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(回答先: 規制撤廃および競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティブに基づく日本政府への米国政府年次要望書 2000年10月1 投稿者 てんさい(い) 日時 2006 年 7 月 26 日 08:53:38)
日本における規制撤廃、競争政策、透明性
及びその他の政府慣行に関する
日本政府への米国政府要望書
1999年10月6日
http://web.archive.org/web/20050309071714/http://tokyo.usembassy.gov/e/p/tp-2502.html
米国は、日本における規制撤廃、競争と規制制度改革の促進、より強力な競争政策の推奨と執行、そして規制手続における透明性の拡大について、それぞれの事項に深い、継続的、実質的な関心を抱いている。これらの分野において日本政府が大胆な措置を講じることは、日本経済において市場メカニズムが効果的に機能するうえでの構造的、統制的障害を取り除くために不可欠である。これらの分野で有意義な政策を採用し実施していくことは、日本における資本、人的資源の配分の効率を高め、そして日本の経済成長を長期的に持続させるために基本的に重要である。またそれは、米国やその他の外国企業による日本市場へのアクセスを阻害する構造的、制度的障害を改善する。
日米両国政府は、1997年6月に「規制緩和及び競争政策に関する強化されたイニシアティブ」を確立した際に、これらの課題について継続的に両国の関心を集中していくことの重要性を認識した。「強化されたイニシアティブ」は、両国政府が特に注意を払うべき分野別及び構造的な主要課題を明らかにするものである。米国は、両国の指導者により1998年6月と1999年5月にそれぞれ発表された第1回および第2回の「共同現状報告」に詳述されている、「強化されたイニシアティブ」の下で今日までに達成された成果を歓迎すると同時に、日本がそれらの措置を完全に実施していくことを期待する。しかし、更に成し遂げる必要のある課題は多く残っている。
米国政府は、日本政府に対し、日本における規制撤廃、競争政策、透明性及びその他の政府慣行に関する本要望書を提出できることを喜ばしく思う。本要望書は、「強化されたイニシアティブ」の下で取り扱われている全ての分野に関する多数の個別、具体的な要望のみならず、広範にわたる大胆な構造的イニシアティブを求めるものである。米国は、本要望書が、両国政府によって2000年3月末までに発表される第3回共同現状報告の基礎を成すべきものと確信する。
目 次
電気通信
医療機器・医薬品
金融サービス
住宅
エネルギー
流通
法律業務
その他の分野別課題
競争政策および独占禁止法
透明性およびその他の政府慣行
--------------------------------------------------------------------------------
電気通信
日本の消費者と産業界が双方とも認識しているように、日本の電気通信市場は競争市場のニーズを満たすことができない法律、規制、独占主義的な商慣行という過去の遺産を背負っている。このため、日本は、競争がもたらす革新的なサービスや技術、そして低料金といった様々な利益を受けることができずにきた。広帯域サービスやインターネット・ベースのサービスの提供、そしてもっと広く言えば、電子商取引の発展において日本が後れを取っていることは、競争促進的な電気通信の規制体系が欠けていることに直接端を発している。革新的な外資系企業は日本でこのようなインフラを建設するにあたって主要な役割を果たすだろうが、電気通信問題に対する日本の規制上の取り組みに抜本的な変化が近々起こらない限りは、こうした外資系企業は、日本に投資したり、革新的な技術を導入したりする自らの力量に制限を受け続けることになるだろう。
米国は日本に対して「通信ビッグバン」に着手することを要望する
世界中の政府および規制当局の間では、電気通信分野での競争の促進は、主要な政策目標の1つとして、1)新規競争事業者の参入を促しこれを育成する必要性、そして2)既存の支配的事業者が昔から享受してきた独占的立場を反競争的に乱用することに対する法律上・規制上の保護措置を同時に設けることという、2つのきわめて重大な問題に取り組むことを目的とした規制体系の確立によってしか成し遂げることができないという認識が高まっている。日本は第1の分野、つまり不要で時代遅れの規制をなくすことでは若干の成果をあげてきたが、NTTが有線および無線通信分野で支配的な立場にあることを利用して反競争的な行為を行うことがないようにするための法律上・規制上の手段が政府に欠けているという問題と真剣に取り組まなければならない。
少しずつ規制を変更していく方法では、日本は世界的に見て競争力のある電気通信産業をつくり上げることはできないだろう。むしろ、抜本的な法制上および規制上の改革が必要だ。米国は日本に対して、「通信ビッグバン」の実施を約束する明確な公共政策を策定することを求める。金融サービス分野で起こったように、「通信ビッグバン」が起これば、基本的な法制上および規制上の問題が一定の期間で解決することになるだろう。「通信ビッグバン」を早期に起こすことによって、電気通信分野だけでなく、日本経済全体で雇用が生まれ、投資が刺激され、企業と一般消費者の両方にとって料金が下がることになり、新しいサービスや技術が生まれてくるだろう。世界的に競争力があり、かつ開かれた電気通信分野を持てば、日本は、来るべき世界的なデジタル経済の分野でリーダーとなることができるだろう。具体的には、これら主要な問題を解決し、通信ビッグバンを成し遂げるためには、以下の措置が必要であると米国は考える。
T. 支配的事業者規制と競争上の安全策
T-A. 日本政府は、消費者利益のために競争を促進することを電気通信関係の規則の明確な目的とし、かつこれをすべての規制行為の手引きとなる基本的な規範とするような法的枠組みを2000年度中に実施すべく、その準備を1999年中に始めるべきである。この枠組みには、支配的事業者規制の制定および既存事業者による反競争的な行為を防ぐための、より強い監視体制の確立を含めるべきである。具体的には、新しい電気通信事業法は以下のことを定めるべきである。
T-A-1. 郵政省およびその後継機関に対する明確で競争促進的な使命を設定する。
T-A-2. 支配的事業者規制を制定する。この支配的事業者規制には以下の項目を含む。
T-A-2-a. 新規参入者から規制上の負担を取り除きながら、支配的事業者の乱用に対する安全策を講じる。
T-A-2-b. 小売りおよび卸売りサービスを提供する際の料金や条件を規定する。
T-A-2-c. 支配的事業者の設備へのアクセスを提供する。
T-A-3. 規制機関の独立性を高める制度的措置を講じる。
T-B. 暫定措置として、郵政省は1999年10月31日までに以下の措置を講じるべきである。
T-B-1. NTT各社に対して、NTTの割引サービスが反競争的にならないように、以下のようにし、その構成を変更するように指示する。
T-B-1-a. NTTの地域会社に対して、地域割引サービス(例:テレホーダイ、タイムプラス、定額料金でのインターネットアクセス)の割引料金を、競争事業者の地域網に着信する通信にも適用することを義務づける。
T-B-1-b. NTTコミュニケーションズに対して、「シャベリッチ」割引サービスを含む割引料金を、競争事業者網に着信する通信に適用することを義務づける。
T-B-2. 地域競争の進展を測り、具体的な目標を決めることができるようにするために、測定規準(例:競争事業者が支配する地域回線の数)の作成を開始し、1999年末までに公表する。
T-C. 再編後のNTT各社が反競争的な内部相互補助を行ったり、非効率な点を競争事業者に転嫁したりしないことを確保する、より厳しい措置を導入する。具体的には、1999年度末までに、次の措置をとる。
T-C-1. NTTの持株会社、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTファシリティーズ、NTTコムウェアに対して、再編前のNTTが公表していたものと少なくとも同程度に詳細な財務報告を個別に公表するよう義務づける。
T-C-2. 1999年4月のNTTの再編計画への回答で郵政省が求めた、承継会社間の関係(財務、研究開発、人事、その他の関係)についての郵政省へのいかなる報告をも公開するよう義務づける。
U. 相互接続
2000年4月1日をもって、郵政省は、すべての関係する経済原則を反映した長期増分費用(LRIC)モデルをもとにした料金設定を使って、NTTの相互接続料金を完全に競争的な市場での相互接続料金と同等レベルまでできるだけ下げるという第2回共同現状報告での約束を実行すべきである。暫定的(1999年度)に、市場がLRICをもとにした料金設定に対する準備をすることができるように接続料金を大幅に下げ、小売料金と接続料金の関係が地域競争を阻害しないようにするという約束を実行すべきである。これらの約束を達成するために、郵政省は以下の事項を実施すべきである。
U-A. 広く受け入れられているLRICの原則を正確に反映するように、郵政省のLRICモデルを改良する。この中には、次の事項を反映するコスト回収を含む。
U-A-1. トラヒック・センシティブ・コストとノントラヒック・センシティブ・コストの正確な区別
U-A-2. 他国の例を含む、客観的な調査に基づく正確な減価償却期間
U-A-3. より効率よく電気通信サービスを提供する技術の進歩
U-B. NTTの既存ネットワーク本来の非効率性を考え、NTTのトップダウンモデルをもとにした料金設定を認めない。
U-C. LRICベースの料金を2000年4月1日にさかのぼって適用することを約束する。
U-D. NTTの接続料金とNTTの割引サービスや定額料金サービス、その他の小売サービスすべてを考慮に入れて、様々なタイプのサービス(例:住宅用、ISDN、インターネット)について、NTTの小売料金と接続料金の関係が地域競争を阻害しないようにする。
U-E. 1999年中に、NTT地域会社に対して、大きなネットワークの改造を必要としない限りは、「割増料金」を取らずに、申し込みから6カ月以内に接続を完了することを義務づけ、改造費の明細を項目別に出してこれを独立して点検できるようにすることを義務づける。
