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□[医療観察法]心神喪失男性、入院3カ月も補償なし|毎日新聞
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2374800/detail?rd
[医療観察法]心神喪失男性、入院3カ月も補償なし
重大事件を起こし、心神喪失などで無罪や不起訴になった精神障害者に対し、裁判所が審判で入・通院を命じる「心神喪失者医療観察法」で、入院決定を不服として抗告していた福岡県の50代の男性について、福岡高裁が地裁の決定を取り消し、男性が退院していたことが分かった。同法には刑事裁判の刑事補償法に相当する規定がなく、男性は名古屋市内の病院に約3カ月半入院させられた補償を受けられないなど、制度の不備が明らかになった。
最高裁によると、昨年7月施行の同法で地裁の決定が取り消されたのは初めて。男性は、退院して福岡に戻る旅費も自分で負担した。国は「精神障害者の人権に最大限配慮する」としてきたが、厚生労働省などは制度の見直しを迫られそうだ。
男性は昨年8月、木造のお堂に灯油をかけ、ライターで火を付けようとして通行人に見つかり、放火未遂容疑で逮捕された。捜査段階の精神鑑定で「アルコール幻覚症で心神喪失状態」と診断され、検察側が9月、不起訴としたうえで審判を申し立てた。
福岡地裁の審判で、男性の付添人(弁護士)は(1)アルコール依存症は地域の病院に通院してリハビリを受ければ改善し、入院の必要はない(2)ガソリンではなく揮発性の低い灯油をかけており、観察法の対象とならない放火予備罪――と主張。しかし、福岡地裁は12月、放火未遂と判断した上で「薬物療法などで改善の可能性がある」として入院を命じた。
同法には刑事裁判の3審制に準じた抗告、再抗告手続きがあり、男性側は入院を不服として抗告。福岡高裁は3月「実際に着火した危険性は薄く、行為は放火予備罪にしかならない」と、男性側の主張を認めて地裁決定を取り消した。検察も再抗告せず、取り消し決定が確定した。
入院を命じられた患者が入る専門病棟は全国で建設が大幅に遅れて当時は九州になく、男性は地裁決定後、名古屋市の国立病院機構東尾張病院に入院していた。男性には身寄りがなく、入院決定の取り消し後も1人で地元に帰れる状態ではなかったため、同病院の職員が引率して福岡に戻った。職員を含む移動費用は男性の生活保護費を取り崩したという。
付添人は「刑事裁判で無罪になれば刑事補償法の補償があるのに、医療観察法では何の支えもないまま病院から出される。入院施設の数も少なく、遠方での入院を強いられるなど課題は多い」と指摘する。
厚労省精神・障害保健課は「入院決定が取り消された例はなく、共管する法務省などと対応を検討したい」としている。【坂本高志、松本光央】
■ことば(心神喪失者医療観察法) 医療現場に任せきりだった重大事件を起こした精神障害者の処遇を司法制度の中に位置づける仕組みで、01年の大阪・付属池田小児童殺傷事件が法制定のきっかけ。裁判官と精神科医が合議し「再犯せず、社会復帰させるための治療の必要性」を審判。入院、通院、入・通院の必要性なし、のいずれかを決定し、入院命令の場合は厚生労働省所管の専門施設に入る。入院期間の上限はなく、裁判所が6カ月ごとに入院継続の是非を判断する。
2006年08月28日03時32分