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□小泉的言説はポップス・ベスト10の如き/田中康夫
http://eritokyo.jp/independent/tanakayasuo-col2003.html
小泉的言説はポップス・ベスト10の如き
田中康夫
掲載日2006年8月31日
「靖国神社」を巡って櫻井よしこ女史と僕の見解は、真っ向から食い違いを見せます。他方で、「住基ネット」に関して彼女と僕は、認識を同じくするのです。
少なく見積もっても維持費のみで、全国の地方自治体が年間300億円近くも要するシステムでありながら、住基カードの保有者は驚く勿れ、全国で僅か90万人余りに留まっているのです。その必要性を然しては求めていない証左です。正に、目に見えにくいハコモノ行政の無駄です。
コンピュータ・ネットワークの存在を否定しているのではありません。その在り方が問われているのです。にも拘らず、1枚の中に10万文字もの個人情報を入力可能なカードに、何は記し、何は省くべきか、こうした議論すら些かも行われぬ儘、不毛な○×的二元論に終始しています。
畏兄・西部邁氏の言説を引用すれば、「歴史の流れと、そこで形作られた慣習の体系と、そして取り分けその体系の内に保蔵され来たった(歴史的英知としての)伝統の精神とを大事として『秩序と良識』の何たるかを見定める、それが保守的という事である」。
「他方、歴史を進歩以前として軽視し、慣習を因襲として遠ざけ、伝統を独創に対して有害であるとして退けるのが革新的という事である」。
「この意味での保守対革新という政治の構図が、歴史感覚の乏しいアメリカでは、それ以上にアメリカニズムによって洗脳され切った感の深い戦後日本では、弱まりゆくばかりときている」。
一般に、「現状を維持する事の利点」を希求するのが保守主義だと浅薄に捉えては過つ、と僕は考えます。18世紀後半にイギリスで活躍したエドマンド・バークを高く評価するのも、この点に於いてです。
保守主義を代表する政治家であり思想家の彼は、変化を拒む頑迷固陋な人物ではありません。地域利害に囚われない近代政党の在り方をも示した彼は、以下の卓越した思想の持ち主でした。
社会の矛盾や格差が放置され続け、人々が蜂起せざるを得ない事態に陥る前に、指導者たるもの、民主主義の社会を保持するべく絶え間なき変革を行う先見性を持ち合わせねばならぬのだと。
物の本から引用すれば、「人々の革命への要求を先取りするような、その結果、人々が革命など必要としなくなるような賢明な政治」を希求し続けたのが彼です。
保守主義とは凡そ、「頑迷固陋」とは異なるのです。その意味では革新たり続けてこそ、本当の保守であります。
「歴史感覚の乏しさ」を自覚していた、即ち自身を映し出す手鏡としての弁証法が辛うじて機能していた往時のアメリカで捉えるならば、共和党的思考が櫻井よしこ女史であり、民主党的思考が田中康夫です。
であればこそ、対極に位置するかのように見えて、実は西部邁氏も含めて何れも、ジャズとクラシックが通底するが如く、保守主義に立脚するのだと思います。
比するに、定見無き右顧左眄で今週のポップス・ベスト10の如くに日替わりメニューを繰り出す小泉純一郎的な言説は、保守とも革新とも呼び得ぬフォニー(紛い物)な代物なのです。
真の革新とは保守とは何か。次週も論考を続けましょう。
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