U-F. 2000年度から、「指定電気通信事業者」としての相互接続条件を、移動体サービスとしてはNTTドコモに、長距離サービスとしてはNTTコミュニケーションズに適用する。
U-G. 暫定措置として、1999年中に、NTTドコモとNTTコミュニケーションズに対して以下のことを義務づける。
U-G-1. 料金、条件を含めて、接続約款を公表する。
U-G-2. 接続料金の計算方法を公開する。
U-G-3. 申し込みから6カ月以内に接続を完了する。
U-G-4. 競争事業者がドコモのネットワークに着信する通話料金を設定できるようにする。
U-H. 1999年中に、NTTの地域会社が接続約款で基本機能と見なしている機能のリストを拡大し、NTTのユーザーが現在利用できるすべてのサービスをリストに含むことを義務づける規則を制定する。「付加価値」料金が正当であるとNTTが証明できるサービスに関しては、NTTはこれらのサービスを卸売り料金で競争事業者に提供する義務を負うべきである。
V. 線路敷設権と既存事業者設備へのアクセス
V-A. 1999年中に、日本は、NTT、電力会社、鉄道会社が、所有または支配するすべての電柱、とう道、管路、および線路敷設権へのアクセスを、透明、非差別的、迅速、かつコストベースで提供することを義務づける規則を策定し、これを2000年度に実施すべきである。この規則で以下のことを定めるべきである。
V-A-1. アクセスの料金および条件が公正、妥当、かつ非差別的であることを確保する。
V-A-2. 設備の改造にかかる費用と責任の分担についての明確なルールを定める。
V-A-3. 標準的な回答期間を定める。
V-A-4. 迅速な苦情処理手続きを確立する。
V-B. 暫定措置として、1999年末までに日本政府は以下の措置を取るべきである。
V-B-1. 郵政省はNTT網の一部(例:交換機に最も近いマンホールまで)に課した接続義務を拡大し、光ファイバー網とユーザーの建物をつなぐ管路ととう道を含む他のボトルネック設備にまで広げる。
V-B-2. NTT、電力会社、および鉄道会社が、以下のように自主的措置を改善することを奨励する。
NTTについては:
V-B-2-a. NTT承継会社それぞれの方針、料金、条件を公表する。
V-B-2-b. NTTが管路およびとう道の調査とそこへの設備の敷設について、すべての局面を調整する窓口を1カ所設置する。
V-B-2-c. NTT施設内に他の事業者が自社ケーブルを設置したり、そこで保守したりすることを、NTTが明確に許可する。
V-B-2-d. NTTは施設調査期間を30日に短縮し、調査料金を公表し、NTTがケーブルを敷設する場合の標準敷設期間として3カ月を設定する。
電力会社については:
V-B-2-e. 電力会社のとう道および管路を利用する時の料金と条件を公表する。
V-B-2-f. 電柱改造費および保守費の計算に使った料金と数式を、電柱の占有者間で公正に責任を分担する方法を含めて公表する。
鉄道会社については:
V-B-2-g. 電柱、とう道、管路、および土地を含む鉄道会社の設備を利用する時の料金および条件を提示した自主的措置を提出する。
V-C. 公共の線路敷設権へのアクセスに関して、日本は以下の措置を取ることによって、公共の道路、高速道路、橋梁を使用した電気通信およびケーブルテレビのインフラの建設を促進する。
V-C-1. 都市部における(建設省の電線共同溝のような)公共のとう道および管路の建設を促進する。
V-C-2. 建設省の冬から春にかけての道路掘削の禁止を解く。
V-C-3. 特定の道路の掘削に関して、5〜7年の間隔をおかなければならないという義務をなくす。
V-C-4. 管路やトンネルを設置しなければならないという義務に対して、ケーブルも埋められるようにする。
V-C-5. 電気通信設備を敷設する機会を提供する高速道路、橋梁、トンネル、その他の公共事業の建設または修理計画をすべて1カ所で公表する。
W. 再販・アンバンドリング
第2回共同現状報告の中で、日本は、事業者自らが行う実利的・経済的要件の評価に基づいて、事業者がネットワークの構成を柔軟に選ぶ必要性があること、そしてこのような措置が技術的に可能であることを認識した。この認識に従い、2000年度中に、郵政省は、事業者がネットワークを構築する際に自社設備と賃貸設備を組み合わせることに対する制限をすべてなくし、すべての事業者が事業を容易に進めるために必要であれば、設備を構築しようが、購入しようが、賃貸しようが、どんな組み合わせでも選択できるようにすべきである。具体的には、郵政省は以下の措置を取るべきである。
W-A. 第1種・第2種通信事業者の区別をなくし、事業者が、別の事業体を設立することなく、最も効率的な方法で、ネットワークを構成したり建設したりできるようにする。
W-B. 2000年4月1日までに、指定電気通信事業者がアンバンドルしなければならない要素のミニマム・リストを拡大し、新しいアンバンドル要素および既存要素が迅速、妥当、そして非差別的な料金と条件で提供されるように確保する。具体的には、指定電気通信事業者は、次のことを義務づけられるべきである。
W-B-1. すべてのアンバンドルされた要素について、LRICベースで、全国的に統一されていない料金を提供し、これを経常費用と臨時費用の両方に適用する。
W-B-2. トラヒック・センシティブでないアンバンドル要素を定額(例:月額)料金で提供する。
W-B-3. 指定電気通信事業者が自らもしくはその関連企業に提供するのと少なくとも同じ品質と所要時間で、アンバンドル要素を提供し、これへのアクセスを認めること。
W-C. さらに、郵政省は以下のものをアンバンドルするよう義務づけるべきである。
W-C-1. 指定通電気信事業者が所有する、高容量回線、加入者回線の構成要素(sub-loops)、
x-DSLの使用が可能な回線、ダークファイバー、屋内配線を含む加入者回線。
W-C-2. ダークファイバーおよび共有伝送路を含む中継伝送設備。
W-C-3. アンバンドルされた回線、多重化装置/集線装置、専用伝送路を組み合わせることを含むエンハンスト・エクステンデッド・リンク(EEL:Enhanced extended link)。
X. コロケーション
競争事業者が競争サービスを提供する能力を高めるために、郵政省は指定電気通信事業者のコロケーション義務を強化し、(競争事業者から意見を求めることを要する)約款に基づいて、競争事業者が妥当で非差別的な扱いを受けられるような、NTT施設でのコロケーションについての規則を作るべきである。このルールには以下の項目が含まれているべきである。
X-1. コロケーション料金を決める公正な方法が定められていること。
X-2. 基準に基づいて、妥当な料金と時機を得たコロケーション実施までの時間が設定されていること。
X-3. 真正な競争事業者もしくは適格な請負業者が施設に24時間アクセスできること。
X-4. スペースがあるかどうか施設を検分して決める権利が競争事業者に与えられていること。
X-5. 申し込んだ場所でのコロケーションが技術的に不可能であることを指定電気通信事業者が証明する義務を負うこと。
Y. 屋内配線
日本には、建物の中の配線へのアクセスを妨げる障害がいたるところに見られ、これによって新規通信事業者がエンドユーザーにサービスを提供できなくなっている。この障害をなくすために、郵政省は、民間所有の建物へのサービス提供で最も競争が発展するような屋内配線政策を1999年中に作成し、2000年度に実施すべきである。郵政省は以下のような政策を採用すべきである。
W-1. 指定電気通信事業者が建物へのアクセスを妨げることを禁じ、指定電気通信事業者が公正、妥当、非差別的な料金および条件で設備(例:配線、屋内ダクトなど)を使えるように義務づける。
W-2. どのような場合に設備の所有もしくは支配が既存事業者もしくは競争事業者にあり、どのような場合に所有権がユーザーもしくはビジネスの所有者にあり、どのような状況で所有権もしくは支配が変わり、もしくは支配する能力が制限されるのかを決める原則を策定する。
医療機器・医薬品
日本政府は、新たな革新的医薬品・医療機器の導入に対する規制上の障害を削減するための諸々の重要な措置の着手に同意している。これらの措置の多くは、「規制緩和および競争政策に関する強化されたイニシアティブ」についての第1回および第2回共同現状報告に含まれている。そして、これらの措置が、同意された予定に従って完全に実行されることが肝要である。今後、米国政府はこれらの課題およびこれらに関連する課題に、日本政府と共に引き続き取り組むことを約束する。そのために、米国は、総合的な医療費の抑制を目指しながら医療の質を確保するという日本の目標を達成する最良の方法は規制撤廃と構造改革を通じた市場主導の革新であるとの信念に基づき、以下の提案をする。日本におけるこの議論の展開に伴い、米国は、以下の提案に加えて、特に医療サービスの提供に関する法的ならびに規制上の課題に関する提案をすることもあり得る。
T. 革新の認識
強化されたイニシアティブに基づき、厚生省は、医薬品・医療機器の革新の価値を認識した上で、患者治療における効果と費用効果の向上をもたらす革新的製品の導入を妨げないことに同意した。この政策の実行に際して、米国は、厚生省が以下のことを採用することを求める。
T-A. 革新的な医薬品の導入促進 厚生省は、革新的な医薬品の入手をより容易にするために、市場の役割を認識した諸措置を導入するべきである。
T-B. 革新的な医療機器の導入促進 医療機器の機能別制度の改革に当たり、厚生省は、製品の予想耐用年数上の性能と能力の向上をもたらす医療機器開発における増分的な機能の差異を考慮するべきである。
U. 承認プロセス
医療機器と医薬品の承認プロセスを迅速化すれば、日本の患者が革新的医薬品をより容易に入手できるようになる。共同現状報告の中で厚生省が同意した措置に沿って、厚生省は、以下のことを採用するべきである。
U-A. 革新的な医療機器の承認の迅速化 医療機器の承認プロセスの一貫性と迅速性を改善するために以下の措置を取る。
U-A-1. 医療機器センター(JAAME)による同一性調査を完了させるために「4週間審査」を設ける。
U-A-2. 要請された情報とデータの両方またはいずれか一方の受領後2週間以内に、審査員の質問に対して完全な回答が行われたかどうかを知らせる。
