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【天木直人 ニッポン外交の迷走】 2006年8月28日 掲載
国民の命を切り捨てる小泉外交を許すな
外交とは一体何のためにあるのか。もちろん、国民の暮らしと安全を守るためだ。間違っても権力者の個人的欲望を満たすための道具ではない。ところが小泉政権5年半の間に、この国はすっかり外交努力を放棄したかのようだ。人気取りパフォーマンス外交に明け暮れた小泉首相は、イラクでの邦人犠牲者や北朝鮮の拉致被害者の命を置き去りにしたまま総理の座を去ろうとしている。
そんな国民の命を切り捨てる外交がまたしても起きてしまった。北方領土海域での漁船銃撃事件のことである。8月16日の未明に起きたこの衝撃的な事件から10日以上も経つというのに拿捕された船舶、乗組員はなおロシアに勾留(こうりゅう)されたままである。夏休みに入った小泉首相は公邸に隠れたまま1週間もの間、声ひとつ出さなかった。泣き続けるしかすべのない被害者の母親や奥さんの無念に代わって、私は、小泉首相、外務省の不作為の大罪を糾弾したい。
事件直後、麻生外務大臣や外務官僚は「わが国の領海内での銃撃、拿捕であって、到底容認できない」と公言した。ならばロシアの行為は領海侵犯の不法銃撃ではないのか。いくら強硬に抗議をしてもしすぎることはないはずだ。その一方でロシア側は、すべての責任は「密漁を行った当事者と、密漁を放置した日本政府にある」と言っている。こんなことを言わせておいてよいのか。
わが国政府は本気で北方領土を日本の領土と思って行動しているのか。
百歩譲って、襲撃・拿捕された日本漁船が漁業区域を画した中間ラインとやらを越えて操業していたとしても、無防備な漁船に至近距離から実弾を発射することは、国際法違反である。国際判例の先例によれば、実弾射撃が許されるのは適当な行動が失敗した場合の最後の手段であり、その場合でも人命を危険にさらさないようあらゆる努力を払う義務があるとされているのだ。日本政府はなぜ国際法上の正当な権利を主張して断固たる措置をとらなかったのか。
今回の悲劇は北方領土問題に関する小泉首相の不作為の結果起きた。今年5月に来日したロシアのプリマコフ元首相は、北方4島返還を求めた自民党の中川秀直政調会長に、「(北方領土問題の解決に)何もしなかったじゃないか。おかしくしたのは日本側だ」と噛み付いたという。
小泉首相は夏休み明け早々に、またもやカザフスタン、ウズベキスタンへ外遊するという。どこまでも国民を置き去りにした首相だ。
●あまき・なおと 元レバノン大使。1947年生まれ、京大法学部中退で外務省入省。イラク戦争に反対する公電を送り、小泉首相の対米追従外交を批判して「勇退」を迫られる。著書に「さらば外務省!」「ウラ読みニッポン」(講談社)など。
http://gendai.net/?m=view&g=syakai&c=020&no=28033
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