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ヒトと環境に資する探究心と技術を
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投稿者 heart 日時 2006 年 8 月 10 日 23:28:07: QS3iy8SiOaheU
 

目次
はじめに:文明の進歩についての認識の変化
T. ヒトは、特殊な探究心を持つがゆえに「進歩」してしまう
U. 「進歩」の構造から見えてくる課題
U―@ 開拓者精神はどのような志向性を持つべきか
U−A 開発された技術が「生きる」ためには
U−A−@ 企業技術の場合
U−A−A 金融工学の場合
結び:ヒトと環境に資する探究心と技術を


はじめに:文明の進歩についての認識の変化

私のこれまでの文明の「進歩」についての基本認識は、以下のようなものであった。
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人間は他のどの動物よりも退化している。
なぜなら、他の動物は、生態系がちゃんと整っていさえすれば身一つで生きていくことができるのに対し、ヒトは、どんどん、自分一人では生きられない方向に向かってきているからだ。
ヒトは手を使って武器を作って初めて他の動物を狩りすることができるようになった、それまではヒトはとても弱い動物だった、というふうにどこかに書いてあったように記憶している。
ヒトはそうやって、道具を使うことによって初めて他の動物よりも強くなることができたわけだ。そして、さらに道具を開発することによって、生態系がもたらしてくれる恵みをどんどん開拓してきた。
同時に、生態系を破壊してきた。
また、同じ人間同士で殺し合いをする。殺傷能力をどんどん高めてきてもいる。
まあ、他の動物の中にも、共食いをする動物というのはいるようだが、人間ほど酷くはないと思う。戦で火を放って生態系を壊す、とかいうのも、他の動物の主導権争いの場では起こり得ないことだ。

こういうことを考えると、ヒトというのは、はっきり言って下等動物だ。
ヒトは、進歩などしていない、退歩しているのだ。
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以上のように考えてきた私だったが、先日、少し認識が変わった。
きっかけは、下記記事である。
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理科や数学の面白さ体験 松下、子供向けの新施設(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006080501004542.html
子供たちが遊びながら理科や数学の面白さを学べる松下電器産業の新施設「リスーピア」が5日、東京・有明の同社ショールーム内にオープンした。理数離れが指摘される小、中学生の好奇心を引き出そうと、映像や音響などを駆使して「数」や「形」、「光」などの法則や原理を考える体験型の展示を並べた。
 松下電器の中村邦夫会長は「子供たちの理数科目への関心が薄れ、学力低下を危惧(きぐ)している。理数好きになるきっかけづくりができればいいと思う」とあいさつ。ノーベル物理学賞を受けた小柴昌俊東京大学特別栄誉教授は、会場に集まった小学生らに「(学習は)自分から進んでやることが大事。自分の好きなことを見つけて」とエールをおくった。
(共同)
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上の記事を見た後、このリスーピアのサイト(http://risupia.panasonic.co.jp/)を見てみた。
見ていて、発見の連続によって文明/技術は発達してきた、ということを改めて思った。

何かを発見するということ自体は、よいことだと思う。
そうであれば、「進歩」を無下には否定できないのではないか、と思った。


T. ヒトは、特殊な探究心を持つがゆえに「進歩」してしまう

リスーピアは、科学を探究する心を育む、という精神に基づいて作られているようなのだが、発見というものは、そういう探究心や好奇心を持つことから生じる。

そして、探究心の方はいざ知らず、好奇心の方は、人間の専売特許ではなく、他の動物も持っている。
犬の散歩の様子を見るだけでもわかるだろう。あるいは、子ギツネなどが「未知との遭遇」をしている場面をテレビで見たことのある人はそれを想起してもらえればわかると思う。

では、ヒトと他の動物との違いは何だろうか。

ヒトの好奇心、探究心は、単に現状を研究するだけでなく、未知の世界を開拓していこうとする方向に向かう。そこが違うのではないだろうか。

現状に満足せずに、いろいろ変えていきたい、と思うのが人間というものなのではないか。そして、その欲求が満たされる社会でなければ、旧ソ連のような無気力社会になってしまうのかもしれない。

しかし、そうかといって、ヒトは現状を変えずには生きていけないのかというと、そういうわけでもないと思う。

現に、いわゆる原始的な生活をしている民族というのは、古くからの伝統を守り、生き方をほとんど変えずに生きていると思われるからだ。(もっとも、環境の変化に対応して生き方も少しは変えてきたと思うが、それは他の動物でも恐らくそうだろう。)

