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http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060706/ftu_____kur_____000.shtmlより転載。
生活保護費の削減案
弱者の暮らしを直撃
国の財政赤字を縮小するための支出減らし策を検討している政府・与党が、生活保護費についても削減案を示し、生活保護受給者を支援する人たちが「厳しすぎる」と批判している。支援活動をする側は「受給できる状況なのに受給できていない人が多いことが、むしろ問題」と強調しており、考え方の違いは歴然。生活保護をめぐる議論が高まる可能性もある。 (白井康彦)
ホームレスの支援活動を続け、生活保護の実情にも詳しい大阪弁護士会の小久保哲郎弁護士は、今回の削減案の概要を見て「貧困者に冬の時代が来ようとしている」と感想を述べる。
生活保護は、国民生活の「最後のセーフティーネット」と言われる。病気や高齢、失業などで収入が乏しく生活がたちいかなくなった人に、国と自治体の予算から生活費が支給される。ただし、財産がほとんどなく、扶養してくれる家族もいないことなどが条件。
日常の生活費の「生活扶助」、家賃についての「住宅扶助」、医療費の「医療扶助」など八種類の給付がある。受給者は増え続け、現在では十年前の約一・七倍、約百五十万人に達している。
◇ ◇
削減案は先月下旬に示され、七日に閣議決定される「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」(骨太の方針)に盛り込まれる見通しだ。
まず、生活扶助の「基準額」の見直しが盛り込まれた。生活保護は、収入が基準額に達しないときに差額分を受け取れる仕組みなので、基準額が引き下げられれば受給額が減る。
地域間で物価水準に違いがあるため、生活保護には「級地」という制度があり、一級地の方が二級地より基準額が高い。削減策には、この級地制度の見直しも入った。全体の保護額が減る方向に格差が縮小されそうだ。
十五歳以下の子どもと一人親の家庭に上乗せ給付されている「母子加算」も見直し対象。上乗せ額は子ども一人の場合で月に二万−二万三千円だが、支給要件を親が働きに出て保育費用がかかる場合に限定する方式などが検討される。
持ち家に住みながら生活保護を受けるケースについては、土地・建物を担保に生活資金を借り入れる「リバースモーゲージ」制度を優先的に利用する仕組みを検討する。
七十歳以上の生活保護受給者に上乗せ支給されていた「老齢加算」は二〇〇四年度から段階的に削減され、本年度には廃止された。そして、この処分の取り消しを求める訴訟が各地で起こされている。今回の削減案は追い打ちをかける形だ。
◇ ◇
広島県の集団訴訟を支援する「広島県生活と健康を守る会連合会」事務局長の日下健二さんは「厳しい、を通り越した案だ。今までは『ここが不公平だから改めよう』という考え方が見えたが、今回は『何が何でも削減する』姿勢に見える」と話す。
生活保護を担当する自治体職員や職員OBらでつくる全国公的扶助研究会も、生活保護削減の方向には反対している。
前事務局長の日比野正興さんは「リバースモーゲージは、制度の使い勝手が悪くてあまり利用されていない。それを優先利用−というのはどうか」と疑問を呈する。そして「生活保護の削減には大きな抵抗勢力がない。政府・与党に『やりやすい』と思われているのでは」と指摘する。
先月末から今月にかけ、各地の弁護士会は「全国一斉生活保護110番」を行った。電話相談に当たった弁護士らは「自治体の福祉事務所の冷たい対応で、生活保護を受給できる機会を奪われている人が多い。生活保護費は逆に増やすべきだ」と口をそろえる。病気がちな人が窓口を訪ねても「まだ働けるはずだ」などと冷淡に扱われるケースも目立つという。
国家財政の立て直しが急がれるのは確か。だから、生活保護予算も削られなければならないのか、セーフティーネットのあり方が問われる。
2006.07.06