U-A-3. 国際標準化機構に従って行われた生体適合性試験を、さらなる試験施行を義務づけることなく、受け入れる。
U-A-4. 医療法および放射線防止法を緩和し、再狭窄の血管内放射線療法、前立腺癌の放射線同位元素治療などの、特定の放射線療法に関して、2000年1月から臨床試験の開始を認める。
U-A-5. 医療機器(体温計、血圧計)を計量法の適用対象外とする。
U-A-6. 臨床試験の対象にならない医療機器の範囲を拡大する。
U-B. 革新的な医薬品の承認の迅速化 2000年4月までに新薬申請(NDA)の承認処理期間を12カ月に短縮し、その間に着実かつ継続的な改善を行う。承認プロセスの迅速化のために以下の措置を取る。
U-B-1. 12カ月間のNDA処理期間を、タイムアウト期間の明確化も含め、略述する。
U-B-2. 分子の当初の効能に関するNDAが未決の間に、追加の効能に関するNDAの提出と審査を認める。
U-B-3. 分子の当初の効能に関するNDAの審査が行われている間に、特別(恩情的)な使用や追加の効能に関する作業を含む、分子の治験を申請者が継続することを認める。
U-B-4. NDAの化学、薬学、毒物学に関する項の事前申請と審査に関する規定を追加する。
V. 外国の臨床試験データの受け入れ
医薬品承認プロセスにおける外国の臨床データの広範な利用により、日本の患者が革新的医薬品を迅速に入手できるようになる。米国は、日本がこのような外国のデータの利用を共同現状報告の中で認めたことを歓迎する。この同意に沿って、厚生省は以下の事項を採用するべきである。
V-A. ブリッジング・パッケージの許可 厚生省は、国際的に多大な実績と、市販後のデータも含め対応するデータを有する医薬品については、あらかじめ設定されたブリッジング・スタディの代わりにブリッジング・パッケージの提出を認め、推論のための共通性を確認するデータがすでに入手可能な場合は同医薬品を承認できるようにするべきである。
W. 償還プロセス
W-A. 医療機器の償還プロセスの迅速化 医療機器の償還プロセスの一貫性と迅速性を改善するために以下の措置を取る。
W-A-1. 償還認可の期限として、増分的に改善された新製品の場合は償還申請当日から3カ月間、全く新しい技術の場合は6カ月間を上限とする。
W-A-2. 日本ではもはや新しくない製品(例えば、ステント、特殊創傷皮膜材、下大静脈フィルターなど)をカテゴリーCからカテゴリーBに移行するメカニズムを作る。
W-B. 上訴メカニズム 医療機器または医薬品の償還申請者が、償還に関する決定に抗議できるプロセスを設立し、公表する。
X. 透明性
X-A. 中医協へのアクセス 医療機器・医薬品価格設定ルール調査のために1999年9月1日に設立された専門部会が行っているような事項も含む、中医協の医療改革協議や政策提言等の件に関し、米国の医療機器・医薬品産業の代表者に意味のある参加の機会を与えることによって中医協へのアクセスを改善する。また、これらの専門部会の提言草案が完成する前に、パブリック・コメントを求めて、提言草案を一般に入手可能にする。
Y. 栄養補助食品
Y-A. 市場の自由化 厚生省は、日本の栄養補助食品市場(ビタミン、ハーブ、ミネラル等)の自由化を促進するために、市場開放問題苦情処理推進本部が1996年3月18日に行った勧告を含む諸措置の制度化と実施を迅速に行うべきである。
Z. 医療サービス
Z-A. 医療サービスの規制撤廃 日本政府は、日本の医療システムの効率向上を目指し、病院経営や提供可能な医療サービスの範囲などを含む、医療サービス分野の規制を撤廃するための政策を採用するべきである。
金融サービス
T. 金融サービス
米国政府は、日本政府が日本版ビッグバン(金融システム改革)の一環として今日まで講じてきた措置、および両国政府の「枠組み合意」の下でまとめられた「1995年の金融サービスに関する日米両国政府による諸措置」に謳われている措置の着実な実施を歓迎する。米国政府は、今後も引き続きこうした措置の実施を厳密に監視するとともに、日本の金融市場のさらなる開放と発展に向けたビッグバン計画下での追加策に関心を持っている。
T-A. 個別措置 こうした観点から、米国政府は、以下の分野における規制撤廃が可能な限り早期に実施されることを歓迎する。
T-A-1. 運用商品と運用管理についてオープンかつ競争的環境下での、税制上優遇措置のある確定拠出型年金プランを導入すること。
T-A-2. 投資顧問会社による年金福祉事業団資金の直接運用を提案中の国内信託の枠組みの中で早急に実施し、ファンドマネージャーの交代時に運用資金の全額現金化を義務づけている現行規定を廃止すること。
T-A-3. グローバル・カストディアンの利用を認め、海外投資家の日本国債保有に対する源泉徴収課税免除規制を変更すること。
T-A-4. 年金業務等を行うものが日本法人、外国企業の支店、あるいは、子会社にかかわりなく、所得税の繰り延べ権利が与えられ、雇用主と従業員による年金拠出金が事業支出と認められるよう法人税法を改正すること。
T-A-5. 信託銀行や生命保険会社と同様に、投資顧問会社による年金基金資産の合同運用を許可すること。
T-A-6. アセット・バック証券(ABS)の活用を促すため、サービサー会社や特定目的会社に関する法律および規制を改正すること。
T-A-7. 預金者・利用者保護が適切に図られることを条件に、インターネットを使った無店舗銀行業務を許可すること。
T-B. 透明性 米国政府は、透明性および政府慣行を改善する以下の規制撤廃措置を歓迎する。
T-B-1. 新商品および新規サービスに対する開放的で透明性の高い許認可プロセスを確立すること。
T-B-2. 金融サービスについて政府のパブリック・コメント手続を十分に活用し、業界のコメントを取り入れるために十分な時間を確保し、また、規制変更の最終決定からその実施まで十分な時間的猶予を確保し、業界が組織・業務・システム上の必要な変更を行うことができるようにすること。
T-B-3. 新たに施行された金融サービス規制の経験を評価し新規制の変更を考慮するための規制レビュープロセスを導入すること。
T-B-4. 「判定報告」や「ノー・アクション・レター」等を通じた規制および監督の透明性を改善する措置を導入すること。
T-B-5. 業界利益代表と、業界自主規制機能の2つの役割を明確に分離すること。事業者団体は、会員の利益を代表し、その拡大に努めるべきである。団体の政策や手続きが十分に透明で、すべての会員に団体運営に関する実質的な役割が与えられるべきである。
T-B-6. 投資運用実績を標準化された形での正確な比較を可能にするため、年金基金および投資信託に関する情報公開を改善すること。
U. 保険
米国は、米国および他の外資系保険会社に対して日本の保険分野の規制を撤廃し、市場を開放するという日本の金融監督庁とその他の関係機関の努力を歓迎する。日本の保険分野の規制を撤廃することは、他の先進国市場で広く流通している革新的で、安い商品やサービスを日本の消費者が利用することを可能にする。保険提供における民間部門の役割を最大限にする一方、政府の役割は最小限にしつつ、日本は、この業界の財務的健全性を確保するための規制撤廃措置をさらに講じ、消費者の信頼を高めるべきである。
U-A. 行政手続きおよび慣行の改善 米国は、日本政府が保険分野における免許、許可および承認に関する行政手続きおよび慣行に関して以下の改善を行うことを強く求める。
U-A-1. 米国は、日本に対し広範にわたる保険料率及び約款を統制するため、届出と同時にその商品を扱える「サイマルテニアス・ファイル・アンド・ユース」制度を2000年度当初より導入することを強く要請する。ファイル・アンド・ユース制度が十分な透明性をもって運用されることを確保するため、金融監督庁は、1998年3月31日の規制緩和3カ年計画にしたがって、自由裁量の余地を最小限にする一方で、商品の審査基準を明確化し、特定し、定量化するために基準の見直しを行うべきである。
U-A-2. 金融監督庁は、行政手続き法と整合する形で保険会社とあらゆる意思疎通を図るべきである。
U-A-3. 商品審査を行う上で、公平さや透明性を確保する更なる措置として、金融監督庁は「ファースト・イン・ファースト・アウト(先着順処理)」制度を採用すべきである。この制度の採用により、商品が複雑すぎたり革新的すぎるという理由による審査の遅れは解消される。
U-A-4. 米国は、金融監督庁が大量に増加しつつある保険商品の申請に適切に対応できるよう、1999年度に同庁商品認可担当課の職員が増員されたことを歓迎するとともに、2000年度にはさらに大幅な増員が行われるよう提案する。金融監督庁による手続きは、コンピューター化やインターネットなどの関連技術資源の利用を通じて近代化、合理化されるべきである。
U-B. アクチュアリー・サービス 米国政府は、サービス貿易に関するWTO合意の条項と整合するよう、米国と日本のアクチュアリー関係者が相互承認に関して合意を結ぶ努力をするよう求める。
U-C. 簡易保険(簡保) 民間の保険会社が現在提供している商品分野において政府の簡易保険が役割を拡大していることは、日本が目標とする自由(フリー)で、公平(フェアー)な世界規模(グローバル)の金融市場をめざす規制撤廃という目的にはそぐわないものである。こうした保険制度は、保険業法の領域から外れるものであり、金融監督庁や公正取引委員会の監督下にないものである。そのため、米国は日本に対し、民間保険会社が提供している商品と競合する簡易保険(簡保)を含む政府および準公共保険制度を拡大する考えをすべて中止し、現存の制度を削減または廃止すべきかどうか検討することを強く求める。
住宅
米国は、日本が過去2年間に、住宅政策における規制撤廃や性能に基づく住宅建築基準への移行に向けて行ってきた努力を歓迎する。これらの措置は、日本における住宅建設市場の回復を促し、さらには日本経済の成長を促進した。
しかしながら、多くの問題が依然として未解決のままである。日本の住宅のコストは、引き続き他の国と比較してはるかに高く、日本以外で一般的にみられる機能的特性が日本の住宅には欠けている。日本における住宅分野の長期的成長は、中古住宅や改築市場が不活発で、質の高い賃貸住宅が不足していることにより阻害されている。
多くの分野が過剰な規制と指導的規制に依存し続けていることが、これらの問題の根底にある。米国は、日米両国が、安全性を犠牲にすることなく、日本の住宅の質、価格、多様性を向上させるという共通の目標を実現させることができると信じる。
