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ブッシュ米大統領が、「イラク戦争は間違った情報に基いて行われた。その責任は自分にある。ただしサダム・フセイン政権を倒したことはいいことだった」との声明を発表した。
まともな人が聞いたらあきれ返るだろう。独立国に対する理由なき戦争で数十万人のイラク人と2000人を超す自国兵士を犠牲にしたのだから「ごめんなさい」で済むことではない。アメリカによくあるBefore and after(使用前と使用後)の広告ではないが、アメリカのイラク侵略の前と後を比較すると立派な戦争理由があったことがわかる。
Before:イラクの原油の決済通貨は2000年11月以来ドルからユーロに切り替えられ、OPEC諸国もイラクに追従する国が多くなりつつあった。そのため原油生産に見合ったドル需要が減り、ドル安、ユーロ高の原因になっていた。有望な油田の権利はロシア、中国、フランスに与えられ、それぞれの国は開発工事に取り掛かろうとしていた。正にアメリカは世界最大のエネルギー宝庫中東から締め出されようとしていたのである。
After: 2003年3月、米軍は一方的にイラク侵攻、3ヶ月でイラク全土を占領、15万人の軍隊と3000人に及ぶ大使館員を送り込みイラクの軍事と行政を掌握した。結果イラクの原油決済通貨はユーロからドルに戻り、中ソ仏の利権は葬られた。今アメリカはイラクを拠点に近隣アラブ諸国に民主化圧力をかけ、やがて中東を民主化の名のもとにドルの支配下に置くことになるだろう。
イラク戦争の前と後を見ればアメリカの戦争目的がテロとは些かの関わりもないことがわかる。ブッシュの「間違った情報」とは真の目的を隠すための口実であった。
「目的のためには手段を選ばない」のが政治の基本であり、目的とは常に犯罪であり、政治家の良し悪しは「犯罪を正当化する能力」に掛かっている。
(2005年12月20日)