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首相、人気の源泉「ぶら下がり」半減 安倍氏の試金石に
2006年09月17日10時06分
前例のないメディア露出で高い支持率を保った小泉首相。その力の源泉の一つが、記者団による1日2回の「ぶら下がり」取材だった。ところが、退任が迫った首相はこの機会を急に1回に減らした。後継に目される安倍官房長官の負担を軽くする「配慮」との見方が広がっている。安倍氏が自らの肉声で説明する機会を減らせば、国民の支持に影響が出かねない。その対応ぶりは新政権の試金石となる。
「同じ質問ばかりだから。2回は無意味じゃないかと思った」。首相は14日、回数を減らした理由を、そう説明した。
1日2回のぶら下がりは小泉政権になって、首相側と内閣記者会の合意で始まった。午前はカメラなし、午後はカメラが入る。歴代首相は歩きながら質問に答えたが、テレビカメラの前で話す機会は年数回だけだった。首相の肉声が伝わる機会は小泉政権で急増した。02年11月発行のメールマガジンで首相は「ぶら下がり」について「官邸と皆さんをじかにつなぐ重要な機会だと思っています」と強調していた。
ところが、今年7月、首相は「1日1回に」と事務秘書官を通じて、朝日新聞社などが加盟する内閣記者会に通告。記者会は「一方的な変更で認められない」と文書で抗議したが、ぶら下がりは1日1回が続いている。
急に減らした理由について、官邸スタッフからは「安倍政権への地ならし」との声が出る。安倍氏は官房長官としての会見で、官僚が作った応答要領に頼ることが多い。記者団の質問に即答する小泉首相並みの「瞬発力」は期待できないのではないか――。そういう見方が定着しつつある。
安倍氏の周辺も「内閣広報官が24時間体制で広報できるのなら、首相のぶら下がりは1日1回になるだろう」と話す。
15日の公開討論会で安倍氏は官邸の広報機能の強化を説いた。だが、その役を担うのは首相ではなく内閣広報官だ。安倍氏は内閣広報官を首相主導で人事を決める政治任用としたうえで、主要な会議に同席させ、首相との打ち合わせの機会も増やす考え。米大統領報道官のような役割を持たせることを検討している。
ただ、後継争いを独走する安倍氏の支えも国民的人気の高さ。説明責任に背を向ける印象を与えてしまえば、民意の支持はつかめない。「組織力」に頼る安倍氏の戦略が実を結ぶかは不透明だ。
◇
〈蒲島郁夫・東大教授(政治学)の話〉 小泉首相はぶら下がりでテレビなどを通じ国民に生のメッセージを送り、高い支持率を維持した。当意即妙のやりとりで国民を引きつけることに成功した。しかし、ぶら下がりはもろ刃の剣だ。リターンもあるがリスクも当然ある。一瞬のやりとりで失敗すれば、世論の支持を失う。安倍さんが自分の能力に自信があれば小泉流の手法を踏襲するだろう。なければ、やらない選択肢もある。だが、組織的な力を失った自民党は無党派を引きつけるメディア戦略がないと、選挙に勝てない構造になっている。
http://www.asahi.com/politics/update/0917/002.html
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