T. 土地利用政策
T-A. 日本は、2000年12月31日までに、定期借家制度を導入するために、借地借家法を改正するべきである。改正の内容には、自動的建物賃貸借契約の更新の廃止(第26条)、建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件における「正当の事由」の廃止(第28条)、借賃増減請求権の廃止(第32条)が含まれる。
T-B. 日本は、2000年7月までに、建築基準法の第1種および第2種住居地域における容積率に対し、合理的な説明を提示すべきである。それには、住宅の居室の日照(第29条)、延べ面積の敷地面積に対する割合(第52条)、建築面積の敷地面積に対する割合(第53条)、建築物の敷地面積の最低限度(第54条)が含まれる。
U. 木材製品
U-A. 日本は、2000年12月31日までに、性能に基づく建築基準を施行し、防火地域および準防火地域外において、改善された防火材による4階建て、多世帯・多目的木造建築物の建築を可能にすべきである。
U-B. 日本は、2000年4月1日までに、特別使用建築物の建設に関する規制が、2000年6月に施行予定の性能に基づいた建築基準と整合するように、当該関連規定の見直しを行うべきである。検討結果は2000年12月31日までに一般に入手できるようにすべきである。
U-C. 日本は、2000年3月31日までに、国際慣行に従い、また、現行の延焼遮断要件の規模の縮小と防火壁の承認というすでに発表された政策に沿い、建築物区間における延焼遮断に関する代替規則を発表すべきである。防火壁によって分離された建築物区間は、建築可能面積の算出の際には、独立した建築物として取り扱われるべきである。
V. 住宅資材
V-A. 日本は、2000年末までに、必要な法的措置を講じ、フード・ディスポーザーの下水本管への直結の諌止または禁止を地方条例によって差し止めるべきである。
V-B. 日本は、2000年7月までに、防音天井タイル等の内装仕上材に関する合理的かつ安全な防火試験の要件として、国際基準を採用し、それらを非差別的で透明な方法で実施すべきである。
V-C. 日本は、2000年末までに、配管工事基準の整合化を促進するために、NSF61基準を水道法の水道構成部品基準と同等のものと見なすか、あるいは、日米両国に適用される共同認証制度を構築すべきである
W. 中古住宅・改築市場
W-A. 日本政府は、2000年7月までに、中古住宅市場を活性化するために、不動産業界や公的および民間の貸付機関と協力し、資産鑑定評価制度を確立すべきである。
X. 住宅金融公庫の融資プログラム
X-A. 日本政府は、2000年3月31日までに、住宅金融公庫が輸入製品を差別的に取り扱わないことを保証するために、住宅金融公庫の融資プログラムを修正するために必要なすべての措置を講じるべきである。
X-B. 住宅金融公庫は、2000年3月31日までに、中古住宅取得の融資に適用される最長返済期間を、新築住宅取得の融資に適用されるのと同じ35年に延長すべきである。
エネルギー
日本は、2001年までに、電気料金を国際的に遜色(そんしょく)のない水準まで引き下げ、日本の主要エネルギー供給における天然ガスの割合を上昇させるとの目標を設定した。米国政府は、日本政府がこうした目標達成を可能にする規制環境・競争環境を促進することを支持する。世界的な経験に照らし合わせれば、エネルギーコストを引き下げ、経済成長を刺激するには、開かれた競争的なエネルギー市場を確立することが最も効率的な方法であることが明らかとなっている。独占状態から競争的構造への移行により、日本は、エネルギーの効率化とエネルギーコスト削減に必要な革新的なエネルギー機器・サービス、そして最先端技術への投資を呼び込むことが可能となる。米国は、日本の規制撤廃・緩和イニシアティブの動向を注意深く見守り、このイニシアティブによって創出されうる新たな貿易と投資の機会を評価している。
米国および他国の経験から、米国政府は、エネルギー分野の独占状態を競争的状態に移行させるには、次の3つのステップが重要であると考える。(1)投資と市場参入を妨げるような規制やその他の障壁を削減すること。(2)競争促進的な行動を促すための適切なインセンティブと統制を実行すること。(3)規則と手続きの決定において完全な透明性を確保し、適切かつ公正な規則が設定され、合理的な経営判断が出来るようにすること。以下に述べる提案は、こうした3つのステップに注目したものである。
T. 電力分野
T-A. 独立した規制機関の設置 日本政府は、いかなる電力サービス提供事業者からも分離され、かつそうした事業者とは責任関係を持たない、独立した規制機関を設置すべきである。この独立した規制機関の責任は、電力分野における参加者の活動を監視し、この分野における発電および託送業務への公正、透明、かつ非差別的なアクセスを確保するものとなる。この規制機関による決定および手続きは、全ての市場参入者に対して公平であるべきである。この独立した規制機関が意思決定を行う過程は、全ての利害関係者に対して開かれ、公的に閲覧できる書類を通じて公表されるべきである。独立した規制機関の責務には、次のものを含む。
T-A-1. 全ての市場参入者が、発電、託送、配電機能を有効に分離することを確保すること。
T-A-2. 電力事業者内部において発電、託送、および配電部門を独立して運営・管理する体制の確立を点検し、監視すること。
T-A-3. 発電または託送施設を保有し、稼動させている市場参入者のための競争基準および手続きを確立すること。これには、以下の項目についての規則と実施手続が含まれる。
T-A-3-a. 反競争的内部相互補助、もしくはその他の反競争的価格慣行。
T-A-3-b. 競合者から得た情報の不適切な使用。
T-A-3-c. 規制された商品やサービスを利用する業者が、自らの商品やサービスを提供するために必要な技術情報やその他の商業上必要と思われる情報を適切なタイミングで開示しないこと。
T-A-3-d. 有効な紛争解決および不服申し立てメカニズムの設置と実施。
T-A-4. パブリック・コメント手続の使用を含めて、すべての業界参加者と、その他の利害関係者の見解を考慮した上で、託送施設へのアクセスに関する約款、コストに基づいた託送料金の決定・実施手続、託送容量の割り当ておよび使用、託送(設備)へのアクセスに関する要件および基準、そして紛争解決メカニズムを確立する。
T-A-5. その他の市場参入者から独立した託送業者の使用を奨励する。
T-A-6. 電力におけるスポット市場確立に取り組む。
T-B. 託送サービス 日本の電力分野への新規参入を促進するため、日本政府は、2000年の3月21日までに、託送施設へのアクセスに関する非差別的な料金と約款を導入し、託送ネットワークへのアクセスを公正で、透明、かつ非差別的な形で提供することを求めるべきである。
T-B-1. 託送システムへのアクセスと接続については、日本政府、もしくは独立した規制機関は、規制された法人が、必要な託送容量を提供するのが不可能であり、必要な付随するサービスを含め、第3者の託送利用者に対し、公正で非差別的な形での開かれたアクセスを提供する能力に欠けていることを証明しない限り、託送業務を行うことを要求するべきである。
T-B-2. 託送ネットワークへのアクセスは、以下のように提供されるべきである。
T-B-2-a. 非差別的な約款(技術的基準および仕様を含む)の下で、また、託送ネットワーク保持者自身、その子会社、関連会社に対して提供されるのと同等の品質で提供されること。
T-B-2-b. すべて同じ約款に基づいて、発電施設の保有の有無に関わらず、同等の立場にある業者すべてに提供されること。
T-B-2-c. 販売可能な託送容量、そして全ての託送サービスの要求、ならびに電子掲示板もしくはインターネットを通じて全ての市場参入者に対して用意された要求への回答を考慮して、タイムリーに提供されること。
T-B-2-d. 託送サービス供給者が、自らが提供するサービスに不必要なネットワーク機器や施設にまで料金を払う必要がないよう、透明性が高く十分に分離された約款(技術的基準と仕様を含む)およびコストに基づいた費用により、提供されること。
T-B-2-e. 電力業者が依頼されたサービスの供給を可能にするために必要で、かつ日本政府、もしくは独立した規制機関によって認可・検証の対象となる追加の情報やその他の取り決めを含む、電力業者が書面で明確に定義した例外的な理由(混雑やその他の技術的な問題など)による場合を除き、提供が保証されていること。
T-B-2-f. 要求に応じて、大多数の利用者に提供されている託送ネットワークの終了地点に追加された地点で、必要な追加施設の建設に要したコストを反映した料金で提供されること。
T-B-2-g. 顧客の再設定により変更の対象となる託送へのアクセス権限をもって提供されること。
T-B-3. 託送システムへのアクセスの確保・使用に適用される手続きと託送ネットワーク使用のために設定された料金、または標準化された約款が、明確に規定、公開され、かつ簡単に閲覧できることを確保する。
T-B-4. 電力事業者に対し、標準化された託送約款、もしくは参考託送提供のどちらかの公開を義務付けるが、それ以前に、そのような約款または提供を日本政府、もしくは独立した規制機関が検討する。
T-B-5. 託送ネットワークへのアクセスを希望するすべての電力供給者が、日本政府、もしくは独立した規制機関に対し、託送の約款と料金の妥当性をめぐる紛争を迅速に解決するため、いかなる時点においても救済手段を持つことを確保する。
T-B-6. 託送容量の割り当ておよび使用に関する手続きが客観的に、迅速で、透明性が高く、かつ非差別的な形で行われ、上記(5)のとおり申し立ての対象になることを確保する。
T-B-7. 混雑を緩和するための料金も含みうる混雑時の料金体系確立を考慮する。
T-C. 公正な託送料金の設定 日本政府もしくは独立した規制機関は、どのように託送料金が算出されたかを明確にし、全ての託送利用者に公正に適用される競争促進的かつ透明な料金体系を確保する方策を講じるべきである。
T-C-1. 以下のような託送料金およびそれに付随するサービス料金を設定する。
T-C-1-a. 国際的に認知されているコスト会計法を使うこと。
