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asahi.com :朝日新聞今日の朝刊-社説
http://www.asahi.com/paper/editorial20060917.html
靖国批判 米国からの問いかけ
米下院の外交委員会が、日本の歴史問題で公聴会を開いた。テーマは小泉首相の靖国参拝をきっかけに悪化した日本と中国、韓国との関係だ。
ブッシュ政権は、歴史問題については「日本の国内問題」としてノーコメントを貫いてきた。一委員会とはいえ、米国の立法府で取り上げられるのは異例のことである。
与党共和党のハイド外交委員長は、靖国神社の戦争博物館「遊就館」を取り上げた。「日本がアジア・太平洋の人々を西洋帝国主義のくびきから解放するために戦争を始めた、と若者に教えている。私が会った日本の占領を体験した人は、だれも日本軍を解放軍とみていない」
民主党の幹部ラントス議員は、東条英機元首相らA級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社の首相参拝を批判した。「戦犯に敬意を払うことはモラルの崩壊だ。日本のような偉大な国家にふさわしくない。この慣行はやめるべきだ」
ハイド氏は太平洋戦争の従軍経験があり、ラントス氏はナチス・ドイツのホロコーストの生き残りである。そうした体験もあってのことだろう。
この主張が米国を代表する見方というわけではない。公聴会で「米国は介入すべきではない」と発言したグリーン前国家安全保障会議上級アジア部長のように、問題を日米関係に波及させないよう求める声もある。
だが、ハイド氏らを一部の限られた存在と片づけるのは間違いだ。このような公聴会が開かれたこと自体、靖国をめぐる米国の空気の変化を物語っているのかもしれない。
米国の日本専門家の間でも、明らかに靖国批判が広がっている。
日中関係の冷え込みは米国のアジア戦略に好ましくない、という分析的な判断からだけではない。「自存自衛の戦争であり、侵略ではない」「東京裁判は認めない」といった主張が首相の靖国参拝で勢いづいたことに対し、あの戦争の当事者である米国に困惑と反発が生まれているのだ。問われているのは、やはり日本の歴史認識である。
小泉首相は靖国参拝を批判するのは中国と韓国だけだと言い続けてきたが、それは政府の公式発言に限っての話だ。首相の参拝を批判するシンガポールのゴー・チョクトン上級相(前首相)は「この件に関して日本は外交的に孤立している」と明言している。
「内政干渉」と退けるのは筋違いだろう。彼らが問題にしているのは、彼らも戦い、あるいは巻き込まれた戦争についての歴史認識だからだ。
日本は、戦前の軍国主義を否定し、米占領下で民主主義に生まれ変わった。そんな日米同盟の原点をなおざりにするのは看過できない。米議会の論議はそう問いかけているのではないか。
「自由と民主主義」の連帯を次の政権も掲げるのなら、米国からの問いかけをきちんと受け止めるべきである。
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