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緊 急 声 明
地名は日本の伝統文化の根幹をなすものであり、日本の歴史・地理・民俗・考古などすべては地名を由縁としている。それゆえに、私ども日本地名研究所は発足以来、地名の研究と保存に全力を傾けて今日にいたっている。 1999年12月、政府は新しい「行政改革大綱」を決め、全国の市町村を2005年まで現在の3分の1である1000以下にしようと、合併を強引に進める方針を定めた。これは、明治21〜22年の町村大合併、また昭和37年の住居表示に匹敵する大改革である。 この大改革によって、合併市町村の新しい名がぞくぞくと誕生することになったが、その中には、私どもが年来主張している由緒ある地名とはまったくかけ離れた、新市・新町の名がしばしば見られる。その安易な命名は、あるいはいたずらにひらがな書きにし、または安易に方位方向を冠し、あるいは合併市町村の頭文字をとって合成し、あるいは根拠のない瑞祥地名をとるなど、あまりにもほしいままな命名が横行している。 これらは、その土地の実情を的確に反映しているものとは言えず、日本の地名の新しい受難時代の到来と言っても過言ではない。それは、地名の危機であるばかりでなく、日本人の風土感覚を狂わせる重大な問題を孕んでいる。 この現状を座視するにしのびず、私ども日本地名研究所はここに警告し声明を発表するものである。 2002年3月 日本地名研究所所長 谷 川 健 一 |
追 記
新市町村の命名にあたっては、安易な方法にたよらず慎重な配慮をお願いしたい。そのためには、選考委員に歴史・地理・民俗・国文学など地名に造詣の深い学識経験者の参加を、是非要望する。 以下にこれまでの好ましくない命名を数例列挙する。 カタカナ・ひらがな書きの市町村名 さいたま市(埼玉県浦和・大宮・与野の3市) ・あきるの市(東京都秋川・五日市の1市1町) ・マキノ町(滋賀県高島郡海津・百瀬・西庄・剣熊の4村) 恣意的な方位の濫用 西東京市・東村山市・東大和市・群馬県内の東村(吾妻郡東村・佐波郡東村・勢多郡東村) 合成地名 更埴市(長野県更級郡と埴科郡の頭文字) ・生見尾村(生麦・鶴見・東寺尾の3村 現在の横浜市鶴見区) ・七会村(茨城県西茨城郡の7村) ・七郷村(福島県にあった明治期の村) ・六会村(群馬県内の入山・小雨・日陰・生須・赤岩・太子の6村) ・大田区(大森・蒲田の2区) 借用地名(国名・県名など大地名) 沖縄市(旧コザ市)東香川市・南国市・上越市 瑞祥地名 瑞穂町(栃木・東京・石川・長野・京都・兵庫など多数) ・豊栄町(新潟・長野・愛知・岡山・広島など多数) ・福富町(北海道・青森・島根・岐阜など多数) その他 昭島市(郷地・福島など8村の合併で昭和町となり、これが更に拝島村と合併) |
『週間朝日』(2002年4月12日号)よりの抜粋
「 いたずらに仮名書きにすることが第一の問題です。名前を決めるにあたって、まず住民から案を公募するケースが多いのですが、そうすると、分かりやすくて口に甘いものが多く出て、難読、難解な漢字を避ける傾向がある。読みやすく、分かりやすい地名こそ現代にマッチするという軽薄な風潮です。 平仮名は音を表す表音文字ですが、重要なのは「表意」なんです。例えば、「さいたま」は、本来「さきたま」で、「き」が音便化して「い」になった。私の考えでは「埼」は海に突き出した岬、「玉」は岬にまつる精霊とい推測が成り立ちます。 漢字の「埼玉」からは実際にそうした地理性、歴史性が見出せるが、「さいたま」という表記からは「さきたま」は連想できない。つまり、仮名書きにすることは過去と現在を断絶させる、いわば歴史への冒涜なのです。「さいたま」ならキャベツ、「さぬき」ならウドンをまず思い浮かべてしまうでしょう。それじゃあ、スーパーやスナックの名前をつけるのと同じ感覚です。口当たりのいい清涼飲料水みたいな名前をつけようとしている。」 (中略) 「 もう一つ、方位の乱用は今に始まったことではないが、これも非常に問題です。方位というのは、どこに基点を置くかによって見方が変わる、非常に恣意的で不安定な命名です。西東京市の隣に新たな市ができたら、今度は「西西東京市」になるんですか。「東かがわ」は仮名書き、方位の乱用という両方の点でだめです。合併するのは東端の3町ですが、これでは香川県の東半分の、かなり広範囲な市町村が一緒になると混同されかねず、一種の誇大広告です。西東京市の広報広聴課や、東かがわ市の合併協議会事務局に問い合わせてみたが、いずれも「特にコメントすることはない」という返事だった。ささいなことに思われるかもしれないが、地名はものすごく大事な問題です。千年も二千年もの長きにわたって、ゴボウのように地下に根が入り込んでいる。万葉集や風土記の時代から使われている地名はざらにある。 ヨーロッパなどでは、古い地名をできるだけ残し、過去を大事にします。日本にはそうした配慮がまったく足りない。骨董屋に売り払ったり、あるいは粗大ゴミに出したりする感覚で、地名を気軽に新しいものに乗り換えようとしている。非常に危険な兆候で、日本人のチャランポランさがここに象徴されている。亡国的な現象ですよ。」 |