T-C-1-b. 投資に対して正当な利益が得られる機会は認められても、その利益は保証されたものではないこと。
T-C-2. 収益も含め、電力事業者のコスト配分計画を点検するための透明な手続きを確立し、日本政府もしくは独立した規制機関による(電力事業者の)諸業務間および各業務内部におけるコスト配分の点検が可能となるような形で会計を記録することを義務づける。
T-C-3. 日本政府もしくは独立した規制機関が、電力事業者による託送料金に関わる投資の決定を点検するための透明性の高い手続きを確立する。
T-D. 競争的な自衛手段 必要不可欠な施設を管理していることにより、または市場における自らの地位を利用することにより、電力機器またはサービスに関連する市場への参入(価格または供給に関して)条件設定に実質的な影響力を持つ電力事業者もしくは、その他の有力な供給者が非競争的な慣行に従事することを防ぐための施策を立案し、実施すること。
T-D-1. 2000年4月1日までに、電力およびガス分野を含めた自然独占としての適用除外規定である独占禁止法第21条を廃止する。
T-D-2. 電力およびガス分野に対する独占禁止法を適用することに関する指針を作成し、指針案をパブリック・コメント手続の対象にする。
T-D-3. こうした分野の集中的な市場の規制撤廃の後、独占禁止法を厳格に適用し、
T-D-3-a. 有力な企業が、排他的な相互取引取り決め、集団ボイコット、排他的で透明性を欠き、または差別的な基準もしくは技術的要件などの競争制限的な使用を含め、競争を妨げる商慣行に関わることを防ぎ、
T-D-3-b. 市場における支配的な地位維持、もしくは強化することを目的とした行為を防ぐ(競争政策、独占禁止法、公正取引委員会ガイドライン、および独占禁止法における適用除外に関する項を参照のこと)。
T-E. 将来の自由化に向けた点検に関するスケジュール 日本政府は、遅くとも2001年3月20日までに、この分野における自由化の進展状況を点検し、その結果を公表すべきである。この点検プロセスは、2003年4月1日までに高圧線を通じて電力供給を受ける資格のある顧客に小売り利用者を含め、最終的には小売り部門での完全競争を目指すことを視野に入れて、電力部門における自由化の範囲を評価すべきである。
U. 天然ガス分野
日本における燃料としての天然ガスの利用増加は、クリーンエネルギーのコストを引き下げるために重要な役割を果たすことになる。そのためには、日本政府は、競争を促進し、天然ガス供給網の確立を整備するための法的・規制枠組みを創設すべきである。そのような枠組みは、活力のある天然ガス市場の構築を促進し、アジアの天然ガス産出地と日本をつなぐパイプラインの建設に資することになる。1998年にAPEC加盟国により承認されたAPECの天然ガス・イニシアティブでも、この分野における有益な政策提言がなされている。
U-A. 競争的な市場の構築 日本は、既存のガス事業者に所有されている天然ガスに関するインフラに対し新規参入者による非差別的なアクセスを可能にする規制制度を確立すべきである。たとえば、そのような制度は、新規参入者による天然ガスの輸入を許可し、ガス事業者に所有されているLNG受け入れターミナルと輸送ネットワークへ、合理的な料金でアクセスできるようにすべきものである。
U-B. 長距離パイプライン 日本は、新たな長距離パイプラインの建設を促進し、新規参入者によるアクセスを整備することで競争を促進するような規制制度を確保すべきである。たとえば、日本は、敷設権、収用権および透明性のある非差別的なプロジェクト認可手続などを含め、長距離パイプラインの建設と運営を規定する競争促進的な枠組みを構築すべきである。また、日本は、料金の明確な公表、公正かつ迅速なアクセス供与のための手続き、および紛争解決メカニズムを含め、パイプラインシステムのための非差別的なアクセス料金に関する制度を確立すべきである。
流通
流通システムは、近代市場経済において生産者と消費者を結びつける極めて重要な役割を果たしている。過度に煩雑な規制やその他の流通に関わる非効率性が、資源配分の大きな歪みを生み、経済コストを上昇させる。流通分野における効率性向上と競争拡大は、価格を引き下げ、消費者の選択の幅を広げ、全体として消費者の暮らし向きを向上させる。
外国製品が到着してからエンドユーザーの手に届くまでの日本における流通過程は、他の主要国と比較して割高であり、より多くの時間がかかる。割高な流通コストは、日本の物価が他国に比べはるかに高いことの主因となっている。さらに、輸入製品が港に到着してから実際に配送が開始されるまでに長い時間を要することは、発注時に国産品にするか外国品にするかを企業が判断する際に極めて重要な要素となりうる。これは、「ジャスト・イン・タイム」在庫方式を採用する企業にとって特にそうである。
T. 通関・輸入手続
日本貿易振興会(JETRO)が最近発表した報告書によれば、輸入製品が日本に到着してから税関より引き渡しを受けるのに要する時間は、海上輸送の場合、他のすべての調査対象国(米国、英国、ドイツ、フランス、オランダ)より3倍長く、航空輸送の場合は、1国を除く他の4カ国よりも長いことが指摘されている。通関手続きを近代化し迅速化しようとする近年の日本の努力にもかかわらず、この報告書には、日本政府の手続きが他の主要国に比べ、依然として見劣りする多数の具体的分野が列挙されている。さらなる努力が、特に以下の点において必要である。事前承認手続きの実質的な有用性を改善すること。保税地域原則に密接に関連する非効率な貨物取扱いをなくすこと。情報技術の導入を迅速化すること。省庁間の調整を改善すること。終日配送の時代に対応するよう、通常の通関取扱時間帯を延長すること。
米国政府は、日本政府が通関に要する時間を他の主要国並みにすることを目標とし、通関手続きの近代化と迅速化を引き続き進めるべきであると考える。そのために日本政府は以下の措置を講じるべきである。
T-A. 特定された多くの問題は、税関当局だけの管轄下にあるのではなく、日本政府による調整された対応が必要であるということを認識する。
T-B. 危険度の低い(実地検査を必要としない)貨物は、保税地域に移送することなく到着場所で引き渡しを行うことを許可する。
T-C. 事前承認手続きを改善し、税関当局とその他すべての関係省庁が、貨物到着前に輸入申告を受理・処理し、実地検査が必要か否かを判断し、輸入業者、ブローカー、運送業者に対し、「貨物通関情報処理システム」(NACCS)を通じて貨物が引き渡しできるか、それとも実地検査が必要となるのかを通知する。
T-D. 輸入に際し求められる、食品・植物検疫手続きなどの法的許認可や高圧ガス取締法、毒物取締法、薬事法により求められる申請などのすべてを同時に処理することを調整するため「ワン・ストップ・オフィス」を設置する。
T-E. NACCSを改善し、通関手続きに関わるすべての政府省庁、民間機関がアクセスし、使用できるようにする。
T-F. 輸入関税支払いのため、NACCSに対する銀行振込を終日可能にする。
T-G. NACCSが終日使用可能になるまで、輸入業者がシステムを最大限利用する際の休止時間を回避するため、一日の保守・整備時間帯である現行の午前4時30分から午前6時までを、午前2時から午前3時30分までに変更する。
T-H. 貨物に対する税関当局の通常通関取扱時間を旅客に対するものと同様にする(現行の月曜日から金曜日午前8時30分から午後5時までを、通年無休の午前6時から午後10時までとする)。
T-I. 効率性を向上させ、人的作業を減らすため、関税定率法第14条第18項が定める課税価格の最低額を現行の1万円から3万円に引き上げる。
T-J. 公平性の観点から、関税評価額はCIF(運賃保険料込条件)ベースではなくFOB(本船渡し)ベースで計算する(CIFでは輸送コストも含まれるため、遠くからの輸入貨物にはより高い関税が課せられることになる)。
T-K. 免税の書類の輸送に関して、運送業者が複数の別々の貨物を1つのマスター航空運送状にまとめた際には、個々の貨物それぞれに対して積荷目録の提出を求めるという要件を廃止する。
T-L. 情報がNACCSにすでに提供されている場合は、アジアから輸送される貨物審査のための書類提出を求める要件の数を大幅に削減する。
U. 小売・サービス
大型小売店舗は規模の経済を利用し、消費者に対してより多くの種類の商品をより安い価格で提供する。(流通の)効率性は店舗の平均規模に密接に関係しており、大型店に対する規制は流通分野における生産性の低下につながることが明らかになってきた。さらに、店舗設置に関する複雑な手続きは、立地や広さなどの比較的希少な利点を支配する既存の小売店に対しより大きな市場力を与え、結果的に割高な価格や限られた商品選択に結びつく。
大規模小売店舗立地法(大店立地法)が2000年6月1日より施行されるにあたり、日本政府は大規模小売店舗に係る規制の新しい時代を開始する。この新法が大規模小売店舗設置者に課せられる規制の負担を軽減するという望ましい効果を発揮するのか、あるいは、その適用が大規模小売店舗の設置について、以前の規制制度下よりさらに大きな障害をもたらすのかは、現時点で判断することは不可能である。米国は、大店立地法の指針や省令が過度で煩雑な要件を課し、事後承認制度ではなく事実上の事前評価制度の設定につながる可能性があることを懸念している。大店立地法に整合した形で、地方自治体が公平で合理的かつ一律に大店立地法を適用するのを確保するため、米国は日本政府が以下の措置を講じるべきであると考える。
U-A. 指針、省令あるいは大店立地法に関して、これらを拡大、説明、解釈あるいは詳述するためにコメンタールや措置を採用、または公表する際は、それ以前に、1999年3月23日に導入されたパブリック・コメント手続を使用し、また、そのようなすべての措置を公表することを確保する。
U-B. 第2回共同現状報告に従い、大店立地法の適用についてすべての利害関係者からの苦情を受理し、その解決を促進するために通産省内に設置される窓口の名称、所在場所を公表し、この窓口がそうした機能を遂行するために、2000年6月1日には、充分な人員が配置されることを確保するのに必要なあらゆる措置を講じる。
U-C. 2000年6月1日以前に、地方自治体職員に対し、指針、「(指針)策定に当たって」、省令のそれぞれの内容、大店立地法下における地方自治体職員の法的責任と権限に対する制限、および前項で述べた窓口の役割について周知させるために広範な啓もう活動を実施する。
