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2006.8.26(その2)
森田実の言わねばならぬ[298]
稲村公望さんの国際情勢分析――「アメリカが外交政策を微妙に変えてきている」
「完全不滅の国家という観念は、完全不滅の人間という観念と同じように非現実的なものであることが必ずわかるだろう」(デビッド・ヒューム『グレートブリテンの歴史』1754-62)
[稲村さんは元日本郵政公社理事、現中央大学客員教授であり、私にとっては郵政民営化反対の同志である。稲村さんはアメリカの外交官のための大学の出身者であり、全世界に数多くの友人、知人をもつ国際通である。稲村さんの「最新国際情勢分析」をお読みください]
《アメリカが外交政策を微妙に変えてきている――こんな話を聞いたのが、7月の中旬に知人、友人で開いた非公式のシンポジウムだった。ヨーロッパ外交史の専門家の感想である。国防総省と国務省との暗闘があって、徐々に外交政策に変化が出ているとの話だ。国務省あたりでは、従来の大使館制度を憂えて現場主義に力を入れているとのことで、首都に大使館機能を縮小して、地方都市に小さな出先を置く数を増やしている。花の都だけではなくアフリカの小国あたりの出先も強化しているとの話だ。
要するに、9.11以降の外交、一国主義の失敗があり、急速に対応を修正する動きだ。ヨーロッパとの激しい対立を何とか解消しようとの現実対応の動きともとれる、ひとつの例が、イランへのシグナルで、核濃縮を中止するなら、交渉に応じるとの声明を出したことである。南部レバノンでの、ヒズボラとイスラエルとの武力の応酬は、混迷を加えているが、それでも、新たなシグナルである。中米で国交回復をした時のシグナルの出し方にも似ているような感じもする(この時は、日本は置き去りにされ、沖縄返還の交渉が絡む繊維交渉で、日本は完璧に外交で敗北した)。
もうひとつの変化は、アメリカが国連の分担金の出し渋りをやめたことである、もう国連などいらないという主張をやめたことである(いま思えば、日本の常任理事国入りの威勢のいい話も策略に乗っただけの話かもしれない)。さらにもうひとつの兆候は、地球温暖化に関する京都議定書への参加の可能性をほのめかしたことである。
アメリカの外交政策の変更の可能性を知人にも確かめたが、やはり、軍事力の行使は、政治的に経済的にも、もうアメリカ一国だけでは負担できない天文学的な数字となり、イラクでの武力行使に懲りたからではないかとの意見であった。例の北朝鮮のミサイル試射の時にも、ブッシュは、この問題を外交的に解決すると言い切っている。力の対決を最初から回避しようとしている声明であった。外交の手練手管の応酬がなされているなかで、この国では先制攻撃論が出るなど、瀬戸際外交の恫喝と挑発に便乗しかねない怖さがあった(大見得を切って国際連盟を脱退した松岡洋右外相とイメージがダブる)。
もちろん、変化の兆候の解説に対して、自動車レースをして観客席まで突っ込んで、大量の観客をひき殺しておきながら今頃になって、元のコースに戻っても、アメリカの信頼回復は非常に困難で、収容所での虐待など、暗澹たる気持ちになると述べた批判的なアメリカ人の知人もいた(小泉首相の訪米の日にアメリカ最高裁は、国際法規を遵守すべきとブッシュ政権に判断を下した)。
もう一昔前の話であるが、バンコクでつき合いのあったカンボジア人が来日したときの話である。文化大革命の亜流で、自国民を大虐殺した派閥の一員が大統領になり、その副官として、来日した。フランス留学組で、日本ははじめてだというので、一席設けて、日本のどこが良かったかと聞くと、道が清掃されてごみが落ちていないというので、アジアの紛争はみんな代理戦争で、タイと日本だけが独立国で、外国勢力の手先が内乱を起こして殺し合いをするのは馬鹿なことではないかと言うと、突然泣き出した。翌日、東京から失踪して、後日海外に亡命したことを知って、びっくりしたことがあった。
超大国アメリカが、ヨーロッパでは世界の平和に対する脅威と揶揄され、微妙に外交政策を変えていると見られるなかで、この国の指導者の動きは威丈高である。アメリカが外交的解決をと主張するなかで、先制攻撃論が出ることがもう不可解だ。代理戦争でもさせられかねない雰囲気だった。プレスリーのグレースランドでの歓待ぶりも異常なほどだ。ヨーロッパに反対され、戦費を大量に貢いでいるのは日本であり、それ以外にはないから、当然のことで、浮かれる話ではない(日銀は戦費調達に貢献する米国債の購入高を発表すべきだ)。
ブッシュに行くなといわれても、小泉は靖国に行ったそうだが、いままで、さて何を言われ続けたのだろうか。アメリ力の外交は伝統的に、ニコニコしながら、片手に棍棒をもって接することが得意中の得意である。日米構造協議という棍棒で脅され続けて、この国の富を強奪されておきながら、プレスリーの歌に興じるのは、国益を毀損する。アメリカの外交の修正があるとすれば、それは、ヨーロッパの団結の圧力があるからであり、資源強国となったロシアの差配に、対応せざるを得なくなっただけの話である。
アメリカ人は本当は、追従する者は尊敬しないのだ。アメリカにちゃんと物申すことがなければ、真の友好国とも、同盟国とも思わないだろう。アメリカは、日中韓の友好をと口では言うが、さてさて、漁夫の利を占めるのは誰だろうか。アジアにも友人が少なくなった(そのうち、アメリカにも置いてけぼりにされるかもしれないし、政権が変われば一体どういうことになるのか)。
〔タイ国王陛下の祝典に天皇・皇后両陛下がバンコクを訪問されたことは文字どおりの日タイ友好の証の慶事であった〕
あるアメリカ人の友人の対日専門家は、小泉総理は、日本の政治をも(私物化の意味合いで)民営化したと述べた。言いえて妙で、米営化したと言いたげであった。この専門家は、米軍の思いやり予算を発案した策略家であるから注意すべき論点は、日本の自動車業界の批判もしたことだ。何か画策している雰囲気であった。巨額の和解金を取られた東芝事件や、コンピュータがらみの事件が昔あったが、いま、ソニー事件の兆候があり、いずれはトヨタ、ホンダ事件になるのかもしれない怖さを感じた。
日本はアメリカの衛星国になってはならない。大国の外交は、自国が戦争を主導しない代わりに、代理戦争をさせる。小国レバノンの総理のように、イスラエル、ヒズボラ、イラン、アメリカ、フランス、ドイツを巻き込み、自国の存亡をかけて、独立と平和を守り回復させようと努めるのが、真の外交だろうと思う。戦争直前のヨルダンに行って、国費を使ってペトラの遺跡という観光以外の目的はない名所で興じてらくだに乗り、「楽ではない」という駄洒落にすぎるのは、品格のない話である。また、マスコミから批判のないことも不思議な話である。》
[稲村様。ありがとうございました。また国際情勢分析をお願いします――森田実]
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C02849.HTML
森田実の時代を斬る:
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/TEST03.HTML
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