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マインド・コントロールの歴史と極秘にされた人体実験T
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マインド・コントロールの歴史と極秘にされた人体実験W
のつづきになります。
スティーモシーバー
1968年、CIAのサンゴンでの秘密実験と同じ年ではあるが、アメリカのイェール大学にいたホセ・デルガドは、人間の患者を使って無線を使った脳のコントロール実験を行っている。その装置は「スティモシーバー」(stimoceiver)とデルガドによって名づけられたもので、研究者はコントロール装置を使って、患者の脳の各部位を電極によって刺激することもできるし、また脳のそれぞれの部位に発生した脳波(EEG)を電気信号に変換し、これをコントローラーが持つ受信装置に送信することもできる。これは双方向性を持つ脳のインプラント装置の最初のものだ。
ただし、この時点では、完全な埋め込み装置ではなく、電源や経路自体は頭の外部にあり、実際は患者の頭部に包帯で固定されている。この装置によって、患者に対する脳の電気刺激、脳波の記録が、自然に近い状態で、そして長期間にわたって行うことが可能となった。 遠隔操作による脳刺激の実験風景(source)Jose Delgado's "Physical Control of the Mnd" 1968年にデルガドが使ったスティモシーバーは3チャンネルのものだった。これにより、3ヵ所までの場所を自由に選択して刺激することができる。刺激の強さなどのパラメーターも、コントロール装置により遠隔操作が可能だ。J・Pのイニシャルを持つ白人の20歳の女性が実験の対象になった。1歳半から脳炎で、側頭葉性の顧癩を持ち、10年以上激しい発作に苦しんでいる。さらに、よく攻撃的な行動が起こり、一度は見知らぬ人の心臓をナイフで刺したこともあるし、病院でも看護婦の胸をハサミで突き刺したことがある。 脳波の測定から、側頭葉から異常が見つかった。さらに詳しい研究により、側頭葉の内側にある扁桃核(amygdala)と海馬(hippocampus)に発作の源となる原因があるらしいことがわかった。これは遠隔操作を使った電気刺激実験でも確認された。彼女が研究者といっしょの部屋にいる時に、彼女は自分の好きなこと、例えば、ギターの演奏などをしている。その時に、別の部屋にいる研究者の仲間がスティモシーバーの刺激スイッチを押すと、1.2ミリアンペアの電流が患者の扁桃核に流れる。すると、刺激の7秒後に、突然、激怒の発作が始まり、彼女は部屋の壁に身体をぶつけたり、怒りながら部屋のなかを歩き回った。しかし、彼女の怒りが部屋の中にいる研究者に向けられることはなかった。 怒りを表現して数分間たつとようやく、彼女は徐々にもとの状態に戻ることができた。扁桃核への刺激は、それまでの動物実験でも知られていたが攻撃性を生む反応が起こるようだ。デルガドの実験より10年以上も前の1954年のロバート・ヒースの実験でも、分裂症の患者の扁桃核を刺激することにより、怒りや恐怖の反応がやはり起きている。患者のひとりは、「自分がどうなったのかわかりません。自分が、何か、野獣のようになったように感じます」と、刺激の効果を表現している。 今までに脳のいろいろな場所の電気刺激によって引き起こされた反応をあげてみよう。運動や感覚をはじめ眠気、睡眠、吐き気、眩最、記憶の再生、記憶障害、幻想、錯覚、怒り、恐怖、不安、孤独感、快感、性欲などさまざまな感覚、感情が作りだされている。もしこれだけの反応が自由にコントロールできるなら、人間の操作の可能性は非常に大きい。 ここまで説明をしてくると、1968年のCIA実験がなぜ失敗したのかが不思議に思えてくる。脳の中隔部を刺激すると快楽が得られ、扁桃核を刺激すると被験者は激怒するなど脳のどこを刺激すればどんな反応が得られるかという感情の脳地図(三次元版)を作成することができれば、人間の感情コントロールが電気刺激によって可能となるのではないか?実際に、運動や感覚などでは、ペンフィールドが作ったように、誰にでも当てはまるような細かな脳地図(二次元版)がすでに作られている。なぜサイゴンでの実験は失敗したのか。その答えは、心の脳地図の作成が思ったよりも簡単ではなかったことにある。当初は、この困難さが研究者のあいだでも理解できていなかったのだ。 ESBをもしマインド・コントロールに応用しようと考えれば、コントロールする側の望む反応が確実に得られる必要がある。これには、特定の反応が特定の場所の刺激から得られるということで、その関係を表現した信頼のできる「地図」が必要となる。