U-D. 大店法の廃止から大店立地法の実施にいたる移行期間に生じる、いわゆる「出店凍結」により店舗設置者が大規模小売店舗を出店する際に直面する障害を排除するため、通産省および関係する地方自治体がすべての必要かつ適切な措置を講じることを確保する。
法律業務
日本における法律業務のインフラが、市場の自由化や規制撤廃によって創り出された機会を活用しようとする国内外の個人および企業のニーズに応え得るものであることが肝要である。もし日本が、日本における世界的に競争力のある法律業務分野の発展を引き続き阻害し、国内外の弁護士が依頼者に対し包括的なサービスを提供することを妨げ続けるならば、金融サービス分野をはじめとする日本の構造改革のプロセスは著しく阻害されることになる。日本、外国双方の個人および企業は、国内および国際取り引きに対して完全に統合された国際的法律業務サービスを受けることができるようにする必要がある。従って、米国は、日本が以下の措置を実施することを勧告する。
A. 提携禁止条項の廃止 日本政府は、日本弁護士と外国法事務弁護士(外弁)との提携を禁止する条項を廃止すべきである。弁護士法第27条に企図されるごとく、法務専門職間の対等な提携は自由に任せるべきである。
B. 外国弁護士規制に関する透明性および参加機会の拡大 日本政府は、日本弁護士連合会(日弁連)および地方弁護士会が外弁に影響を与える新しい規則または規制の策定あるいは既存の規則または規制の改正を進める際には、そのすべてに対して外弁が有意義に参加できる機会を提供することを確保すべきである。特に、日本政府は以下の措置を講じるべきである。
B-1. 登録、規則、その他外弁に関係する全ての規制や課題について検討する日弁連、地方弁護士会委員会、小委員会、その他の組織において、外弁がより多くの主張をし、効果的に参加するための規定を設けることを日弁連および地方弁護士会に義務づける。
B-2. 日弁連および地方弁護士会に対し、規則や規制の採用あるいは公布に先立ちパブリック・コメント手続を使用することを義務づける。
B-3. いかなる不服申し立ても含め、外弁の登録に必要な時間を短縮し、外弁の報告手続を迅速化、合理化する。
B-4. 日弁連および地方弁護士会が、特定共同事業の使用に対して如何なる制限も課さないことを確保する。
C. 日本における職務期間の職務経験年数への完全な算入 日本政府は、外国弁護士が日本において自国法に基づく職務を行った期間を、現行で定められている1年のみではなく、その期間のすべてを外弁として登録するために必要となる職務経験年数に算入することを認めるべきである。
D. 外弁による「第3国」法に関する助言に対する差別的制限の廃止 外弁は、いわゆる「第3国」法(すなわち、外弁の自国の司法権の下にある法律以外の法律)に関する助言を提供できる弁護士と同じ資格をもつものと認識されるべきである。そのために、日本政府は、外弁は当該第3国の原資格をもつ弁護士による特定の書面による助言に基づいてのみ、第3国法に関する助言を与えることができるとする、日本弁護士には適用されない現行の差別的制約を廃止すべきである。
E. 専門職法人設立の検討 日本政府は、弁護士とその他の法律専門職による日本における専門職法人の設立の可能性を速やかに検討し、そのような法人が日本においてより包括的、国際的かつアクセスしやすい法律業務サービスの提供を促進するか否かを判断する必要がある。しかし同時に、日本政府は、そのようないかなる専門職法人の設立も、既存の国際法律専門職その他の専門職パートナーシップや組織に対して差別あるいは不利益を与えないものであることを確保しなければならない。日本政府が専門職法人の設立を認可する際には、日本政府は外国の法律に基づいて設立されている専門職法人や有限責任パートナーシップを認知すべきであり、また、それらの法人の日本における事務所が外国弁護士法に定められた事務所の名称に関する規定を順守している限り、それらの組織が自国の法律の下で用いているLLPやLLCまたは同様の名称を日本においても使用することを認めるべきである。
F. 有資格法律専門職数の増加 日本市場への国内外の参加者による日本における法的助言や司法手続きへのアクセスの機会を増やす必要が極めて大である。米国は、弁護士、裁判官、検察官の資格付与に関して新たな道を考慮しようとする日本の努力を強く支持する。短期的には、日本政府はできる限り速やかに、しかし遅くとも2001年4月1日に開始される研修までに、最高裁判所司法研修所による修習生の受け入れ数を年間2000人以上に増やす必要がある。
G. 第三者の代理としての協議業務の許可 日本政府は、外弁が依頼人の代理として日本の政府機関やその他の公的機関と協議することは、外弁の業務許容範囲内であることを確認し、明確化すべきである。
H. 準法律専門職との提携に対する制約の廃止 日本政府は、法律専門職や準法律専門職(弁理士、税理士、司法書士、行政書士を含む)など全ての職種間における業務提携の完全な自由を認めるべきである。このために、日本政府は、準法律専門職と弁護士、外弁との関係においても、また種々の準法律専門職間の関係においても、提携、雇用、費用分担に関する制約を廃止すべきである。
その他の分野別課題
日本は、道路交通法により、自動車専用道路における自動二輪車の走行に対し、依然として不必要な制限を維持しているが、これらの規則は、自動車専用道路における安全性を高めるものでもなく、国際規範に沿うものでもなく、さらに、大型自動二輪車の使用を不必要に制限するものである。日本政府は、これらの制限を速やかに撤廃すべきである。具体的には、ミニカーや自動二輪車の速度制限を普通自動車の制限速度である時速100キロまで引き上げ、自動車専用道路における自動二輪車の2人乗り(乗客1人を乗せた)走行禁止を廃止するべきである。米国政府は、警察庁による自動二輪車の速度制限引き上げに関する検討に進展がみられたことに勇気づけられた。早急に速度制限に関する法律が改正されることを期待する。2人乗り走行に関する提言が12 月に公表されるとのことだが、米国は、速度制限問題と同時に2人乗り問題が解決されることを要望する。このために、以下の措置が適切である。
A. 2000年3月31日までに、日本政府は、高速道路における自動二輪車とミニカーの速度制限を普通自動車と同じ水準に引き上げるべきである。
B. 2000年3月31日までに、高速自動車国道および自動車専用道路における2人乗り(乗客1人を乗せた)走行禁止を廃止すべきである。
競争政策および独占禁止法
T. 公正取引委員会の独立性
独立している公正取引委員会(公取委)は、米国が保持すべきと強く感じる日本の独占禁止執行システムの長年の重要な柱であった。そのために、中央省庁再編の一環として公取委が2001年に総務省の下に置かれる際に、日本政府は公取委の独立性を引き続き確保するための追加的な措置をとるべきである。特に、郵政省も総務省に属することになるため、通信分野において公取委が独占禁止法(独禁法)を適用する場合に、郵政省または総務省が干渉しない、また公取委の人事制度と予算の独立性が維持されることを保証する政令を出す必要がある。
U. 反カルテル措置の執行
1998年3月25日のOECDの「中核的カルテルに対する効果的な措置に関する提言」は、「中核的なカルテルは、競争法に対するもっとも悪質な違反である」ことを認めている。この提言に従って、公取委、法務省ならびに関係省庁は、カルテル及び談合に対する取り締まりを強化するための措置を講ずるべきである。2000年4月までに、公取委は法務省と調整の上、公取委の調査権限を見直し、2001年4月までに法改正をすることを念頭において、改正案を提言する審議会を設立すべである。この審議会は以下の点を検討すべきである。
U-A.刑事捜査および刑事告発の権限
U-A-1. より多くの刑事告発を促すため、独禁法違反の刑事告発手続きおよび要件を改革する。
U-A-2. 公取委の調査権限を強化する。
U-A-3. 独禁法第10章(あるいは他の関係法令)を改正し、不当な取引制限などの独禁法第89条違反の規定期間は継続的な合意や共謀の最後の行為が行われた時からはじめて開始することを明確にする。
U-B.調査妨害への罰則
U-B-1. 独禁法第40条および第46条による調査に対する妨害(公取委あるいはその調査官への意図的な虚偽報告あるいは報告書の提示を含む)に対しより強い罰則を科す。これには、独禁法第94条および94条の2の違反に対する実刑としての懲役、罰金を含む。
U-B-2. 独禁法第92条の2、94条あるいは94条の2に規定されているように、調査を妨害する個人を積極的に告訴する政策を採用する。
U-C.行政課徴金制度の改革
U-C-1. 課徴金制度を以下の通り強化する。
U-C-1-a.独禁法第7条の2を改正し、違法なカルテル行為を公取委に通報し、公取委に十分協力する企業に対しては課徴金を減額したり、免除したりする権限を公取委に与える。
U-C-1-b.中小企業に対する特別な処置を廃止する。
V.談合に対する措置
中央政府および地方自治体調達における談合とのさらに戦っていくために、日本は2000年4月までに以下の措置を含む反談合計画を採用すべきである。
V-A.刑法第96条の3により、刑事上の談合を調査するため、警察庁および特に警視庁をはじめとする地方警察本部による新たな計画を発表する。
V-B.刑事上の談合行為を調査する上での協力を強化するために、公取委と警察庁及び警察本部との連携メカニズムを確立する。このような協力には、訓練プログラムやこの分野における効果的な調査テクニックに関する情報交換、またそのような犯罪を調査するのに役立つ研究機関の利用なども含まれるだろう。
V-C.政府契約における談合に関与したことが判明した会社に対する民法上の不法行為あるいは、不当利得に関する条項の下で、全ての政府調達機関は損害賠償をもとめる政策を採用する。
V-D.故意に談合故意を助けた政府職員、特に指定入札システムを利用したり予定価格を不当に漏らしたりした職員に厳しく対処するという政策および執行制度を政府全体で採用する。
V-E.刑事罰また行政処罰(課徴金を含む)などの効果的な抑止システムを発展させ、企業が談合に参加したり、あるいは補足的な入札をすることなどにより、談合行為に加わったり、談合行為を助けたりすることのないようにする。
W. 民事的救済措置
