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戦争体験記
トラトラトラ爺は支那事変、大東亜戦争（太平洋戦争）に昭和１２年から昭和２０年８月まで従軍しました。２０歳から２８歳までです。戦争には絶対に反対していただきたい。勝っても負けても良い事は何一つありませんでした。ここでは、覚えている限りの戦争の事をお話ししていきます。手許に残っている当時の写真も、話しの内容に併せてご紹介します。
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戦争体験記
ＮＯ．７
７．「戦争慣れ」と「戦争ズレ」
自分は現役兵を昭和12年1月10日に満期した。その年の7月7日 櫨溝橋時事件がおき、それが上海へと広がり10月12日に赤紙が来た。上海戦線で日本軍は苦戦を強いられていた。トラトラ上等兵も11月2日に日軍１００万抗州湾上陸（柳川兵団）、上海戦線の支那軍は総崩れとなった。
上陸して何回か敵弾の下をくぐる度に、自分の気持ち、行動が変わって行く。ある時、敵が日本軍の通信線を切断して都合のよい所で待ち伏せしていた。そこへトラックに乗った自分達が行き合わせ、敵の一斉射撃を受けた。運悪く敵弾に倒れる戦友を低い所に引きずり込んで仮包帯でもできれば最上だ。最初の敵襲の時、何もできず一歩も動くこともできずにいたのが、二回三回と回を重ねる毎に度胸がつき落ち着いて応戦できる、これが戦争慣れなんだろう。
一年が過ぎ、二年三年と戦地生活をしていると、戦争ズレしてしまい悪の道へ・・・・・・。
善良であった若きトラトラ上等兵も二年三年と戦地生活すると、何も知らなかった悪の道へと精神的にも行動も簡単に入っていってしまった。まず初めは賭博だ麻雀だ。作戦中はできないが、警備体制に入ると必ず開帳する。後備兵の３０才〜４０才近い年配の兵隊達が始める。次が徴発と称しての「かっぱらい」。徴発してきた物を知り合いの支那人に売り付ける者や、それで稼いだお金を博打の元手にする者もいた。街に出て欲しい物を半値以下で強奪もした。気に入らないと殴る蹴るの暴行・・・・。日本憲兵隊に掴まって懲罰を受ける者も時々いた。
自分も昭和１４年1月雪の降っている日、保線作業の帰り道で衣糧廠の船着場に内地から来た日本酒多数、陸揚げしているのを見付けて6本入り一箱をを失敬し、トラックに積み込んだところを発見され、憲兵隊に突き出された。大いに油を絞られたうえに減給されてしまった。だが、その敵は5〜6日の内に討った。実は、電話線を不通にしてしまったのだ。衣糧廠も憲兵隊も用が足せず不自由で困る。ついに頭を下げてきたので、その下士官に言ってやった。「兵隊を使うのではなく、下士官は兵隊に使ってもらうんだ。兵隊の多くは年配者が多くて、女房子供を内地に置いて来て居るんだ。」これをきっかけに衣糧廠の下士官と意気投合し、時々二本三本と差し入れをもらった。我ながら悪くなったものだ。強請（ゆすり）、たかりの悪人になってしまった。
さらには、作戦中も悪の道へ。
言うまでも無く、戦争なのだから敵を殺すのは当たり前。やらねばやられるのだ。時としては何一つ抵抗をしない者をも殺してしまう。一人二人と命令で殺すこともある。人間は変な動物で初めは恐る恐る、でも段々と平気で実行できるようになり、その内に自分から進んでやるようになってしまう。それが戦争ズレで悪の道へとまっしぐらである。放火、食料のかっぱらい等は日常茶飯事だ。
ある作戦中、露営している輸送隊の馬を繋いでいるところに夜襲を受け、敵の迫撃砲弾をまともに受け一人は頭半分、一人は腹部、もう一人は足二本が吹き飛ばされた。馬も多くが被弾した。そのむごたらしい光景を見てからは、自分でも手向かう者を殺す事を何とも思わなくなっていった。
日本軍が占領した支那の街の城壁には「東洋の鬼」だとか「東洋の悪魔」とよく書いてあったが、戦地での年月を経る毎にまさしく悪魔になっていったのだ。
こうして段々といろんなことを何とも思わなくなって行く。恐ろしいことだ。
http://www.toshima.ne.jp/~torasima/senso7.html
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