脳の中心溝(ローランド溝)をはさんだ運動・感覚領野が地図に示された場所は、個人によってその分布に多少の差があるにせよ、すべての人問からその反応を得ることができる。しかし、感情や記憶の再生、幻想などはこれまでに被験者となったすべての人間から得られたというわけではない。 例えば、ペンフィールドも、「(側頭葉の刺激によって得られる)特定のメンタルな反応は限られた者からしか得ることができない」と語っているし(1963、ペンフィールド&ペロット)、周縁系(扁桃核、海馬、視床下部)の刺激によっても、グルーア(P.Gloor)による研究では、35人の患者のうち14人からしか経験的反応は得られていない(1982、グルーア)。中側頭葉(MTL、扁桃核、海馬など側頭葉の内側にある部位)の刺激を研究したハルグレン(E.Halgren)の研究でも、感情的反応が得られたのは35人の患者のうち、ほんの8人だけだった。さらに、その反応の内容をみると、恐怖、緊張、神経質などの不快な反応のみで、怒りの反応を示したものは1人だけ、さらに進んで攻撃的な反応を現わした患者は1人もいなかった。 つまり、運動.感覚の反応はだれからも得られるのに対し、特定の感情などの反応はある人間にしか生まれない。そして、逆に言うならば、ある人間からはある決まった種類だけの反応しか見つからないということになる。ここで、ある特定の反応を求めようとする場合に、その反応が得られる適格者と不適格者がいるという問題が存在することになる。 刺激場所の信頼性 適格者だけの場合を今度は考えよう。それでは適格者だけを選択すればあとは問題はないのか?適格者を選んだ場合、決まった場所を刺激すれば決まった反応が得られるのか?事実は、これにも否定的な答えしか得られなかった。ロバート・ヒースが扁桃核を刺激して患者を「怒らせた」例を先に紹介したが(1955、ヒース)、実はこの時に同じ問題に遭遇している。彼は、「同じ患者の同じ脳の場所に、同じ刺激のパラメーターを使った刺激を与えても、その度に反応が違う」と言っている。それはハルグレンによる扁桃核、海馬などの刺激の場合にも当てはまる。実際、同じ場所でも複数の反応が、また同じ反応を複数の場所から得ることができるのだ。 こうなると一般的に通用する細かい地図などできるわけがない。限られた人のための大体こんな反応が起こるであろうという実におおまかな地図しかできないわけだ。個人べースではもっと精巧なものも作れるかもしれないが、永続時間的一般性はない。つまり、実験したその時だけの、いわばエピソード的記録でしかない。 それでは感情的な反応などは、まったくデタラメに決められるのかというとそうではない。これには患者の個性、さらに刺激した時の心の状態が関係してくるようだ。ロバート・ヒースは、脳の中隔部を刺激して、ここを人間の「快楽の中心地」と断定し、この反応は多くの例によっても確認されていると言っている。しかし、実験例がさらに蓄積されると事態は少し変わってきた。同じ場所を刺激してもなんら「快楽」を感じない患者が現われてきたのだ。1968年、ヒースは「肉体的もしくは精神的に苦痛をもっている者のみから快楽の反応が得ることができる」と推測している。これを支持した研究がその後登場する。 攻撃的な患者からしか、攻撃的な行動を起こす反応は得られないという結論(1973、キム&ウムバッハ)、分裂症患者に快楽反応が多くみられるという報告(1979、ライティネン)、刺激の場所ではなく患者個有の条件、特にパーソナリティがその反応を決定するという結論(1978、ハルグレン他)などだ。実際、これを患者の心理学テストから証明しようと試みたのがカルフォルニア大学のハルグレンのグループだ。彼らは、中側頭葉の刺激によって恐怖・不安感の反応を示した患者のグループと同じ刺激によって記憶もしくは夢のような幻覚反応を示した患者のふたつのグループを、MMPI(Minnesota Multiphasic)と呼ばれるパーソナリティ試験によって比較検討を行った。 その結果、恐怖・不安感の反応を示したグループは「神経衰弱」の項目で高得点を、幻覚反応を示したグループは「分裂症」の項目で高得点をとっていることを証明した。同様な研究として、オハイオ州トレドのレイポートとファーガソンは患者の扁桃核の刺激に対して、不快反応と逆の快感反応が示されることについて、もし刺激を受けた時に患者との会話で暗いテーマを話していれば不快反応が、明るいテーマを話していれば快感反応が得られることを発表している(1974、レイポート&ファーガソン)。 運動・感覚の脳地図はできても、なぜ心や精神の脳地図は作成が不可能なのか?これはちょっと考えれば当然なこととも言えよう。脳の形を見るだけでも大きさ、形に僅かながらも個人差がある。当然ながらその脳の中に作られているいろいろな思考・感情を表わす時に使われる回路には個人差があるのだ。