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靖国合祀「戦役勤務に起因」限定
大戦末期秘密文書、東条元首相が通達
1944年7月15日付で「陸軍大臣東条英機」名で出された、靖国神社合祀基準を通達した陸軍秘密文書の表紙の写し
第2次世界大戦末期、東条英機首相(兼陸相)=当時=が「戦役勤務に直接起因」して死亡した軍人・軍属に限るとする靖国神社合祀(ごうし)基準を陸軍秘密文書で通達していたことが分かった。原則として戦地以外での死者は不可としており、元首相自身の戦中の通達に従えば、戦後の同元首相らA級戦犯は明らかに「合祀の対象外」となる内容だ。
文書は、靖国への合祀は「戦役事変に際し国家の大事に斃(たお)れたる者に対する神聖無比の恩典」と位置付け、合祀の上申は「敬虔(けいけん)にして公明なる心情を以(もっ)て」当たるよう厳命している。
文書は1944年7月15日付で「陸軍大臣東条英機」名で出された「陸密第二九五三号 靖国神社合祀者調査及上申内則」。原稿用紙29枚分で、原文のカタカナをひらがなに直して戦後に書き写したとみられる。80年ごろに旧厚生省が廃棄処分にした書類の1部として作家の山中恒氏が古書市で入手した。
防衛庁防衛研究所の史料専門官は「旧陸軍の秘密文書の書式に合致し、内容にも矛盾がない」と原文を写したものにほぼ間違いないとしている。
文書は、戦死者、戦傷死者以外の靖国神社への「特別合祀上申」対象者として(1)戦地でマラリア、コレラなどの流行病で死亡した者(2)戦地で重大な過失によらず負傷、病気の末に死亡した者(3)戦地以外で戦役に関する特殊の勤務に従事し負傷、病気の末に死亡した者−の3つの要件に限定。「死没の原因が戦役(事変)勤務に直接起因の有無を仔細(しさい)に審査究明すること」を命じている。
また、この文書と同じとじ込みの中にあった同年7月19日付の「陸軍省副官・菅井斌麿(としまろ)」名の秘密文書の写しは「東条通達」を補う形で、上官らの温情から合祀対象者が拡大傾向にあった当時の事情を「神霊の尊厳を冒すことあらんか實(じつ)に由々しき大事なり」と戒め、基準徹底をさらに詳細に指示している。
当時、靖国神社への合祀者選定は陸・海軍省が管轄、霊璽簿(れいじぼ)と呼ばれる合祀者名簿を天皇が承認する形式だった。
■自分の合祀想定外
東条英機元首相の二男・東条輝雄氏(91)の話 父が陸軍大臣として、そのような文書を出したとしても、立場上、当然のことだったと思う。戦地に行かなかった者は靖国神社に合祀されないというのは当時の常識だった。父も戦後、自分が合祀されるとは思ってもいなかったはずだ。ただ(父についての)合祀は靖国神社が決めたことであり、一民間人の私が是非について意見を言うことは控えたい。
■当人が驚いている
文書を入手した作家・山中恒さんの話 基準の是非はともかく、基準に照らせばA級戦犯は、どう考えても合祀対象にはならない。戦地以外で死亡した例として「戦役に関係する特殊の勤務」という項目もあるが、これは情報機関員などを指し、内地の司令官などは該当しない。日露戦争で軍を率いた乃木希典、東郷平八郎らも合祀されず、乃木神社や東郷神社が建てられた。靖国に合祀されたことに一番驚いているのは、東条元首相をはじめA級戦犯のご当人たちではないか。
(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/00/sei/20060806/mng_____sei_____001.shtml
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