により決定された場合は合法なのです。それを支持する法的根拠もありまして、例えば、カッツ対合衆国政府の裁判の際、ホワイト判事は同意意見を唱えています。」(カッツ事件により、盗聴行為とは個人の家宅捜査と同様に合衆国憲法修正第4条における『捜索押収』を構成するという意見が確立され、それ故に合衆国憲法修正第4条に規定される令状の要請が、盗聴についても適用されることになる)
さらにニクソンは、まるで予感していたように、そして合理化理由をブッシュに与えるかのように書いている:「現在も、そしておそらく将来も、我が国の安全上の利益のために大統領が合法的に行為を承認できる状況でさえ、人々に承認され、あるいは別の状況で大統領により承認されていても、違法とされてしまう。」
議論上、仮にニクソンの論理を受け入れるにしても、ブッシュが直面している「状況」は令状なし盗聴を正当化できる類のものだろうか?その答えはノーであると私は信じる。
ブッシュの令状なし盗聴行為は正当化されるか?乏しい説得力
もしブッシュが、2001年9月12日に大統領特別命令を発令し、一時的措置として、議会の承認を保留した場合、そうした状況は彼の主張に沿ったものになるだろう。
あるいは、特別に深刻な攻撃の脅威から、特定の捜査において令状なし盗聴を許可する状況にブッシュが追い込まれ、議会の承認を得る時間が持てなかった場合、それもまた正当な事情となるだろう。
しかし、2002年のおおまかな大統領特別命令から数年が経過した現在、その全期間と通して、ブッシュは自身の行為について法的承認の求めを拒否している。さらに、法を無視できるとブッシュが主張するような特殊な状況時における大統領の権限について、議会が明確に制限をしている事実を、大統領が見逃すはずはない。
ブッシュは自身の行為について、ひとつの法的説明を試みているが、お笑い草である。彼によれば、911テロ後に議会が承認したアフガニスタンのタリバンに対する武力行使の権限は、FISA適用の例外に関しても暗黙に許可しているというのだ。
正常な神経を持った議員であれば、軍事行動の承認がそのような許可を派生させるとは信じていない。法科1年目の学生でも間違ってそのような主張を行う者はいないだろう。もはや拡大解釈どころではなく、馬鹿げている。
しかし、ブッシュの自己弁護の核心は、まさにニクソンの主張に依存している。つまり、大統領は単に、憲法第二条に定められた最高司令官としての権限を行使しているに過ぎないというものだ。これもまた、心もとない反論である。その主張を書いたジョン・ヨーは利口だが、未熟で極端に党派的なボールト法科学校の若い教授で、政府機関を頻繁に出入りしている人物である。
ヨーの仕事---最近出版された書籍---に具現化された欠点と誤りを見るには、ジョージタウン大学法科学院教授デビッド・コールの書評にある分析を読めば事足りるだろう。コールは当該分野の法に何年も取り組んでおり、ヨーよりもはるかに深く探求している。
ヨー教授の法的考察がファンタジーに縁取られたものであることがわかったので、コール教授の現実世界的分析の結論にある現実的な指摘には感激した。「マイケル・イグナーティエフは書いている:“ただ単に片方の手を後に縛られるだけでなく、その状態で戦うべきであるというのが、まさに民主主義の本質である。民主主義ではその性質上、民主主義故に敵よりも優勢になれる。”ヨーはブッシュ政権に、拘束を解いて法の支配という制約を破棄せよと説得した。おそらくそれが、我が国が優勢になれない理由であろう。」
私が付け加え、勧めたいのは、ダニエル・ベンジャミンとスティーブン・サイモンによる厄介な報告だ。彼等はテロ対策を専門としており、クリントン政権時代に国家安全保障会議のメンバーを務めていた。両氏は最新の著作『The Next Attack: The Failure of the War on Terror and a Strategy for Getting It Right』の中で、テロリストが大惨事をもたらすために利用可能な制度上の抜け穴を塞ぐことにブッシュ政権は完全に失敗したと書いている。イラク戦争はテロ解決にはならない。むしろ、テロリストを生み出し、アメリカの利益を護るための資金を転用させている。
特にブッシュの令状なし盗聴は、効果がほとんど望めないらしい。私が話した専門家達によれば、ブッシュのやり方は、ことわざにあるように、干草の山から針を探すようなものだという。NSAのような洗練されたデータ集積設備も、例えば、認知しない符号は解読できない。従って、符号で通信するテロリストは、仮にデータ集積が及んだとしても、拘束を逃れることができる。
要するに、ブッシュは幸運を願っているのだ。そのようなギャンブルは、露骨な議会法違反の口実とするには不充分に思われる。議会の承認がないまま行動することで、ブッシュは自身の大統領職が未検査であることを強調してしまった。彼自身も、彼の弁護士の視点でも、これは全くの違法である。今やブッシュは、NSAの恐るべきパワーをアメリカ国民に向けて使っているのだ。彼は次にどういう権力を行使するだろう?その際国民は、そして議会は、大統領が新たな権力を実行している事実を、いつ発見することになるのだろうか?
(以上)