手を動かす、腕を動かす、このような単純なことについては人間誰しもが生まれたとき、いや個体発生の時から学習することで、本来誰にでも備わっている最も基本的な機能だ。しかし、嬉しい、楽しい、苦しい、悲しいなどのさまざまな感情、心の働きは、それぞれの個人がそれぞれの経験、環境によって学習をして作りあげたものなのだ。 これらの高度な機能についての脳の回路は、各人が長い時問をかけて独自に作ったものだ。同じ刺激で同じ反応が、得られることができるとは言いきれないのである。脳の高度に分析した場所でそんなことは不可能だといわなければならない。このように単純な能の電気刺激にはある一定の限界があることが理解できるだろう。 現在の我々の知識では脳の電気刺激によるマインド・コントロールの可能性はあるにせよ、その実用にはまだほど遠いことがわかる(もちろん、これは発表されている論文からの判断ではあるが)。それでは、現時点でマインド・コントロールの犠牲者といわれる人たちの頭の中で見つかっているインプラント装置とはなんなのであろうか?マインド・コントロールの可能性を探るための秘密の実験なのか。それとも別の目的洲あるのか。 いま、これらのインプラントについて限られた情報をまとめると、それは鼻から挿入され、頭部前方に固定され、それによって人間操作といった影響があるといわれている。これは果たして、本当に脳の電気刺激によるマインド・コントロールのための装置だろうか。最初に、鼻からの層入方法だが、鼻孔を利用して脳に接近するという方法はすでに確立されたものだ。これは特に視床下部から突き出ている下垂体(pituitary gland)のマイクロ・サージェリー(細かい手術)に使われる。この場合は挿入して下垂体の正確な場所に到達するために、頭部に挿入するための台を固定して、三次元のベクトルを決めて侵入していく。 もちろん定位法(stereotaxy)と呼ばれるこのような装置を使った方法ではなく、手を使ったマニュアルの方法も考えられるが、もし目的がマインド・コントロールであり、感情などをコントロールする側が脳の正確な場所にインプラントするならば、それは定位法を用いた精度を必要とする手術となるはずだ。特定の反応を起こす脳の場所は、広い面積、大きな部位に広がって分布しているのではなく、ミリ単位でしか存在していない。「2、3ミリに限られた区域」(1935、ペンフィールド)にしか分布していないので「3ミリでもずれると全く別の反応」(1965、デルガド)が起きてしまい、コントロールする側の意図が裏切られてしまうことになりかねない。 定位法による手術は人間の脳に対して、1947年にスペーゲル(E.A.Spiegel)らによって初めて開発・応用されたが、その精度は飛躍的に向上し、70年代には僅か誤差が0.5ミリ程度まで進化している。マインド・コントロールのためにはまず正確な電極の挿入が必要となる。 インプラント装置の挿入の場所であるが、これが頭部の前方であることが不思議だ。脳は電気刺激でさまざまな反応を示すことをこれまでにいろいろと見てきたが、実は脳のほとんどの部分は、電気刺激に対して中性、つまり反応を何も示さないのだ。その代表的な部分が前頭葉で、ここは電気刺激に対してほとんどなんの反応も示さない静かな場所なのだ。たまに、簡単な運動などを示すことがあるが、これも被験者の数パーセントにも満たない極くわずかの確率でしか起きないし、さらにそれは前頭葉の内部から表面に行くほど少なくなる。つまり、広い前頭葉の表面は極端に静かな海原といえる。ここにインプラントが設置される。 もし脳の電気刺激によるマインド・コントロールをするなら、そこを基地として複数の電極が伸びているはずだ。目的の地は脳の内部に隠されている。そもそも、脳刺激の実験をしようとするならば、複数の電極を脳内部に埋め込み、長期的な反応のテストを行わなければならない。ただ単に、小さな装置が脳の前に固定されているものは脳の電気刺激を目的としたものとは考えられないというのが結論となる。 脳の電気刺激によるマインド・コントロールがインプラントの目的でないとすれば、それは何を目的として埋め込められるのか?ここに登場するひとつの可能性がバイオニアレメトリである。これは埋め込められた生体の生理学的情報を電気信号に変換し、電波によって外部に送信するというものだ。送信される情報は実にさまざまだ。次に我々はこの可能性と現在までの応用例について見ていくことにしよう。 最初にバイオニアレメトリの技術を紹介しよう。この先端技術はノーベル賞の選考委員会があることで有名なスウェーデンにあるカロリンスカ・インスティテュートのステュアート・マッケイ(R.Stuart Mackay)が1957年に開発した「エンド・ラジオゾンデ」と呼ばれるものに始まる。マッケイは若い頃、人間の腸の中の圧力はどのくらいなのかと好奇心を持った。