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我が家のベランダには、3週間前の台風で壊れた大きなアンテナが放置されたままになっています。台風の後、テレビの映りが悪いので、新しいアンテナを近くの業者にすぐ頼んで、設置してもらったのですが、壊れた旧いアンテナが大きすぎて、その業者の車に乗らなかったのです。
その業者の方から「大変ですけど、ゴミ回収日に、捨ててください」と言われました。アンテナは、かなり大きくて重く、ゴミステーションまで捨てに行くのに、男手が必要です。神戸では、粗大ゴミの回収日が月に2回しかないのですが、ちょうど、回収の日が、自分の出張の日と重なったため、捨てに行けませんでした。したがって、この巨大ゴミが放置されたままになっているのです。
ちょうど3年前、デンマークの首都コペンハーゲンから約20kmのファルムという市の粗大ゴミセンター（生ゴミ以外の家庭ゴミ持込センター）を見に行きました。この粗大ゴミセンターは、10時〜18時営業で、クリスマスと正月を除き、年中無休です。自ら車を乗り付けて、ゴミの分類別捨て場所の前で、車を停め、それぞれのゴミを自分の手で捨てるというスタイルです。家庭用の粗大ゴミ集積が目的のため、特定営利業者のゴミを締め出しており、3．5トン以上の車を入場制限しています。ここに、家庭用のゴミを捨てに来る市民の車が年間20万台に達するそうです。
このファルム市は、人口約18000人で、23平方キロの小さな市です。「優れたサービスを低価格で提供し、出資者（市民）に利益（税金）を還元する」という憲章を掲げています。15年前に230人いた市の職員を3分の1の80人に削減し、自前の市役所を持たずに、経費削減に努めており、デンマークで一番税率の低い自治体を目指しています。そういった厳しい状況でも、最高の市民サービスを提供しています。
・67才以上の高齢者市民に年間14日の海外バケーションを無料提供
（Free 14 Vacation）
・市民が失業したら、48時間以内に仕事の提供
（48Hours Job Guarantee）
・学生1人につき、1台のコンピューターを実現
（Free Computers）
・学生の授業時間が他の地域より多い
（More Education Hours）
・学校を4つの中から選べる
（Free School Choice）
・サッカースタジアムの建設と試合の開催
（All Sporting Facilities）
その他にも
（Children Daycare Guarantee）
（Large Cultural Life）
（Elder Nursinghome Gurantee）
といった市民サービスが「0〜6才」「7〜16才」「17〜66才」「67才以上」の4年齢区分毎に平等に受けられるようになっています。こういった市民サービスの一つとして、この粗大ゴミセンターがありました。「優れたサービスを低価格で実現」という憲章どおりに、これが、非常に合理的なしくみだったのです。
ゴミの区分は、「ガラス瓶」「ガラス製品」「テレビ」「冷蔵庫」「電気製品」「電管球」「化学製品（危険廃棄物）」「金属類」「スマートメタル（軽金属）類」「セメント類」「レンガ」「瓦礫類」「新建材」「発泡スチロール」「プラスチック製品」「塩ビ管」「タイヤ」「靴・革製品」「新聞紙」「紙箱」「落ち葉・木くず」「草・泥・土」「大きな木の根っこ」「家具・ベッド」といった分別種類になっていました。
しかも、ゴミを捨てる場所が、トラックのコンテナ（すぐ積める形式）になっています。そして、最後に、「ボーイスカウト管理事務所」の建物があり、粗大ゴミの中で、中古でも売れそうなものをいったんその事務所に保管して、「定期的に蚤の市を開催して、売れると、ボーイスカウトの活動資金」になります。
粗大ゴミが寄付行為にもなるといった、これまた合理的なシステムを採用していました。このようなゴミ先進国を視察していただけに、我が家の巨大アンテナが、何とかならないものかと少々腹立たしく思った次第です。日曜日に、このアンテナを分解して、車で捨てに行ってもよかったのですが、こういった年中無休の「粗大ゴミセンター」など我が市にはありません。
このように、市民自ら、ゴミを捨てに行こうとしているのに、市としても、収集に出向くより、ゴミを持って来てもらった方がゴミ収集費用がかからず、得するはずです。また、そこで捨てるゴミの区分を指定していたら、分別作業の費用も軽減できるのです。おまけに、売れそうなゴミを取っておき、そこで、フリーマーケットを定期的に開けば、その粗大ゴミセンターの経費も賄うことができます。一石二鳥ならぬ一石三鳥にもなっていくのです。
どうしたら、安くて、快適な市民サービスを提供できるか？もっと考えられないものでしょうか。日本という国は、民間の経済活動においては、超一流国になりましたが、公共サービスにおいては、三流国のままです。費用対効果の概念がすっぽり抜け去ってしまっています。これ以上、民間の経済活動を競争させて、発展させても、弊害（皆が幸せにならない）の方が大きくなるだけです。
それよりか、民間の優秀な人材を公共サービスのカイゼン活動のために振り向けた方が、日本という国が住みやすい国になるはずです。
最後に、このファルム市では、市議会が夜に開かれます。というのは、市会議員は、皆兼業議員で、それぞれ、本業の仕事を持っている市民だからです。本業の仕事を終えてから、市議会に出席します。要するに、議員は月給をもらっていないのです。ほとんど、無給に近いのです。政治は「最高のボランティア」「最高の趣味」と考えられているようです。本当の意味で、市民が主導権を握り、政治を運営しており、豊かな社会を実現しているのです。
このゴミの例でも、お分かりのように、日本が先進国だと考えるのは、大間違いで、主権在民の民主主義国家としては、後進国なのです。満足な公共サービスも受けられない現状をもっと憂うべきだと思いませんか？
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