いわゆる近代社会に生きるヒトというのは、現状を変えずには生きていけないのではなく、手にしてしまった技術が「高度」であるがゆえに、未知の世界を開拓したいとの少しの好奇心・探究心を働かせるだけで、結果的に現状を大きく変えてしまう、ということなのではないだろうか。

工業技術の面以外でも、金融工学といった、経済的な技術の面においても、同じことが言えるのではないか。
私は全く金融工学のことはわからないが、あの複雑そうな手法がいったん構築されてしまったがために、今はそれをどんどん高度化していこうとする探究心が働いている。
結果として、金融の世界はどんどん「高度」化・複雑化していく。

つまり、探究心が技術革新を生み、技術革新がさらなる技術革新を生み、世界が「高度」化・複雑化という方向へどんどん突き進み、「進歩」していく、という構造になっているのではないか。


U. 「進歩」の構造から見えてくる課題

この「進歩」の構造をどう見るか。

私は、探究心はよいことだと思う。
しかし、世界の現状と、今世界が突き進んでいる方向を見ると、探究心が現在の世界において最終的にもたらしているものは、あまりよいとは思えない。

探究心がどのような技術革新を生むか、そして、その技術革新が、社会をどのようなものにしていくか。これが問題だ。

U―@ 開拓者精神はどのような志向性を持つべきか 

つまり、どのような技術を開発するか、ということが非常にキーとなってくるのだと思う。
探究心をどのような精神を持って働かせるか、という問題とも言えよう。
探究心は、ヒトの場合、未知の世界を開拓していこうとする方向に向かうわけだから、開拓者精神の志向性の問題とも言い換えられる。

では、開拓者精神は、どのような志向性を持てばいいのだろうか。

どのような社会を作りたいかという認識は人によって様々だと思うが、方向性としては、外向きでなく、内向き・深化への志向性を持つことが必要だと思う。

拡大・進出路線といった外向きの志向性を持つと、それによって生まれる技術は、地域ごとの文化や環境、また、人間のつながり(コミュニティ)、といったものを壊す方向に向かうと思う。いわゆる、グローバリゼーションの弊害である。

技術革新がこうした破壊をもたらさないようにするためには、開拓者精神を、内へ深化させる方向に作用させていく必要があると思う。
具体的なやり方については今後の課題としたい。

U−A 開発された技術が「生きる」ためには

他方、どのような開拓者精神をもって開発された技術であれ、その技術が生きるか死ぬかは、その技術をいかに運用するかによっても異なってくる。

どんなに素晴らしい開拓者精神をもって開発された技術であろうとも、開拓者の意図を離れて悪用される、ということもある。支配を強めるための道具として利用されてしまうこともあると思う。あるいは逆に、開拓者の意図が邪悪なものであっても、運用側が工夫することによって、よい技術となることもあろう。

技術革新が社会にとってよいものとなるかどうかは、技術を実際に運用する者の手にもかかっている、ということだ。

U−A−@ 企業技術の場合
企業で開発される技術を例に考えれば、経営者や事務系社員が、ヒトとモノ(作り)と環境を大切にする形で技術を運用していかなければならないと思う。
探究心を働かせ技術開発を行う技術者と、その技術の運営を行う者とが、意思疎通をきちんととって連携プレイをすることによって、プラスの相乗効果を生み出していく、ということも必要だろう。

U−A−A 金融工学の場合
また、金融工学の場合は、その他一般の技術とは異なる問題点もはらんでいると思う。
金融工学は、金儲けの手段そのものである。
そして、どんどん高度化・複雑化が進んだ今、少数の人たちにしか駆使できないような技術となってしまっている。
こうなると、金融工学は、金儲けをしたい者や、世界を支配したい者にとっては、極めて魅力的なものとなる。
その結果、金融工学は、ホリエモンのような成金を作り、格差社会を作ることに貢献する。
あるいは、世界の黒幕が国際金融家であるとすれば、彼らも、金融工学を駆使することで大量の資金を手にし、支配力を強める。
こうした特徴を持つ金融工学については、他の技術よりも慎重に運用される必要があると思う。


結び:ヒトと環境に資する探究心と技術を

文明の進歩自体は、ヒトが、開拓者精神を伴う探究心を持っている限り、止まらないだろうし、必ずしも否定すべきことではないのだと思う。
しかし、この探究心が作る技術が、社会を作っているという面は大きいと思う。

理想社会を作るためには、ヒトの持つ探究心と、それによって開発された技術が、ヒトと環境に資する方向に向かうことが必要だと思う。

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