しかし、人間の身体の中を測定する手段など当時は存在せず、後にトランジスタ技術が普及するようになって、彼が開発したのが、小さな人問が飲むことのできるほどの大きさの測定装置だった。このため、彼の装置はラジオ・ピル(radio pill)とも呼ばれた。人間の身体の中を測定するためには、「医者を飲み込むことは不可能だが、ミニチュアの装置ならば問題はない」(1961、マッケイ)というわけだ。 この装置は、体内の圧カと温度の両方を測定することができ、圧カは周波数変調(FM)、温度は振幅変調(AM)で信号に変換された。つまり、受信機のダイヤルを合わせて、信号が聞こえてくる周波数の高さが圧力を表し、そして捕まえた信号の音のトーンの高さが温度を表すという仕組みになっている。現代のエレクトロニクス時代においては、そんなに驚くことはないだろうが、このマッケイの発明からバイオ・テレメトリはさまざまな応用がされていく。測定する情報は、圧カ(内臓の圧カ、さらに超小型の装置が開発され、目の中にインプラントすることも可能となり、目の圧カ、さらに脳のインプラント装置により、脳の内部の圧力も測られる)、温度、脳波、心電図、筋電図など、さらに血液の成分までも測ることができる。これはほんの一例にすぎない。 マッケイが言うように、テレメトリの応用は「研究者のイマジネーションのみによって制約されている」。テレメトリの対象となる動物も、人間をはじめ、地上の動物、鳥、さらに水中の動物にも適用されている。1964年にマッケイは、ダーウィンの調査で有名なガラパゴス島において、象ガメの体内温度を測定する研究をしている。陸上、水中での体内温度の変化を調べたわけだ。この時は、水中でも電波が伝わるように周波数の低い電波を使用している(この実験では、50キロヘルツの周波数が使われた)。カメの体内に装置を入れるためには、直径1センチのテレメトリ装置をバナナ、あるいは魚の中に隠して、これをカメに食べさせるという方法をとった。 この後、対象となった水中の動物はカメだけではない。イルカでも鯨でも同じような実験が行われている。鯨が飲み込んだ装置から、その大きな身体を通って電波が送られて受信されるのは、テレメトリの大きな可能性を教えてくれるだろう。 人間を対象としたバイオ・テレメトリは、アメリカで宇宙開発とともに発展する。宇宙飛行士のさまざまな生理学的情報を遥か遠くから測定する必要があったからだ。そして、これによって発展した技術が、病院での患者のモニターなどとして応用されていく。脳のさまざまな場所に埋められた電極から脳波が測定されて、これを増幅、変調し、送信機により発信され遠方にある受信機によって信号が受信される。テレメトリ装置の進歩により、機能の高度化、信頼性も高まる。送られる脳波の信号の数も、1960年代に開発された小さな装置でもすでに16チャンネルを超え、患者は送信機を頭部に包帯で固定し、病院内を歩き回ることができた。 これの発展したひとつの形が、身体の中に装置をすべて埋め込むという完全な形のインプラント型装置になるわけだ。完全なインプラント装置がなぜ求められるのかというと、まず完全埋め込み型となることによって、皮膚の開口部がなくなるという利点がある。これは動物の遠隔操作でも見たとおりだ。これにより、感染の危険性がまず少なくなる。さらに、外見上明らかなように、見た目では装置の存在がわからないので、もし装置をつけて病院の外にでても包帯を巻くこともなく、社会生活にも支障が少ないという点もあげられよう。 インプラント技術はこれらの問題と取り組んで発展をしてきたし、また現在もより優れた性能を求めて研究が進められている。サイズの問題は現代の集積回路技術によって解決の道を見つけだされた。70年代においては、ダウンサイジングにおいて、「送信機は問題ではなく、(生理学的情報をいかに電気信号に換えるかという)変換機(トランスデューサー)の大きさが装置全体の大きさを決める」(1974、フライヤー他)と言われていたが、最近ではカスタムメイドのLSIを使用した装置も作られるようになり、ひと昔はセンチメートル単位の大きさであったものも、ミリ4方の大きさのチップにすべての回路を作ることができるようになった。 バッテリー問題とは電池の大きさと寿命についてである。サイズと寿命は新しい電池の開発により、どんどん小型化、長寿命化していった。さらに、寿命の問題に対する解決には、電池自体の長寿化の他にもいくつかの方法手段が考えられている。充電式電池の使用と電源のオン/オフ機能の導入がその中でも一般的に使われている方法だ。完全インプラント型の装置に充電式電池を使用する場合、その充電方法は当然ながらインプラント装置にコードを引いてコンセントに差し込むわけではない。