私訴による差止請求や損害賠償請求が現実的に利用可能であれば、独占禁止の法体系の効果および抑止力を高めることができる。このために、日本は2000年4月までに以下のような法律を導入すべきである。
W-A. 反競争的であり、独禁法第3条または第8条1の(1)の行為を含む独禁法違反行為に対して私人が差止請求を求める訴訟をおこすことを認める。
W-B. 独禁法違反民事賠償訴訟において、(i)損害額を証明する負担や(ii)独禁法違反と被った損害との間の因果関係を証明するという、原告の直面している法的障害を緩和する。
W-C. 関係地方自治体、そして、または関係政府系団体に対し、彼らの管轄内で独禁法違反のために消費者が被った損害を賠償するために独禁法または民法の下で、私的訴訟をおこせる権限を与える。
X.規制撤廃の促進
X-A.反競争的民間部門の規制排除
X-A-1. 閣議決定(1998年3月31日)および公取委による「公益法人の基準・認証に関する調査」(1998年7月)に従い、公取委は事業者団体および非営利団体が採用する反競争的民間部門の規制(民民規制)の撤廃を確保するために公取委がとった措置に関して2000年4月までに報告する(透明性およびその他の政府慣行、民間部門の規制も参照)。
X-B.公益事業における規制撤廃
X-B-1. 米国政府は、規制撤廃にあたり電気分野に独禁法を適用するための公取委によるガイドライン作成準備を支持する。これに関して、公取委は以下の措置を講ずるべきである。
X-B-1-a.1999年4月1日より施行されているパブリック・コメント手続きを使用し、一般の人と外国政府にガイドラインが完成する前にコメントする機会を与える。
X-B-1-b.これらのガイドラインに以下の一般的課題への対処も求める。
X-B-1-b-i.特に託送性能という時間に敏感な移行を鑑みた、適切な製品及び地理的市場概説アプローチ。
X-B-1-b-ii.引き続き完全または部分的規制の対象となる取引きや企業への独禁法適用の範囲に関する説明。
X-B-1-b-iii.託送接続における競争的調整と反競争的調整との区別。
X-B-1-b-iv.支配的な企業が市場での力を保持したり拡大するため反競争的慣行を行うことの防止。これには会社が市場での力を他の統合あるいは非統合競合者の市場アクセスを妨害するために利用しようとする動機(構造的あるいは他の方法によって)を排除することも含む。
X-B-2. 公取委は、健全な競争政策に沿った形で、電気・ガス分野における最大限の規制撤廃を促進するために、引き続き積極的な役割を果たしていく。
X-B-3. 公取委は、公益事業分やにおける規制撤廃および競争政策を現在検討している研究会が以下の事項を実行することを確保すべきである。
X-B-3-a.中間および最終報告書または勧告の発行予定を含む作業日程を公表する。
X-B-3-b.関係者が意見を表明できるヒアリングを開催する。
X-B-3-c.パブリック・コメント手続きあるいはそれに匹敵する手続きに基づいて、研究会の中間報告あるいは予備的勧告に対してパブリック・コメントの機会を提供する。
Y.独占禁止法適用除外
Y-A.日本は、鉄道、電気、ガス事業を含む自然独占に対する適用除外を定めた独禁法第21条を2000年4月までに廃止すべきである。
Y-B.産業再生法(法第131号、1999年)の第5条の適用に関して、日本は以下のことを実行する。
Y-B-1. この法律が何ら、独禁法に取って代わるものでもなく、公取委による独立した独禁法の執行を損なうものでないことを確認すること。
Y-B-2. 公取委が、この法律の下で提出される全ての申請、特に共同申請について通知を受け、見直す機会を与えられること。
Y-B-3. このような申請に対する公取委の全ての助言を出来る限り公表すること。
Y-C.日本は、公正取引協議会を実質的に独禁法の適法除外とする景品表示法第10条の5の必要性を廃止する方向で、見直すべきである。
Z.合併および株式・資産取得審査
日本は、いかなる形態によるものでも競争を実質的に制限する可能性をもつM&Aの申請に対し、積極的に独禁法を適用することを支持すべきである。これに関し、以下の措置を講ずるべきである。
Z-A.日本は、独禁法第10条にあてはまる株式その他の取得に関し事前報告を義務づけるよう独禁法を改正すべきである。
Z-B.日本は、複雑なM&Aのケースを適切に調査し、厳密な分析ができるように公取委の能力改善を促進する目的で、公取委の資源を増やすべきである。
Z-C.公取委は、M&A審査の透明性を高めるため以下のような措置を取るべきである。
Z-C-1. 事前協議期間中に申請された案件に公取委が変更を求める場合は、その根拠のより完全な説明を公表すること。
Z-C-2. ある特定の案件に求めた変更がいかに競争上の問題を排除するかを詳細に説明すること。
Z-C-3. 内容の変更後に申請された案件を承認する場合は、最終的に承認する前に、関係第三者または出来るだけ広く一般に考えを求め、それらのコメントの適切なものを公表する。
[.流通分野における競争の促進
流通分野の競争促進と効率向上という観点から、公取委は以下の措置を講ずるべきである。
[-A.「高度寡占産業」における製造業者ならびに流通業者を結び付けている財務上の相互関係の程度と形態に関する調査に着手する。このような調査は産業別に行い、株式の持ち合い、融資あるいはその他の資本提供、また従業員、設備・機器の共用状況を対象とする。
[-B.大規模小売店舗の設置の申請を検討中の地方自治体の活動を緊密に監視し、大規模店の競争促進的利便について、これらの地方自治体に提言を行う。
[-C.特に高度な集中状態にある分野の民間企業の独禁法遵守計画を、それらの計画が独禁法遵守の最も厳しい基準となることを促進するという観点で、見直すことの出来るメカニズムを構築する。
\.公取委の予算及び資源
\-A.日本は、2000年度における公取委の職員を大幅に(最低50名)増員するべきである。また、政府機関の再編を機に、公取委への他の機関からの永久移籍を認めるべきである。
透明性およびその他の政府慣行
近年、日本政府は、行政手続法の施行、意見提出手続(パブリック・コメント手続)の採用、情報公開法の制定等を通し、透明性がより高く責任所在のはっきりした規制制度の基盤づくりに取り組んでいる。米国政府は、これらの措置を歓迎する一方で、日本が1999年のOECD報告書(Regulatory Reform in Japan)で必要とされているレベルの透明性と責任所在の明確化を達成するためには、更なる措置を講じる必要があると考える。OECD報告書は日本の規制制度について次のように述べている。「規制や行政プロセスの透明性が欠如していることは、日本国内の規制制度の大きな弱点である。すべての市場参入者と競争者にとって、規制に関する適切な情報を入手することは、潜在的費用、リスク、市場機会についての正確な事業判断を行うのに不可欠であり、規制の不透明性は、これらの事業判断に影響を及ぼし、特に、外国企業には余分な負担を課している」。同報告書はさらに、「投資、市場参入、イノベーションは規制の透明性の改善と責任所在の明確化を通じて促進されるべきである」と結んでいる。
米国は、日本政に対し、規制制度の透明性の大幅な改善と責任所在の明確化を目的とした広範な規制改革プログラムを導入するよう要望する。プログラム導入における基本的前提は、各省庁が既存の規制の変更や継続、また、新たに規制を制定する際には、国民に対し正当な理由を説明する義務を負うことである。規制をルールとしてではなく、例外として位置づけるべきである。つまり、公共政策の利益に直接結びつかない規制は廃止するか、採用すべきではない。国民は規制の制定や評価過程に参加するための効果的な機会を与えられるべきである。当該改革プログラムは、公的規制と民間規制(いわゆる民民規制)の両者を対象とすべきである。
T. パブリック・コメント手続
1999年3月23日に行政措置として閣議決定されたパブリック・コメント手続について、OECD報告書は、「もし全省庁で統一的かつ組織的に実施されれば」パブリック・コメント手続は意義を持つと述べている。米国は、日本の多数の省庁や審議会が規制草案を公表し、規制制定プロセスの透明性を高めたことを承知している。しかしながら米国は、省庁や審議会が提出された意見をほとんどの場合、十分に考慮していないのではないかと懸念している。当該手続が約束するように、各省庁が提出された意見を規制の最終案に取り入れて修正を加えることで、パブリック・コメント制度を真剣に受け止めていることを積極的に証明することが重要である。残念なことに、パブリック・コメント手続の実施状況に対し、国民が問題提起をすることのできる独立した監察機構は存在しない。このような制度の欠陥に対処するため、日本はパブリック・コメント手続の法制化に向け準備を始めるべきである。
T-A. パブリック・コメント手続の実施状況フォローアップ パブリック・コメント手続の実施状況のフォローアップとして、第2回共同現状報告の合意に従い、総務庁は1999年度末に、パブリック・コメント手続の実施状況に関して、一般から意見を求めるべきである。総務庁は、当該ファローアップ報告書に下記の事項の記述を含めるべきである。
T-A-1. パブリック・コメント手続が採用されたケースに関しては、次の点について記述すること。(1)関連規制または他の措置に関する簡単な説明、(2)意見の募集期間、(3)意見提出時から規制または他の措置が採用・最終決定されるまでの期間、(4)提出された意見が公開されたか否か、(5)パブリック・コメントの結果として、規制または他の措置にどの程度の修正が加えられたか。
T-A-2. パブリック・コメント手続を実施しないという当該省庁の決定が適切であったか否かという判断。
T-B. パブリック・コメント手続実施の強化 米国は、パブリック・コメント手続の実施をより効果的なものにするために、省庁や審議会に対し、意見募集期間を、可能なかぎり、60日間と設定するよう求める。
T-C. 特定措置に対するパブリック・コメント手続の採用 パブリック・コメント手続の実施の決定に関して、中央省庁に広範な裁量権が与えられていることを考慮し、日本政府は、特に下記の案件に対しパブリック・コメントが適用されることを確保すべきである。
T-C-1. 通産省が作成中の「コメンタール」または、大規模小売店舗立地法(大店立地法)の施行に関連するその他の措置。
T-C-2. 通産省と運輸省が作成中の自動車分野に関する規制。
