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http://walumono.typepad.jp/blog/2006/05/post_c937.html
5月9日,経済同友会が文書「今後の日中関係への提言−日中両国政府へのメッセージ−」を発表しました。
06年3月29日の文書「東アジア共同体実現に向けての提言−東アジア諸国との信頼醸成をめざして」につづく,対東アジア政策のまとまった提起となっています。
04年以後,中国は日本にとって最大の貿易相手となっていますが,中国の貿易総額にしめる日本の比重は,97年(18.7%)から05年(13.0%)へと,ほぼ一貫して低下しています。
こうした事態への焦りもあるのでしょうが,文書は「政治面および両国の国民感情という面に於いては,極めて憂慮すべき情勢」があると,日中政府・関係者に,1)未来志向,2)包括的戦略パートナーシップ,3)共進化の3つの基本理念を提起しています。
※「共進化」という用語は,05年2月15日の文書「日本の『ソフトパワー』で『共進化(相互進化)』の実現を−−東アジア連携から,世界の繁栄に向けて」でつかわれていました。
今回の文書から,いくつか気づいたところを紹介しておきます。
@新日中関係構築に向けた「首脳レベルでの交流を早急に実現する上で大きな障害となっているのは,総理の靖国神社参拝問題である」と,小泉首相の靖国参拝を「大きな障害」と明言する文章があります。
この問題は「わが国が……自らの問題として主体的かつ積極的に解決すべきこと」だとして,具体的には「戦争による犠牲者すべてを慰霊し,不戦の誓いを行なう追悼碑を国として建立することを要請」するとしています。
関連して,首相は靖国参拝を「不戦の誓い」の場だとするが,そのような場として「政教分離の問題をふくめて,靖国神社が適切か否か,日本国民の間にもコンセンサスは得られていないものと思われる」とも述べています。
※ただし「犠牲者すべて」については,靖国のように戦死した兵士・軍関係者だけでなく,原爆や空襲などでなくなった市民もふくむという意味でしょうが,そこにA級戦犯がふくまれるか否かは明示されていません。
※なお,政府内部における「追悼碑」建立に関する議論に,「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会報告書」があります。これとの内容の異同についてはふれていません。
A日本の「近現代史の教育を充実させ,若者に過去の戦争という事実を正視させる努力が必要である」との主張が繰り返されています。
1つは,古代から明治維新までに「相当の時間」が割かれている現状をあらため,「近現代史の教育に充てる時間配分の再検討」が提案されています。
2つは,肝心の教育の内容についてですが,「日韓の間で行なわれた歴史の共同研究と同様,日中両国の歴史学者ら有識者による歴史問題・教科書問題の共同研究会を発足させることを提案」しており,「その際,客観性を担保するため,二国間だけの研究に限らず第三国の有識者を加えた形についても検討すべき」「また,その成果を両国の中学・高校における近現代史教育に反映していくよう提案する」としています。
※ただし「日韓」の共同歴史研究は,いまのところまったくといっていいほど成果を生んでいません。その点についての言及はありません。
※文中の「第三国の有識者」については,具体的な指示はありません。ただし「(日中両国が)歴史を正直かつ公正に見つめ直すとともに,過去だけでなく未来にも目を向けるよう求めたい」(ゼーリック米国務副長官2006年1月23日)など,昨年11月のブッシュ訪中以後,アメリカ政府が東アジアの歴史問題の「調整」に入って良いとの発言が何度か行なわれています。今回の文書がこれに呼応したものである可能性はあるかも知れません。なお,このゼーリック発言の直後に,中国外務省は「日中韓3ケ国」の「協力」によって解決したいとの見解を表明しています。
B日本の外交政策については,従来からの「『日米同盟』と『国連を中心とした国際協調』の二つ」に加えて「アジア外交の重視」をいれた「三本柱とすべきである」としています。
関連して「新日中関係は,従来の友好・協力パートナーという関係から,一段格上げした二国間関係を目指す」「お互いに覇権を求めず,平和共存,共同繁栄,相互協力,内政不干渉といったイコール・パートナーシップの関係により,両国互いの国益実現に向け協力すると共に,国際社会の安定化,とりわけ,東アジア経済共同体の実現に向け日中両国が主体となった協力関係を構築する」としています。
※ただし「国連を中心とした国際協調」の理念と,国連の合意を無視したイラク戦争の現実についてはまったくふれるところがありません。
※ここで注意して検討すべき問題は,05年11月のブッシュ訪中によって発表された米中の「建設的パートナーシップ」と,今回の同友会の「包括的戦略パートナーシップ」との関係です。ことは,これがアメリカの対外戦略からの一定の独自性のあらわれなのか,それともまったく逆にアメリカの新しい対中政策へのやはり新たな追随にすぎないのか。その理解の分岐にかかわるものとなってきます。
C「東アジア経済共同体構想の推進と通貨面での協力」の項では,「日中両国は将来の『アジア共通通貨』の実現をめざしていく。そのために,アジア債券市場の設立や,ユーロ設立時に有効に機能した『バスケット通貨単位』のアジアでの成立を目指して協力関係を強化する」と述べています。
※これは日本経団連によってもたびたび繰り返されたものですが,すでに日本財界の既定路線といって良いでしょう。