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□中学生自殺 学校週5日制の問題点 [PJニュース]
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2403639/detail
中学生自殺 学校週5日制の問題点
【PJニュース 09月04日】− 今月1日、神戸市須磨区のマンションの敷地内で、このマンションに住む中学1年生の男子生徒が死亡しているのが見つかった。生徒の母親は「1日から学校が始まるのを前に、宿題がたまって悩んでいた」と話しており、警察は、男子生徒が飛び降り自殺したものと見ている。私の見聞する限りにおいて、近年、中学校の宿題、とりわけ夏休みの宿題は増加する傾向にあるようだ。実際、神奈川県藤沢市では、夏休み直前になると、公立中学校の多くが各教科の夏休み中の宿題を一覧表にまとめ、生徒に配布しているが、その量は半端ではない。
例えば、ある中学校の1年生の場合、▽国語は「読書感想文」のほか、もう1本「任意の作文」の提出が必須。「任意の作文」とは各種コンクール用の作文で、生徒はまずどのコンクールの作文を書けばよいのか悩むことになる。▽数学は「プリント5枚」、▽英語は「数十ページのドリル1冊」と「英文のレポート1本」、▽社会は「都道府県調べ(A3版を1枚以上)と「プリント3枚」、▽理科は「プリント5枚」と「自由研究」、▽美術は「自然画1枚」と「ポスター1枚」、さらに「文化採用のシンボルマークのデザイン1点」、▽音楽は「合唱コンクールで歌う曲のイメージ画1枚」、▽家庭科は「B4版の用紙にレポート2本」といった具合で、すべて提出が必須なのである。今の中学生は、この他に塾の夏期講習やら、クラブ活動やらの日程が加わり、家族旅行などは負担増以外の何者でもなくなってしまうのである。
中学校が夏休みに大量の宿題を出すことの真意はわからない。だが、少なくとも、私の知り合いの複数の中学校の教員は、中学校が夏休みの宿題の量を増やす背景として、(1)学校週5日制の導入により授業時間が減少したため、1学期中には不十分だった各教科の復習や計算問題などの反復練習を補う目的があること、(2)生徒が非行に走ったり、遊んでばかり過ごしたりすることを防止するため、遊ぶヒマが無いぐらいのノルマを課すことなどを、一致して指摘する。中学生が自殺した神戸市の中学校の校長は「宿題の量は至極、一般的だった」と述べたと伝えられるが、中学校が宿題を増やす傾向が各地で見られる中で、この校長が何と比較して“一般的な量”と主張するのかは不明であり、生徒側の受け止め方とは違っている可能性もある。
夏休みの宿題の負担感については、生徒個人の“宿題処理能力”が大きく左右するものであり、第三者が一概に負担の増減を評価できない面はある。しかし、それ故に、「普通に考えて、宿題が苦で、生徒が自殺するだろうか」と問われれば、「そういう生徒がいても不思議ではない」と答えざるを得ない。生徒が遊んでばかりいたとは限らない。さまざまな事情で、宿題をやり遂げずに夏休みの最終日を迎えてしまう生徒もいるかもしれない。そんな生徒が2学期前日に、あらためて宿題の山を前にしたら、見渡す限り地平線に囲まれた砂漠の真ん中に立たされたようなめまいを覚えるのも想像に難くない。
日本の子どもの学力低下が問題となる中で、「学校週5日制」や「ゆとり教育」は見直されようとしている。「ゆとり教育」の理念自体には共鳴できる部分もあったが、高校や大学の学力試験を主体とした入試制度や学歴社会という現実がある中で、小中学校の教育現場に「ゆとり」を先行させた矛盾が噴出したものと言えよう。ただ、問題なのは、一連の見直しがあくまでも「学力低下」を問題視したことによるものであって、学校週5日制が生み出した「塾通いの増加」や「宿題の増加」といった児童・生徒の負担増を問題意識として捉えていないことである。役人が考える単純な制度の改変は、実際の教育現場にはかなり複雑かつ深刻な変化をもたらす。制度の見直しによって、子どもたちの負担ばかりが増え続けることを懸念する。
現時点で、神戸市の中学生が自殺した動機ははっきりと確定してはいないが、報道されているように「宿題を苦にした自殺」だったとすれば、同じような犠牲者を出さないためにも、あらためて宿題の量や内容、そして学校週5日制との関連が早急に検証されるべきである。そうした作業を行う上でも、自殺の動機の報道には意義があり、そこにこそ、このニュースの本質的に重要な要素があると言わなければならない。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJニュースはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 成越秀峰【神奈川県】
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2006年09月04日06時22分