それには、先の章のリモート・コントロールのところでも紹介したが、二つのコイルをカプリングして充電するというのが最も一般的な方法だ。 二次コイルを体内に埋め込んで、そのコイルに合わせて皮膚の上から一次コイルを使って二次コイルに電気を発生させるわけだ。また、このようなコイルのカプリングではなく、電波を使って二次コイルに充電することも考えられる。充電式電池を使うことにより、電池の寿命を飛躍的に延ばすことができる。もうひとつのスイッチのオン/オフの方法は、メイン回路をいつでも閉じて電流を流し続けるのではなく、使用する時にのみ回路を閉じて電流を流すというものだ。これは決められた寿命の電池を最大限に有効活用レようというもので、いわば電気の節約ということになる。 先に紹介した脳内圧カを計る完全インプラント型装置の例では送信距離、電波の届く範囲が弱出カのために僅か四メートルとずいぶんと限られたものだった。インプラント装置ではもっと出力を上げて送信距離を伸ばすこニが可能だろうか。1974年にそれまでのインプラント・システムを総括する研究をしたカルフォルニアにあるNASAのアムス・リサーチセンターのトーマス・フライヤー(Thoms B.Fryer)とハロルド・サンドラー(Harold Sandler)の2人はこれについて次のように語っている。 「3メートルの波長帯では、1〜2ミリワットの出力で50〜70メートルの送信範囲が通常可能となる」「(インプラントすることにより)伝導性の液体を通じたラジオ波の送信は、考えるほど困難ではない。……アンテナから放射されたラジオ波のエネルギーの一部は体内組織に吸収はされるものの、……全体としての結果は、空気中においての送信機と比較しても同じ程度かより良いという結果になる」「安価な受信機が容易に手にはいるために、周波数88〜108メガ帯が最もよく(研究者によって)利用されているが……この周波数帯において、直径2センチメートルのアンテナを使用したミリワット級の送信機では、その使える送信範囲は1メートルから30〜50メートルまでの距離が可能である」 このように比較的低出力のインプラント装置でも送信距離をかなり延ばすことができることがわかる。 それではこのようにして発展したインプラント装置の例をふたつ紹介しよう。デンバーにあるコロラド大学のドナルド・ポーレイ(J.Donald Pauley)とマーチン・レイテ(Martin Reite)は7チャンネルを持つ多機能の完全インプラント型の装置を開発した(1974、1981、ポーレイ他)。彼らの装置は、送信には50メガヘルツの周波数を使用し、電源にはリチウム電池を用いる。装置の大きさは23×23×7ミリ、総重量は25グラムというものだった。実験では生後まもないサルに埋め込んで測定を行ったが、その送信によって得られる情報は、体内温度、目の動き、心電図、筋電図、さらに脳の3ヵ所からの脳波とデータの種類が豊富だ。電池の寿命も、1000時間と長く、これはさらに電源のオン/オフ機能によって長期間の使用ができる。 日本でもインプラントの研究は行われている(1989、セオ他)。東北大学の研究グループは、LSI技術を応用することにより、僅か4ミリ×5ミリ大のチップの上に、多機能を持つインプラント装置の開発に成功している。彼らも電源にはリチウム電池を使用しているが、消費電力を小さくしたことにより、実際のオペレーションではオン/オフ機能の応用により28年の寿命を持つと計算されている。これは完全インプラントとして十分な寿命の長さだろう。 これまで紹介してきたのが脳送信機のひとつであるバイオ・テレメトリ機能を持ったインプラント装置である。もちろん、バイオ・テレメトリのためには何も脳にインプラントするという必要はない。これは他の送信機能を持つインプラントについても同じことだ。この中で脳にインプラントすることが特に必要なのは脳の生理学的情報を送信するバイオニアレメトリの場合だけだ。バイオ・テレメトリでも血圧、鼓動などを測定する目的ならば脳にインプラントする必要はない。さて次に紹介する脳送信機はトラッキングのために便われる装置だ。順を追って説明しよう。 1984年、カルフォルニア州でひとつの法案が提出された。それは人間の電子モニターに関するものだった。アメリカ国内では犯罪の増加に比較して刑務所の収容数が非常に制限されているので、囚人に送信機を携帯させ、所在地がわかるように送信される信号によって監視しようとするものだ。これがトラッキング・システム、人間の電子モニターという考え方だ。このとき、囚人は歩く送信機となり、開かれた街そのものが電子刑務所として機能することになる。そのシステムにはいろいろあるが、カルフオルニアの法案では、在宅監禁(home incarceration)という制度の導入がはかられた。 