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(回答先: Re: test 投稿者 gataro 日時 2006 年 10 月 03 日 21:34:06)
朝日新聞 9月5日朝刊 国際面(電子版にはありません)から直接転載。
ニクソン政権を倒したウオーターゲート事件の報道で知られるワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード氏=写真=の新著「ステート・オブ・デナイアル(否定の状況) ― ブッシュの戦争第3部」が出版された。対テロ戦・イラク戦争について「ブッシュ政権は真実を語ってこなかった」と内幕を暴露する内容だ。中間選挙まで1カ月というタイミングだけに、ホワイトハウスが立て続けに反論のメモを出すなど、波紋が広がっている。(ワシントン=梅原季哉)
反論連発し防戦に躍起
「作り話と真実 ― ボブ・ウッドワード著作の5つの創作」。「否定の状況」の前評判に気をよくした出版杜が刊行予定を早め、一部が書店に並び始めた9月30日、ホワイトハウスはこんな記者発表文を流した。ウッドワード氏が紹介したエピソード(@〜B参照)に、ホワイトハウスは一つひとつ材料を挙げ、事実と異なると否定した。高い関心に座視していられなくなった形だ。
さらに3日、ホワイトハウスは01年の当時のライス大統領補佐官とテネット中央情報局(CIA)長官の会談に絞って、「語られなかった部分」と題する記者発表文第2弾を出した。やはり個条書きで、▽ホワイトハウスも国務省もこの会談を否定したことはない▽テネット長官の説明内容をライス氏は真剣に受け止めた▽説明自体は目新しいものではなかった、と反論した。
書店に並んだウッドワード氏の新著
ウッドワード氏の著作の中で問題にされていたのは、今年5月22日、大統領がシカゴで行った演説だ。その中でブッシュ氏は、イラク新政権の発足をとらえて「やがては、自由が中東に根付き、テロの力が後退を姶めた分かれ目だったと振り返るだろう」と楽観的な見通しを示していた。
ところが、そのわずか2日後に、統合参謀本部の情報部門が、01年はイラクでの暴力がいっそう悪化すると予測していた、という。その明確な落差が、誠実さを欠くブッシュ政権の一つの例として描かれている。
これに対するホワイトハウスの反論は、同じシカゴでの演説の中で、「自由への道は常に戦いと犠牲を伴う」「進歩は段階的なものだ」などとただし書きをつけていた、というものだった。ただし、そのことはウッドワード氏も同じエピソードの中で触れている。
スノー大統領報道官は2日、記者会見で「本にはおいしいゴシップがたくさん詰まっている。皆さん時間をかけてそれを読めばいい」とあきらめ半分の言葉を口にしつつも、「大統領がだましていたというのは間違っている」と譲らなかった。
国務長官に飛び火
ウッドワード氏の著作のどこがブッシュ政権に「痛手」なのか。
本を全体として貫くのは、意見が合わない助言に耳を貸そうとしない、ラムズフェルド国防長官の高慢さに関する数々の挿話の積み重ねだ。
その国防長官が推し進めたイラク戦争に至る過程で、戦後の安定化に必要な兵力を過小評価し、現在の泥沼につながっていった構図自体は、多くの国民にとっても目新しいものではない。
だが、そうした状況に対し、政権内でも実は危機感が存在し、カード前首席補佐官らが交代を進言していたことは、今回初めて伝えられた。それにもかかわらず、最終的には、大統領本人が国防長官の続投で譲らなかったこともわかった。イラクに関する「ラムズフェルド問題」は、突き詰めていけば「ブッシュ間題」なのだという認識が広がりかねない。
もう一つの焦点は、同時多発テロについてのCIAの警告を、ライス国務長官が無視したのではないかという点だ。わずか2、3行の記述だが、しばしは「悪役」とされてきたラムズフェルド氏と違い、国民の間ではなお信頼感が高いライス長官がかかわるだけに、衝撃は小さくない。
「9・11は情報機関側のミスで防げなかった」としてきた政権の主張を覆しかねず、痛手となる。情報はちゃんと届いていたのに、ブッシュ政権が取り扱いを誤ったせいだったという結論につながるからだ。
中間選挙を前に、ブッシュ政権としては、泥沼イメージが弱点となりかねないイラクは「対テロ戦争の一部」だと強調し、撤退を求める野党民主党の姿勢はテロに弱腰だとアピールしようという計算があった。
だが、NBCニュースとウォールストリート・ジャーナル紙が3日発表した最新の世論調査結果によると、イラク戦箏は対テロ戦争にとって負の要因とみる人が46%で、貢献要因とみる32%を大きく上回った。9月には同じ質問の回答はほぼ均衡していたという。
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「否定の状況」の内容
(タイトルを「否定する国」と訳している報道もある)
@アルカイダテロの警告無視
01年7月10日、テネットCIA長官とCIA対テロ部門の責任者が、ライス大統領補佐官に緊急の会談を申し入れた。その席でCIA側は「国際テロ組織アルカイダが米国本土を標的として攻撃する可能性があり、戦略的な対応が必要だ」と訴えた。だが、「彼女の応対は丁寧だったものの、彼らはそっけなく拒絶されていると感じた」。
A国防長官更迭の進言受け流す
カード前首席大統領補佐官はブッシュ大統領再選直後の04年11月、ラムズフェルド国防長官を交代させては、と非公式な形で提案した。だが、ブッシュ大統領は「パウエル(前国務長官)を交代させ、コンディ(ライス現国務長官)の後任も見つけなければならない。全体の中で継続性が必要ではないか」と受け入れなかった。カード氏は05年末にも、ベーカー元国務長官を後任としてラムズフェルド氏更迭を提言したが、大統領は「興味深い」と述べただけだった。
B軍幹部「国防長官信頼ない」
北大西洋条約機構(NATO)のジョーンズ欧州軍最高司令官は05年夏、ラムズフェルド長官のイラク情勢への対応ぶりに強く懸念を抱いていると明かし、「抗議のために辞任すべきか考えた。統合参謀本部は誤ってラムズフェルドに降伏してしまった」と述べた。アビゼイド中央軍司令官は同年、カタール・ドーハの前線司令部を訪れた友人に「戦略を立てるのは大統領とライス長官の役割だ。ラムズフェルドには信頼性はもはやない」ともらした。
キーワード
「否定の状況」原題は「ステート・オブ・デナイアル(STATE OF DENIAL)」。ブッシュ政権内部の葛藤(かっとう)を当事者に直接取材して描いた政権内幕モノ。「ブッシュの戦争」「攻撃計画」に続くウッドワード氏のブッシュの戦争第3部。同氏はワシントン・ポスト紙の編集局次長で、1970年代には・同僚のバーンスタイン記者とともにホワイトハウスによるもみ消し工作の真相を追及し・ニクソン大統領を辞任に追い込んだ。2人の著書「大統領の陰謀」は映画にもなった。