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WTO交渉凍結/日本提案の精神(多様な農業の共存、非貿易的関心事項への配慮)継続を(日本農業新聞論説)
http://www.asyura2.com/0601/senkyo24/msg/511.html
投稿者 heart 日時 2006 年 7 月 27 日 19:31:23: QS3iy8SiOaheU
 

WTO交渉凍結/日本提案の精神継続を
[2006年07月26日付]

 世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンド(多角的貿易交渉)は、年内合意を断念し、交渉を凍結することになった。主要国首脳会議(サミット)の要請を受けた主要6カ国・地域(G6)の集中した閣僚会合も成果を挙げられなかった。
 
 今回の農業交渉の行方は米国の国内補助金の譲歩提案にかかっていたが、中間選挙を控える米国は譲歩案を提案しなかった。交渉凍結の主因は、他国には譲歩を迫り、自らは痛みを伴わないという米国の身勝手な姿勢にある。多角的貿易交渉の凍結によって、多くの国は自由貿易協定(FTA)に一層軸足を移すとみられるが、2国間交渉でも米国が同じような強硬姿勢を続ければ、世界の貿易秩序は失われてしまう。
 
 ロシアのサンクトペテルブルクで開かれたサミットには、農業交渉打開の鍵を握るブラジル、インド、中国の首脳も招かれ意見を交換していることから、G6会合には交渉打開のいわば最後の期待がかかっていた。米国はこれまで貿易をゆがめる国内補助金を53%減らすと提案している。これだと米国の補助金は220億ドル程度に減らさなければならないが、現在の補助金は200億ドルを下回っており、新たに削減する必要はない。つまり痛みを伴わない提案である。
 
 批判が強いため、今回会合では70%削減という、ブラジルなど有力発展途上国グループが提案する75%削減に近い譲歩案を出すのではないかとの観測もあった。しかし譲歩案を示すどころか、欧州連合(EU)や日本などの市場アクセス(参入)分野の譲歩が先だとして、姿勢を変えなかった。議会の中間選挙を目前に米国政府は、国内の「弱腰批判」を避けた。途上国支援というラウンドの目的も、国際貿易秩序の確立も眼中にないかのようだ。
 
 日本政府は農業交渉で関税引き下げ方法など、可能な限りの譲歩を行ってきた。その一方、国の主食や地域経済の柱になっているような重要な品目は互いに認めて、持続可能な扱いをするべきだと主張してきた。当然、それを帳消しにするような上限関税にも反対を貫いた。最終的な譲歩案も用意していたという。凍結は日本政府、日本農業の責任ではない。
 
 心配されるのは、多国間交渉の凍結によって、FTAなど2国間交渉の市場開放圧力が激しさを増すことである。日本はWTO体制を基本にFTAや経済連携協定(EPA)に取り組んできた。WTO農業協定が定まらないままでは、2国間交渉での市場獲得に躍起になる産業界が国内農業の市場開放を強引に迫ってくることが予想される。日本農業はいま大改革のさなかにある。政府は今後のFTA交渉でも、農業の多面的機能の維持などWTOに示した日本提案の精神を忘れずにあたってもらいたい。

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【heart】
記事の中に触れてある「日本提案」というのは、2000年12月に日本政府がWTOに提出した案のことです。
農林水産省のHPに、「WTO農業交渉 日本提案 多様な農業の共存をめざして」と題した色刷りのパンフレットがありますが、そこの前書き部分の、「多様な農業の共存する新たな時代に向けて〜非貿易的関心事項への配慮〜」と題した文章から一部を抜粋・紹介します。ただし、今の農林水産省がこの立場を貫いているとはあまり言えないと思っています。
ついでに言うと、今回WTO交渉が決裂して、私はよかったと思っています。このままWTOが崩壊することを祈っています。ついでにFTAも。
外へ、外へ、そしてより大きく、を志向する時代はもう終わるべきだと思っています。そうやって視線が外ばかり向いている間に、足元の地域経済も、環境も、そして庶民の生活も、崩壊していっていると思うからです。
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多様な農業の共存する新たな時代に向けて〜非貿易的関心事項への配慮〜
http://www.maff.go.jp/wto/pamph_ja.pdf
(略)
いま、私たちは21世紀の農産物貿易の方向を定める重要な貿易交渉に向け、行き過ぎた貿易至上主義へのアンチ・テーゼとして自信を持ってこの提案を世界に示す。
この提案は、@農業の多面的機能への配慮、A食料安全保障の確保、B農産物輸出国と輸入国に適用されるルールの不均衡の是正、C開発途上国への配慮、そしてD消費者・市民社会の関心への配慮を求めるものである。
私たちは単にこの提案で自分たちの国、農業だけを守りたいのではない。この提案の根底にある各国の「多様な農業の共存」という人類の生存権にも通じるテーマを訴えているのだ。
21世紀、私たちは、そしてあなた達はどこで何をどのように食べていきたいのか、すなわちどう生きていいきたいのか。
私たちは今こそWTOに加盟する142ヶ国・地域の全ての人々と共に考え、真に公平で公正な貿易ルールを築いていく時だと信じている。

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