その対象となった人物は基本的に自分の家に常にいることが要求され、どうしても必要な時以外は外出を認められないという行動の制約がついたシステムだった。法案ではモニター制度自体にもいくつもの制限を与え、携帯する装置から送信される信号はあくまでも現在位置の確認のためだけのもので、彼の話す会話をチェックするための音声情報や、映像などのモニターは禁じられた。しかし、実際にはこの法案はカルフォルニアの上院は通過したものの、まだ時期尚早ということで下院では否決されている。 送信装置によって人問を監視しようという電子モニター制度が実用化されたのは、シュヴィッツゲーブルが初めて行動強化送信機(BT-R)を作成してからおよそ20年の歳月を待つ必要があった。アメリカ、ニューメキシコ州アルバーカーキのひとりの判事がスパイダーマンのコミックブックに目を通していた。1977年のことだ。その漫画の中で、スパイダーマンは手首につけられた送信機によってトラッキングをされていた。これにひらめきを得た判事は、友人のコンピュータ販売を仕事にしていたマイケ・.ゴス(Michel Goss)に似たような装置を開発してくれるように依頼する。 ゴスはその開発にのりだし、1983年にはこれを商品として販売するための"ナショナル監禁モニター&コントロール・サービス"という会社を設立する。その製品は彼の名前をとって「ゴス・リンク」、もしくはその形態から「電子ブレスレット(electronic bracelet)」と呼ばれた。この電子モニターの仕組みは、3つの部分から成っていた。手首、足首などに付けられる送信機がそのひとつ。その大きさは、シュヴィツゲーブル・マシーンではぺーパーバック大の大きさだったが、「ゴスリンク」ではタバコケース大になり携帯に便利になっている。そして、送信機からはある一定の間隔で、例えば30秒から90秒毎にシグナルが送信されるが、そこから送信された電波は「監禁者」の自宅にある電話と直結された受信機によって受信される。 受信機が信号を受けると受信機と一体となっている回線接続装置が自動的に電話回線を使って、中央コンピュータに信号を受け取ったことを知らせる。もし、監禁者が送信・受信の範囲外にいて、信号が受信されないと、彼は「監禁」の条件を破ったこととなり、信号が受けられなかったことが中央コンピュータに伝わり、警告がだされる。ゴス・リンクでは送信の範囲はおよそ200フィート(約60メートル)という距離だった。装置の完成とともに、開発を依頼した判事はその実用性を試した。まず、自分自身で3週間ゴスリンクを携帯してその有効性を確認してから、実際の判決で「電子モニター」採用の命令を下した。 対象となったのは5人の被告であるが、その罪状は酔っ払い運転が2人、保護観察違反者が3人という内訳だった。電子モニターの期間は1ヵ月とした。本来ならば、彼らは刑務所や留置所での監禁の刑罰を受けているはずであった。5人のうち4人はこの指定された期間内、電子モニターされた自宅監禁を受け入れ、順応した生活を1ヵ月過ごした。ただ、飲酒運転のひとりだけは、5日目にして禁じられていた酒に自ら手を出し、刑務所暮らしの道を選択した。いずれにせよ、全体的に電子モニターの実用性は十分に証明されたと考えられた。 在宅囚人制度 このように電子モニターの方法は、自宅監禁(home incarceration,home confinement)とか在宅囚人(home arrest)などと呼ばれる制度に最初に使われた。この制度はやはり刑務所の混雑を解消する手段として考案されたもので、1983年の10月1日にフロリダで始まる「ハウス・アレスト・プログラム」がその最初のものだ。これはその後、アメリカの各州に広がっていくが、例えば、ニューヨーク州では1985年の12月に最初の自宅監禁の判決が下されている。当時はまだ全米でもめずらしいこの判決で、その時のニューヨーク州の裁判官は判決にあたり次のように述べている。 「当裁判所の見解どしては、(被告)モーリーン・マーフィの判決は、この地区ではかつて例がなく、我が国の連邦裁判所においてもほとんど下されることがなかった種類のものです」「諸外国ではこの制度はよく用いられ、これは非常に問題のあるものと考えられがちですが、我々の場合で違う点は、他の国々ではこの制度が反政府運動家に対して適用されたり、裁判の開始前に用いられるのに対して、ここでは十分な被告に対する裁判の後に、有罪が確定してから適用されるという点です。つまり、刑罰として自宅監禁が与えられるのです」 このようにしてニューヨークで初めて自宅監禁の判決を受けたモーリーンという名の女性は、向こう2年間、仕事や医療、教会、必要な買い物など限られた場合を除いて、自分のアパートに滞在していなければならなくなった。もし違反が見つかった場合には、彼女は保護観察官により刑務所に連れていかれることになる。