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ある福祉作業所の実態〜障害者自立支援法施行を受けて 2006/12/12
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障害者自立支援法の障害者の生活に与える影響は大きく、全国各地で様々な問題が浮き彫りになっている。現在、この法律の見直しを求め、臨時国会の期間中(12月15日まで)に厚生労働省に要望書を提出するため、全国で署名活動が展開されている。(関連サイト:「障害者自立支援法」に関する緊急要望書 など)
さてここでは、普段なかなか人目につかない福祉作業所を例に、その実態を紹介したい。北陸の地方都市(県庁所在地ではない)のとある作業所は、もともと精神障害当事者主体の株式会社としてスタートし、草むしり、障子の張替えなど、地域とつながりのある仕事を地道に行っていた。
今もこれらの仕事を多少請け負っているが、需要が減り、現在では袋詰め、シール貼りなどの単純作業の内職が多くなった。これらの作業は、何十・何百の量をこなして、何十円〜百何十円の世界で、とても気が遠くなる話だ。このような作業が延々と、時には1日中続くこともある。それならまだいい方で、仕事が全くない日もある。
福祉の世界のおかしなところの1つに、「一般就労」という言葉がある。労働に一般も何もないと思うが、「一般就労」ではない働き方を「福祉(的)就労」と呼ぶ。この作業所は、精一杯やっているにもかかわらず、最低賃金を支払うことができず、やむなく就労移行支援事業(非雇用)という形式で運営している。この作業所の時給は80円。
そこに今回の自立支援法施行で、利用者は1日460円の負担金を支払うように定められた。真面目に1日6時間の労働をして得られる収入は、差し引きたったの20円。一食分の食事はおろか、一体このお金が何の足しになるというのだろうか? これらの負担のしわ寄せが、多くの場合家族にかかってきている。
日本では、特に精神病に対する間違った差別意識や偏見が根強くあり、本人も家族もこのような実態を訴えきれず、ただただ泣き寝入りをするばかりである。福祉作業所に通う人達の顔は暗く、このような過酷な条件で働き続けているため、すっかりやる気や自信を失っている。
このような制度を作り、運用している人達(ここでは市の担当者)はいう「彼らは十分な仕事ができないし、施設を利用して訓練を受けているのだから、利用料を支払って当然だ」一方、ニュージーランドの友人はいう「ニュージーランドでは、いかなる労働にも最低賃金が保障されている」。(*)
皮肉なことに、今回の障害者自立支援法施行によって、ハンディを抱えた人達が地域で当たり前の生活をすることが益々難しくなっている。
(総持真子)
◇
* 編集部・日本の最低賃金法は、福祉就労(福祉的就労)などのいくつかの適用除外を設けています。法制面(行政側の解釈など)では「福祉就労」は建前上は、「一般就労」の前段階として就労支援事業に位置づけられていますが、当事者の「福祉就労」から「一般就労」への転職はかなり困難です。「一般就労」の難しい障害当事者が「福祉就労」で働きつづけざるを得ないのが、障害種別をとわず多くの当事者の実態といわれています。(12月13日・修正しました)
精神保健福祉ジャーナル『ゆうゆう』52号(特集「障害者自立支援法」)障害者自立支援法の現場に及ぼす影響が、多数報告されています。是非、お手にとってご覧下さい。
【写真】昨年秋、障害者自立支援法案(現法)審議に関連して、国会前にあつまっていた身体障害者の人たち(編集部撮影)
http://www.janjan.jp/living/0612/0612086087/1.php