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□[安倍政権船出]「時代の課題にこたえられるか」|読売新聞・社説
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060926ig90.htm
9月27日付・読売社説(1)
[安倍政権船出]「時代の課題にこたえられるか」
安倍新内閣が発足した。戦後最年少、初の戦後生まれの首相の誕生である。
そこに歴史的な時代の変容と政治が取り組むべき今日的な課題が、映し出される。
人口減という未曽有の局面にあって、長期のデフレ不況を脱した経済をどう安定した成長軌道に乗せるか。国・地方を合わせた長期債務残高が770兆円にも及ぶ危機的な財政をどう再建するか。
年金制度をはじめ、持続可能な社会保障制度をどう構築するのか。日本の将来を支える人材育成のために、どう教育改革を進めるのか……。
■論功行賞が目立つ■
活力ある日本を作るため、新内閣の課題は多岐にわたる。いずれも時代がいや応なく、政治に解決を迫っている。
その先頭に立つ首相自身は、閣僚は官房長官を務めただけで、経験が豊富ではない。だからこそ、組閣前、首相は、「老壮青のバランスが取れた全力投球内閣」を目指すと、繰り返し、強調したのではなかったか。
だが、内閣全体の顔触れを見ると、論功行賞の色彩が濃厚だ。出身派閥の森派から4人が入閣した。いち早く安倍氏支
持を打ち出し、「安倍首相」への流れを作るのに貢献した伊吹派から、党内第5派閥にもかかわらず、党の政調会長ポストに加え、2人が入閣した。
派をあげて安倍氏支持に回った党内第3派閥の丹羽・古賀派も、4人が入閣した。自主投票に回った津島派や山崎派などの出身の閣僚も、それぞれ安倍首相実現に積極的に動いていた。
農相など、いわゆる族議員の関連閣僚への起用も目立つ。首相が掲げる「構造改革」の推進という点で、かえって停滞する恐れもあるのではないか。
■重要な成長戦略の実現■
全体として、激しい“猟官運動”に押された人事とも映る。これがベストの布陣と言えるのか。安倍首相が掲げる政策を強力に推進するという観点からは、大きな不安がある。
首相は、「成長なくして日本の未来なし」と、成長戦略重視の姿勢を強調している。国民生活の向上は無論、国際社会の中で日本が占める地位など、国力の源泉が、基本的に経済力にあることを考えれば、当然である。
こうした観点から、重要なのは、経済関係の閣僚の陣容だ。首相は、財務相に尾身幸次・元沖縄・北方・科学技術担当相、経産相には甘利明・元労相を充てた。さらに民間からただ一人、大田弘子・政策研究大学院大学教授を経済財政担当相に起用した。
顔触れを見る限り、成長戦略をはじめ、経済・財政の政策の方向が、必ずしも明確に見えてこない。官僚を抑えて政治主導を貫く力量にも、不安をぬぐえない。政策決定に重要な役割を果たす経済財政諮問会議も、これで十分機能するのか、疑問である。
それでも、必要な政策には、取り組んでいかねばなるまい。同世代で気心の知れた塩崎恭久氏の官房長官起用や首相補佐官の拡充に、その思いも見える。
首相は、成長戦略として、研究開発の促進など、いわゆるイノベーションや、アジアの成長を取り込む戦略などを挙げているが、具体的に何をするのかが明確ではない。政策を明示して迅速に実行し、着実に成果をあげてもらいたい。
首相は、「成長なくして財政再建なし」とも言う。確かに、経済成長によって税収が伸びれば、財政再建に資する。
しかし、骨太方針通りに、2011年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化が出来ても、なお巨額の財政赤字が続く。社会保障制度の財源問題も真剣に考えねばならない。
首相は、消費税率引き上げを含めた税制改革の論議は来年秋以降としている。だが、国民の将来不安を取り除くためにも、税財政、社会保障制度などの改革像を早期に示すべきではないか。
■新憲法へ首相の主導を■
新内閣にとって、対中国外交の再構築は、直面する最重要課題の一つだ。首相と考え方が近い麻生外相の再任は、官邸、外務省一体で、対中外交や核・ミサイルの開発を進める北朝鮮への対応などに当たる姿勢を示したものだろう。
日本外交の基軸は、日米同盟だ。日米同盟を基盤としつつ、経済、軍事両面で大国化した中国が地域の安定と繁栄への貢献を果たすよう促すことが重要だ。
首相は、中国との首脳会談に意欲を見せている。ただ、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)などの会議の場で首脳会談が実現したとしても、相互訪問への道はなお遠い。障害となっている靖国参拝問題で、首相の態度や発言は曖昧(あいまい)なままだ。
首相はかねて、自由、民主主義などの基本的価値観を共有するインドや豪州などとの連携の強化を強調している。広く戦略的なアジア外交の展開も、重要な課題である。
首相は、「戦後レジーム」からの脱却を主張し、自らの内閣で新憲法制定を政治日程に乗せると明言している。5年という目途も示している。
歴史的な変化を乗り切る指針となる国家像を体現するのは、新憲法だ。新憲法制定へ、首相の主導で大きく前進させねばならない。
(2006年9月27日1時55分読売新聞)
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