ちなみに、彼女の罪は保険詐欺で、自宅監禁が適用されなければ、最高50年間の服役及び5万ドルの罰金となるはずだった。しかし、裁判官はこの35歳の前科もない女性には、刑務所生活は「あまりにも酷」で、「彼女の人間性が破壊されるかもしれない」と考える一方、それでも単なる保護観察処分では十分な罰とはいえないと判断したわけだ。 このような自宅監禁制度は保護観察の新しい形態と考えてよいが、しかしこの保護観察を実際に行うためには多大なマンパワーが必要となる。果たして、自宅監禁された人間が判決に従って生活をしているか否かを監視する見張り役が必要なのだ。例えば、ひとりの監察官が10人以上の被監察者を担当し、その1人ひとりに抜き打ちで週に5回以上も面談する必要がある。その労力はとてつもなく重い。ここに電子モニターの方法を用いた自宅監禁、さらに一般的な保護観察制度への電子モニターの利用が考えだされた理由がある。電子装置によってある程度のトラッキングができ、それによって行動の監視ができれば、電子信号による情報管理で中央コンピュータが違反者に警告をだした時にだけ保護観察官はその確認に現地へ行けばよいわけだ。これにより監察官の労カは軽減される。 初めて自宅監禁制度を導入したフロリダ州は、その翌年に電子モニター・プログラムを開始する。そのシステムは自宅の電話に接続した自動ダイアラーと受信機が中央コンピュータの中継をするもので、このプログラムの対象者は自宅から150フィート以内にいないと、違反の信号が記録されることになる。対象者は監視とモニターの費用負担としてそれぞれ50ドルと30ドルを当局に支払う必要がある。そして、この電子モニター制度はフロリダから全米に広がり、1985年の春には7つの司法管轄区において、1987年に司法省がまとめた電子モニター・プログラムの調査結果によると、21州で53のプログラムが実施されており、その対象となっている犯罪者の総数は800人を超えたという。 さらにこの司法省のレポートが提出されてからはこの制度の浸透が加速化し、90年代に入るとアメリカで1万人以上の人々が電子モニターの対象となっている。その運用方法は、保護観察、自宅監禁に始まり、一般的に刑務所の代用としての刑罰として、そしてワーク・リリースにおいて、さらに精神科の一時退院の患者などにも使われるようになっている。この制度はアメリカだけではなく、イギリス、北欧など世界中にも拡大している。イギリスで考案された「犯罪者タグ」(Offender's Tag)と呼ばれる制度は、無線電話のシステムを応用している。 携帯電話のネットワークが都市で進むにしたがって、そのエリア内においては、送信機を携帯している者の現在位置が、ネットワークのどの中継地を使っているかによって中央コンピュータで判断される。英語で携帯電話をセルラー・テレフォン(cellular telephone)と言うが、これは細胞(cell)という言葉からできており、ひとつの中継地が管轄するひとつのエリア、つまり細胞のひとつの中に送信機の携帯者がいることがわかる。その大きさは、一平方マイルほどの範囲となる。 電子モニター制度の応用として大規模なインプラント計画もすでに幾つか提唱されている。すでに1971年にはアメリカで何百万人もの犯罪者もしくは潜在的な犯罪者を電子モニターを使って監視しようという提案がなされた。この計画は実施されはしなかったものの、その規模には驚くしかない。犯罪常習者、仮釈放者、保護観察者、さらに有罪が確定していない者にまで発信装置をつけて中央コンピュータでトレース(トラッキング)をしようというのだ。提案をしたのはアメリカの秘密情報機関として知られている国家安全保障局、NSAにかつて務めていたジョセフ・マイヤー(Joseph A.Meyer)という人物だが、彼の論文では2500万人という膨大な人数を対象とした監視体制の試算を行っている。 マイヤーのシステムは電源にバッテリーを使ったブレスレット・タイプのものだったが、80年代後半にフロリダの医師が考えた装置は充電式電池を使用した完全インプラント型のものだった。その医師、ダニエル・マン(Daniel Man)は、このトラッキング機能を持つインプラントをアメリカで多発する幼児誘拐事件の防止策として考え出した。彼のシステムは、イギリスが考えた「犯罪者タグ」と同じように、やはり携帯電話のネットワークを利用したものだった。これを利用することにより、小出カでも広範囲にわたるトラッキングが可能となる。 マイヤーの時代とは違って、全米には無線電話のための受信アンテナ・ネットワークが張り巡らされている。彼はその小さな装置を子供の頭部、耳の後ろにある骨の中にインプラントすることを提案した。その手術は極く簡単なもので20分くらいで完了するという。