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1億総中流はウソ?-ニポンの上流は実は「労働者階級?」--「6千万総中流」--『ロンドン〜スクエア・マイルから』--JMM
1億総中流と言われて久しいですが、このような記事を見ているとやっぱり「中流」等と言う考え方も、マスコミの宣伝(プロパガンダ)?による洗脳ではないと思えてしまいます。
それもと資本主義が高度に発展したイギリスの物指しが違うのでしょうか?
私には高度経済成長が続いているアジアの国々の発展を見ていると、支配層にやっぱり騙されているように気がしていますが・・・・・
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「6千万総中流」--『ロンドン〜スクエア・マイルから』 丸國葉 第57回--JMM
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■ 『ロンドン〜スクエア・マイルから』 第57回
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「6千万総中流」
『おいしい!』
すっかり日の出が早くなって、窓の向こうには心地よい朝日に新緑が反射してきらきらしている。
明るい中、起床できる幸せを感じながら、ばしゃばしゃと顔を洗った後の一言がこれだった。
おいしい? この意味不明の発言に我ながら絶句。
日本の英語教育ではあまりみかけない表現がいろいろとあるが、たとえば、「gorgeous(ゴージャス)」なのは「○●姉妹」だけでなく、「すこぶるいい天気」であり、「グッドルッキング・ガイ」であるし「beautiful」も似たような表現で使われる。
こういった英語感覚に慣れてふともれた一言なのだろうが、おかげで五感を伝える日本語変換能力がどうも怪しくなってきたようである。
それでもやはり日本人。懐かしい日本人顔を見つけるとほっとするもの。
最近、転職してきた四十代ミドルと思われる英人トレーダー。彼の風貌は、「どこかでお会いしましたっけ?」という陳腐な決まり文句[イギリス版「ねぇ、お茶しない」(古いか)]で、たずねてしまいそうなくらい親しみのある顔。特に我がオフィスは"年中カジュアル"なので、益々そのリラックスした身だしなみはいわゆるシティのトレーダーとは程遠いイメージなのである。Plumber(プラマ−=配管工)やScaffolder(スカフォルダー=足場職人=一般には家の外壁を塗る人)によくいるタイプじゃないかと同僚とこそこそ。
それでも、腑に落ちないでいたのだが、市場が動いてどたばたしている時に限って、いや、そういう緊張感が感覚を研ぎ澄まさせるのか、空に浮いた電球がぱっと点ったのである。
そう、「裸の大将」(by芦屋雁之助さん)。どおりでなじみがあると思ったわけである。
気を許すと日本語で話しかけてしまいそう。
それにしても、つくづく思うのは現代のイギリス人たるや、外見からはまったく金持ち度合いがわからないということである。
こう"いつもカジュアル"の職場にいると、プラマ−芦屋氏しかり、他のトップトレーダーらの服装からは、数台のスポーツカーを所持し、市内の高級フラットと郊外のカウントリーハウスを行き来しているとは想像がつかないだろう。
そんな豪華生活を送っている一部はともかく、そこそこ裕福であろうシティ勤務の人たちの多くが、自分たちを「労働者階級」とみなしていると聞いていささか驚いた。
一億総中流(失敬、『中の上』でしたね)の日本人にはわかりにくいのだが、イギリスの階級社会は、上流階級、中流階級、労働者階級に大別される。
上流階級は世襲制の貴族からなっていて、元ビートルズのポールマッカートニー氏のように貢献度によって一代限りの貴族の称号をもらう人もいる。
中流と労働者階級の区別は、ちょっと乱暴に言えば汗をかくか、かかないか、か。
中流階級は医者・弁護士などの上層ホワイトカラーからなり、たとえば彼らの子弟はイートン校など名門パブリック・スクール(年間400万円とも)に通うことができるといった裕福な階級であり、一方、労働者階級の多くの生計はいわゆる肉体労働でたてているといった区別である。
中流の84%は家持ち、株持ちというから、金融機関勤務とはいえ、家なし、汗っかきの私は労働者階級か。
最近発表されたデータでは(金融ファイナンスグループLiverpool Victoria / シンクタンクFuture Foundation発表)、自分の所属階級を中流階級とする人が40年前に比べて30%から43%に増加。
プラマー(配管工)や建設業者などが今では、専門技術を持っていることなどから、中流階級とみなすようになったのだとか。まぁ、
外壁の修理やペンキ塗りなど相当の時給をチャージするというから、彼らの収入もなかなかあるらしい。
伝統的に中流とされていた金融機関の年収二千万円相当(£100,000、よくSix-figure=六桁と言う)以上でも労働者階級に属するとしている人もいることから、収入だけでは階級は一概に測れない。
もちろん、使う言葉もまったく違う。
敬語の使い方で日本人同士の年功序列がわかるように、使う単語、言い回し、イントネーションなどによって、階級の推測がつくのである。
ふとした表現を聞いて、「この人、郊外にマナーハウス(領主の邸宅)持っているかも」と。
今日の生活のために働き、消費するという労働者階級に対して、何よりも教育に重きを置くという中流階級。2020年には伝統的労働者階級の収入がさらに増加して、中流階級層がぐんと増えるといわれているから、英総人口6千万人総中流も遠くはない。
今月始めのテレグラフ紙の世論調査では、10年目に入った労働党ブレア首相の支持率が26%まで低下。
1960年代以降の労働党首相として最低の記録をつけている。
保守党(野党第一党)支持が多いといわれる中流階級層の拡大は、何かを象徴しているようでもある。
ちなみに、自分を上流階級とみなすのは1%に満たず。「人前では中流階級」と言い、「納税回避に注力」し、「万人に嫌われている」んだそうな。次の人生では、嫌われる身分になってみたい。
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丸國 葉(まるくに・よう)
外資系銀行・東京支店勤務を経て、1998年渡英。MBA取得後、ロンドン金融機関にて勤務。個人サイト <http://yomarukuni.livedoor.biz/>
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JMM [Japan Mail Media] No.375 Thursday Edition