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縦並び社会:第4部・海外の現場から/4 若者の就労、悩む欧州
学生約1500人が正門から中庭まで埋め尽くした。中世の面影が残るフランス・ブルターニュ地方のレンヌ市。2月、政府が法制化を目指した初期雇用契約(CPE)をめぐり、レンヌ第2大学の授業ボイコットで火がついた反対デモは全土に広がった。
CPEは、26歳未満の若者を2年間の試用期間中、自由に解雇できる。「多くの学生には、親の代より労働環境が厳しくなる不安がある」。学生評議会副議長のボワイエさん(23)は反対した理由を説明する。
若者(16〜24歳)の失業率は22%。高卒程度以下に限れば40%に上る。フランスの法律では企業がいったん雇用すると解雇しにくく採用に二の足を踏む。CPEは雇用を流動化させ、最も就職が困難な低学歴層を救済するのが狙いだった。リジェ雇用相特別顧問は「大学生に反発されるとは考えていなかった」と撤回した無念さを隠さない。
政府は70年代以降、若者が見習い先で働きながら職業訓練を受けられる失業対策を進めてきた。国や企業が設立した職業訓練施設は約4万5000カ所に上る。
パリ中心部の「ステフンソン校」には講義室のほか、本物そっくりの「宝石店」や「旅行代理店」まである。運動用品卸売会社に勤めながらセールスを学び、バカロレア(大学入学資格)取得を目指す高校中退の男性もいた。ここで学んだ80%は修了直後、正社員になる。しかし同校の定員500人に毎年7倍の応募があり、狭き門からあふれ出る。
一方で、就労意欲に乏しい若者の増加が問題になっている。
大学中退のギュイヤールさん(24)はウエーターや清掃係など30種類の職を転々としている。デモには参加していない。インテリ層の母親から「何か仕事の目標を持て」と言われるたびに反発する。「働くことより趣味で自己実現したい」
フランスは若者の雇用に苦しみ続けている。
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隣国イギリス。98年、ショッキングな数字が明らかになる。義務教育を終えた16歳から18歳までの若者のうち9%(約16万1000人)が就業も就学もしていない。「ニート」の言葉が生まれ、ブレア首相は削減計画を作るよう指示した。
政府の報告書は家庭や社会環境にも原因を求め、主に13〜19歳向けの「コネクションズ」と名付けたプロジェクトが始まる。全国47カ所に非営利民間の組織を作り、毎年4億ポンド(約840億円)以上を支出する。
このうちロンドン南部の6区を受け持つ「コネクションズ・サウス・ロンドン」。10万人の対象者全員のデータベースを作り、189人の専門相談員「パーソナル・アドバイザー」が若者全員と少なくとも一度は面談することにしている。
ロンドン副都心クロイドンにある施設には、若い男女が大勢出入りする。アルバイトのベーカーさん(19)は「フルタイムの事務職に就きたいので、どんな職業訓練制度があるか聞きに来た」という。
ここでは就職や進学だけでなく、健康や避妊、福祉手当の情報まで提供する。担当者は「就労支援だけでは不十分。低学力や学習障害、家庭の事情、健康問題にまでかかわらないと、うまくいかない」と語る。
不登校児の支援にも力を入れている。クロイドン近郊の住宅街には別の施設がある。平日の昼過ぎに訪れると、14〜15歳の男の子2人が女性スタッフと一緒に掛け算ドリルで勉強していた。
コネクションズ・サウス・ロンドンは01年以降、管内のニートを20%以上減らした。カーン事務局長は「ニートを減らすには、15〜16歳の若者に働きかけたのでは遅すぎる」と言う。
イギリスのニート率は05年11月時点で7・7%にまで下がった。それでもまだ13万人いる。=つづく
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■職業訓練
職業訓練に対する公的支出は、欧州先進国の充実ぶりが目立つ。経済協力開発機構(OECD)の04年(一部03年)調査によると、国内総生産(GDP)比で、オランダの0・60%を筆頭に、フランス0・31%、英国0・14%。一方、韓国は0・06%、米国は0・05%にとどまる。日本はさらに低い0・04%で、OECD諸国中で最低レベル。
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毎日新聞 2006年6月18日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/tatenarabi/news/20060618ddm003040149000c.html