これは子供の誘拐対策としてだけではなく、企業の海外駐在員や外交官の誘拐対策にもなるし、痴呆性老人の行動監視にも応用できると彼は考えた。 次に脳送信機の第3番目の可能性としてのID認識システムについて紹介しよう。トラッキングと同じく、決められた情報を送信するインプラント装置に、ID認識トランスポンダー・システムというものがある。これは個体それぞれで異なるコード番号を発信して、個体の識別をするためのものだ。バーコードのマイクロチップ化と考えればよい。これが最もよく使用されているのは家畜の識別のケースだ。家畜を顔で識別することは困難だ。数百、数千頭の家畜を識別する従来の方法は、耳などにタブをつけたり、入れ墨を尻尾に入れるなどしていたが、これらの方法では識別に時間もかかるうえ、識別・記録のミスも発生しがちで、さらにタブなどをつけることから感染の危険性もある。 これらの問題を識別のコード・ナンバーを発信する極小の装置をつけることによって解決をはかる。その装置は極めて小さいのでインプラントの方法がとられる。このような個体識別には、その対象は、例えば目の前にいる家畜であるし、その送信する信号も埋め込み時に決められた個体コードだけなので、送信距離も短くてすむ。装置の機能も簡単なことからミニチュア化も容易になった。そして、ここで消費される電源も僅かなものですむので、装置の外部から電波によって起電力を与える方法、パッシブ・トランスミッター方式がとられ、これらの装置はトランスポンダーと呼ばれる。つまり、装置自身にバッテリーを持つ必要はなく、装置の中にあるコイルに外部から放射される電波により電流を発生させるためその寿命は半永久的となる。 現在のマイクロチップ技術によって、このとても小さな装置の中に巨大な量の情報を入れることができる。単なるID番号だけではない。ひとりの人間の名前、銀行口座番号、経歴、顔写真、指紋、嗜好などの情報インプットが可能となる。現代杜会ではキャッシュレスの生活が一般化し、カードでの支払いも多くなってきている。現在ではこのカードの機能が高度化し、やはり巨大情報がインプットされ、マイクロチップが組み込まれたスマート・カードと呼ばれるものが登場しつつある。そして、これが発展していく次の段階として想像される社会がカードレス社会、つまりインプラント社会ではないかと懸念されてもいる。インプラント技術がより一般化するとこのような可能性・危険性は確かに具体性を帯びてくる。 (つづく) パラボラ・アンテナも様々な周波数・ターゲットに対応していて、こいつで読み取るにはどうしても人間の電子化をしないといけないようです。 こいつは国立天文観測所や気象レーダーなどでも使われていますが、データを収集 これらの科学者がだいぶ宇宙観測に流れていきます。これも単なる観察ではなく、ビックバンを起こそうとする前代未聞のサタニスト科学者となるわけです。 地球は爆発すると普通に学校で習いますが、どうみてもありえないことです。しかし、科学者はそれをしないと米軍からの援助を打ち切られます。秘密を知ったものは殺されるのが慣わしです。 なので、記憶喪失を作り出す実験に傾倒し、脳が萎縮し、スカスカになるダウン症を多く生み出しています。 広島以上の核爆弾の成果が求められているわけです。悲劇の物語ですが、真実です。
攻撃性
反応の種類
反応の一般性
何が反応を決める?
オーダーメード
インプラント?
静かな海
インプラント装置の目的
バイオ・テレメトリの発展
人間のバイオ・テレメトリ
脳内圧力テレメトリのためのインプラント。(source) Leung AM et al(1986)IEEE Trans.BME33(4):386-395
この完全形のインプラント装置は人間の脳にも応用されている。ひとつの例をあげれば、脳内圧力測定のために開発された完全インプラント型の装置の大きさは、29ミリ×20ミリX7ミリという小さなもので、小型の電池も内蔵している。しかし、その送信出力は0.4ミリワットという小さなもので、送信範囲は4メートルの距離に制約されている。また、電池を電源とする限り寿命というものが存在するが、この場合は、連続で400時間、もし1日に1時問しか使用しないと考えれば20カ月の寿命ということになる(1986、ルング他)。
バッテリーと寿命
送信距離
最新のインプラント装置
トラッキング・システム
ゴス・リンク
監視
電子モニター制度
ID認識システム
インプラント社会
NSAはアメリカの人口の半数以上のデータを保有し、監視しているとのことですが、犯罪に関与するものたちを対象にしているそうです。イラク戦で、だいぶ反政府データがそろったことでしょう。どうも仕事を増やし、予算を増やしたいからオウムなどが作られているような気がしてならないんですよね。
するだけではなく、送信もできるんですね。つーことはやはり、観測だけでなく、雷を起こす装置ですよ。やっぱり。