T-C-3. 大蔵省と金融監督庁が作成中の保険等の金融サービスに影響を及ぼすすべての規則(パブリック・コメント手続に必要な十分な意見募集期間と産業界が必要な組織・運営・システムの変更を行えるよう、最終規則変更の公示から施行までの十分な期間を設定すること)。
T-C-4. 日本政府が作成中で1999年12月に公表予定の政府調達手続のデジタル化に関する行動計画。
T-C-5. 通産省が作成中の電力事業と天然ガス分野の規制撤廃に関する規則。
T-D. 審議会によるパブリック・コメント手続の実施
T-D-1. 日本の規制制定プロセスにおいて審議会が果たす役割の重要性に鑑みて、審議会、研究会、懇談会、勉強会、そして、それらの部会やその他の下部機関(以降、総称して審議会)を含むすべての審議会が、中間報告や提言試案(以降、総称して中間報告書)を公表する際に、パブリック・コメント手続、またはこれに匹敵する手続きを適用することを、1999年度末までに義務づけるべきである。米国は、日本の多くの審議会が中間報告書に対して、意見提出の機会を設けていることを承知しているが、このような慣行がさらに広範なものとなるよう奨励する。
T-D-2. パブリック・コメント手続がすべての審議会で実施されるまで(上述の段落T-D-1.を参照)、日本政府は、下記の事項を含め、規制、法律、その他の重要な政策に関して審議会が中間報告書を作成する際には、パブリック・コメント手続が適用されるよう促すべきである。
T-D-2-a. 厚生省 -- 中央社会保険医療協議会で審議中の医療機器・医薬品の償還率設定規則
T-D-2-b. 建設省 -- 中央建設業審議会
T-D-2-c. 通産省 -- 電気事業審議会
T-D-2-d. 大蔵省 -- 関税率審議会小委員会による改正関税法に関する報告書と提言
U. 規制改革プロセス
OECD報告書は、日本における規制インパクト分析(RIA)の利点を次のように述べている。「規制分析は、役人が、規制のもたらす結果を理解し、規制の透明性を改善し、経済措置等のより柔軟で費用効果の高い政策手段を明らかにすることを助ける。日本では、そのような代替的措置はあまり採用されていない。国民との協議を通してRIAが実施されれば、RIAはより効果的となる。そして、日本は国民との新たな協議手段を導入することによって、RIAの改善を図ることができる」。OECDは、24のOECD諸国においてRIAが採用されているが、日本におけるRIAの実施は初期的段階であると述べている。従って、米国政府は、日本が次の措置を取るよう要望する。
U-A. 規制インパクト分析 日本政府は、政策策定と行政管理の透明性を改善するため、またOECD報告書(同報告書は、日本政府にRIAの改善を勧告している)、1999年3月31日付けの閣議決定(省庁に政策評価の改善を促している)、通産省の政策評価制度案を踏まえ、2000年度初めまでに、政府機関全体に規制インパクト分析システム、つまり、経済的影響が大きい規制の変更に対し、インパクト分析とパブリック・コメントの実施を義務づけるシステムを構築すべきである。具体的には、日本政府は、下記の措置を講じるべきである。
U-A-1. 経済的影響が大きい規制変更に対し、全省庁が費用・便益分析(数量分析・非数量分析の両方)を実施すること。
U-A-2. 規制草案を検討する際に、その時点において入手可能な最善の科学的・技術的・経済的データを使用すること。
U-A-3. 利害関係者や一般市民に、費用・便益分析やその分析の前提条件の合理性と方法論について意見を述べる機会を与えること。
U-B. 規制改革機構 日本政府は、経済的影響が大きい規制の変更を検討する規制インパクト分析機関を設立するための法律を制定すべきである。より効果的な分析機関とするためには、当該分析機関が最も強い権限によって創設され、各省庁から独立した事務局を持ち、内閣に直接報告する権限を付与されるべきである。
V. 行政手続および慣行
V-A. 免許、許可、認可に関する行政手続および慣行の改善 米国政府は、長年にわたり日本の免許、許可、認可(総称して「認可」)の取得に係わる行政手続と慣行に対して懸念を表明してきた。特に懸念されるのは、規制の内容が申請時に必要となる要件について、申請者に対して十分な情報が提供されていないこと、またそれを補足するため、あるいは規制の内容を増幅する手段として各省庁が不透明な行政指導を利用すること、そして多くの場合、申請者は申請に必要な条件を満たすために当該省庁と長期間の協議をしなければならないこと等である。総務庁は、1999年6月に公表した行政手続の公平および透明性の確保に関する広範な調査において、これらの問題の多くが存在することを確認した。米国は、総務庁の勧告、特に申請書の取り扱いと行政指導に関する勧告を歓迎する。米国は、総務庁の勧告が実行されるべく日本政府が必要な措置を講ずるよう要望する。総務庁の勧告に沿って、日本政府は各省庁に下記の事項を義務づけるべきである。
V-A-1. 行政手続法第7条に従い、すべての申請書を受理し、遅滞なく審査を開始すること。
V-A-2. 申請者に事前協議を要求または促したりしないこと。具体的には、申請を正式に受理または審査を開始する前に、申請書の内容、範囲、その他の事項に関する協議の要求・奨励を行わないこと。
V-A-3. 行政手続法第7条に従い、申請書が必要なすべての情報を含んでいない場合には、申請者に対し申請内容の不備および申請すべき要件を書面にて通知すること。
V-A-4. 認可要件を拡大するための手段として行政指導を使用しないこと。
V-A-5. 行政手続法第9条に従い、申請者の要請があれば、申請状況および申請に関する決定(処分)が下される時期に関して書面で通知すること。
V-B. 特定分野における行政手続および慣行の改善 下記の分野における免許、許可、認可に関する行政手続および慣行の改善は、特に重要である。
V-B-1. 医療機器・医薬品分野
V-B-2. 金融商品とサービス
V-B-3. 保険商品とサービス
V-C. 新規制制定メカニズムの導入 米国政府は、規制制定プロセスの透明性と予見性を向上させプロセスの複雑さを簡素化するためには、日本政府が以下の2つの新たな規制制定メカニズムの導入を考慮することを要望する。
V-C-1. 「ノー・アクション・レター」:このメカニズムの下では、民間が省庁に対して既存の法律および規制が彼らの提示する実例に適用されるか否かという質問を書面で要求できる。法律および規制の適用がない場合、当該省庁は、定められた期間中に、提示された実例に対して法律および規制が適用されない旨を「ノー・アクション・レター」にて通知する。「ノー・アクション・レター」が発行されてから一定の期間後、要請があれば、当該レターの要求者の身元を明らかにする情報を削除し、当該レターの内容は公的記録となる。
V-C-2. 「判定報告」:このメカニズムの下では、民間が省庁に対して、法律や規制が彼らの提示する実例にどのように適用されるかという説明を要求できる。当該省庁は、これらの問い合わせに対し、定められた期間中に書面で返答を行い、それを公開する。
V-D. 行政指導 OECD報告書は、行政手続法が行政指導内容を書面で公布することを明記しているにもかかわらず、わずか33の事例しか公開されていないと述べている。日本政府は、各省庁に対し、公開できないやむをえない特別な理由がある場合を除き、すべての行政指導を書面で公布することを義務づけるための適切な措置を講じるべきである。
W. 民間部門の規制
日本政府が規制の撤廃および緩和を実施していくにあたって、特殊法人、事業者団体、およびその他の民間組織(総称して「民間規制組織」)が、政府規制に代わって民間部門の規制(いわゆる「民民規制」)を行うことを認めないことが不可欠である。また、日本経済における民間規制の役割を監督し透明性を改善させる必要がある。市場参入と事業の運営、許可、基準、資格、検査、試験、認定制度に関する規則等の民間規制(総称して「民間規制」)は、事業活動に悪影響を及ぼす可能性がある。日本政府は、以下の措置を取るべきである。
W-A. 監視メカニズム 日本政府は、民間規制を監督するために次の2つの措置を講じるべきである。
W-A-1. 公正取引委員会は、民間規制が反競争的規制とならないことを確保すること。(競争政策分野を参照)
W-A-2. 日本政府は、民間規制の運用を監督する恒久的行政機関を指定し、以下の権限を付与すること。
W-A-2-a. 各省庁に対し、管轄下にある民間規制組織の次の事項に関する情報提示を求める権限。(i)当該組織の規制の説明、(ii)当該規制の対象となる産業と企業、(iii)当該規制に遵守しない場合の罰則内容、(iv)当該規制の法的根拠。
W-A-2-b. 既存の民間規制の必要性と権限を審査するプロセスを構築し、不必要で法的根拠のない規制を撤廃する権限。
W-A-2-c. 民間規制組織が新たな規制を採用する前に、当該規制案を審査する権限。
W-B. 透明性の改善 民間規制の透明性を高めるために、日本政府は、公的政策機能や政府機能を委譲されている民間規制組織、特に下記の組織が、規制を採用・制定する前に、公正で透明なパブリック・コメントを実施することを義務づけるべきである。
W-B-1. 日本弁護士連合会
W-B-2. 日本自動車機械器具工業会
W-B-3. 生保・損保契約者保護組織
W-B-4. 損保料率算定会
W-C. 事業者団体 日本政府は、事業者団体の政策と手続きが公正で透明であることを確保すべきである。また、団体の情報に会員のだれもが公平にアクセスでき、委員会や理事会での投票権や代表権等の行使を通じて団体運営に参加できることを保証すべきである。事業者団体は、すべての会員の利益を代表し、増大をはかるべきである。
W-D. 政府機関による権限委譲 日本政府は、政府機関が製品の認定または認可等の政府あるいは公的政策機能を民間規制組織に委譲することを、それが法令に明記されている場合を除いて、禁止すべきである。
X. 特殊法人の情報公開
米国政府は、日本政府が特殊法人の情報公開を検討する審議会を設置したことを評価する。国民が効果的な方法でこれらの情報を入手できるよう、日本政府は情報公開法の施行と同時に、かつ情報公開法が規定するのと同様の方法で、当該法人の情報公開が実施されるべく、必要な措置を速やかに講じるべきである。
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