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□富田メモ―「政治問題化」を超えて [JANJAN]
http://www.janjan.jp/government/0607/0607228359/1.php
富田メモ―「政治問題化」を超えて 2006/07/23
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昨日、東京へ行ってました。
朝、東京都内の電車のなかで読まれている新聞は、朝日でも読売でもなく、8割近くは日経新聞です。
で、昨日は前の人の読んでいる日経新聞の1面を見て、驚きましたね。
「A級戦犯 靖国合祀」 「昭和天皇が不快感」の文字。
日経の特ダネ(他紙は一切報じていない)です。これは、今年の新聞協会賞、確実でしょう。メモを残した富田元宮内庁長官で、ほぼ内容の信憑性は疑いようがない。
安岡崇志編集委員による取材と思われますが、新聞記者、恐るべしという感じです。歴史が大きくうねるわけですから。ジャーナリストの仕事であり、この事実をもとに、学者は研究を、政治家を意思決定をこれからしていくのでしょう。
3年ほど前に、富田元長官が亡くなっていることを考えると、おそらく富田家となんらかのつながりを安岡記者が何らかのかたちでメモを見せてもらい、(A級戦犯の合祀を決定した)松平永芳頼宮司が亡くなられ1年が経ち、公開の同意を得られたということかもしれません。
ただ、小泉首相の6回目の参拝について論じられるころであり、さらに総裁選も近いときに公開されたことわけで衝撃的です。
(記事の概要と背景)
「だから私はあれ以来、参拝していない。それが私の心だ」「筑波(注、A級戦犯の合祀をしなかった)筑波藤麿・第5代靖国神社宮司)は慎重に対処してくれたが」「松平の子の今の宮司(注、A級戦犯合祀にふみきった松平永芳・第6代靖国神社宮司)がどう、考えたのか。やすやすと」
と、強い調子で述べられており、昭和天皇がA級戦犯の合祀に不快感を持ち、それが理由で靖国神社の参拝を中止されたことが明らかになったわけです。
今でこそ、「靖国参拝」するとナショナリストと思われたり、首相が参拝なんてけしからんという見方があるわけですが、戦後は長い間、みんな誰でも参拝してたんです。国民はもちろん、総理大臣も毎年参拝していたし、社会党を含め国会議員(除く共産党)も、そして天皇陛下も参拝されていた。(外国の反発はもちろんないです)
ただ、75年に首相になったハト派の三木首相が「不戦の誓いをする」「私人として参拝する」という、当時の社会通念からすれば、摩訶不思議なことを言って参拝したわけです。(このときも、外国の反発ないです)
で、A級戦犯が合祀されたのが、78年です。(ちなみに、A級戦犯が合祀されたことで他国の反発はないし、合祀後、大平、鈴木、中曽根各首相は参拝しています)
そして、靖国問題が左派の批判が強まり、中国と韓国が非難するようになるのは、85年に中曽根首相が「戦後の総決算」といって、「公人」として参拝したからです。(78年の内閣法制局の見解では、首相の参拝=私的参拝ということになっていた)
翌年から中曽根総理は参拝を中止。首相の参拝が困難になったわけです。
しかし、多くの国会議員が「靖国神社をみんなで参拝する会」などで参拝しているのはご承知の通りです。
(記事のインパクト)
さて、以上を踏まえて今回の記事のインパクトがどこにあったかを考えてみたいと思います。
第1のインパクトは、右派の説明が完全に崩れたということです。右派論客は、昭和天皇が参拝されなくなったのは、78年にA級戦犯が合祀されたからではなく、75年に三木首相の参拝によって、私的/公的参拝が問題化したためだと主張してきたからです。今回のメモでは、昭和天皇がA級戦犯に「不快感」を持ち、それゆえに靖国参拝しなくなったことが明らかであり、右派のこれまでの解釈は誤りだったことになります。
第2のインパクトは、靖国や遺族会が今度どうするかと言うところでしょう。遺族会も、靖国も天皇に参拝していただきたいのが本音です。法的には、首相や天皇が神社に公式参拝することを違憲とする判決はなく、慣例的にも、伊勢神宮には普通に参拝しているわけで、政教分離の観点からは私人であれ公人であれ、靖国参拝も問題がないと考えられるます。とすると、やはり「A級戦犯合祀」のために天皇陛下が参拝していないという状況にあるこということになります。さらには、天皇は神道の長(キリスト教のローマ教皇)にあたるわけで、昭和天皇のご意思を靖国がどう考えるのかという問題があります。
第3のインパクトは、僕が懸念する最大のものですが、現状以上に世論が割れることです。いくらこれが昭和天皇のご発言であったとしても、天皇そのものへの理解や敬意がない現在の日本で「A級戦犯分祀」で世論がまとまるとは思えません。むしろ、これを機により右派と左派との対立が鮮明になる可能性が高い。事実、民主党や自民党の山崎拓議員や加藤紘一議員らはA級戦犯の分祀や国立追悼施設での発言を強めています。左派のメディアも同じ。右派はどう動くが分かりませんが、右派がA級戦犯合祀を問題としない最大の根拠が東京裁判への認識に関わっていることなどを考えると「分祀」議論に流れるとは思えません。
(いくつかの疑問)
最後に僕が今回のことで疑問に思ったことをいくつか列挙したいと思います。
(1)昭和天皇の真意は?
・なぜ、昭和天皇はA級戦犯の合祀を「不快」に思ったのか。(これがとても知りたいところなのに、マスメディアでは特に議論されていないように思う)
・関連して、昭和天皇やA級戦犯や東京裁判への認識はどうのようなののであったのだろうか。
・「A級戦犯合祀」か「三木首相の参拝、私人/公人」問題のどちらかという議論ではなく、両方だったのではないか。
(2)靖国神社をめぐって?
・靖国神社がかりに分祀にふむきるとして、それは教義上の問題もあるだろうが、日本の伝統的な価値観(何人かの個人に死しても罪を負わせる)と相容れるのだろうか。
・A級戦犯への恩赦もそうだが、合祀も戦後の苦しい時代を生きた一般の人たちの共通の思いであったのだろうか。
(3)議論できるのか?
・A級戦犯といって東条英機ぐらいしか一般の人々は知らないのに議論できるのか
・中国と韓国の干渉がたえずあるなかで、議論できるのか
(4)国論がわれていることについて?
・結局、着地点はどこに見出すのか。
・靖国問題をこれ以上、政治化させていいものか。処方箋は?
(5)今後の参拝に関して?
・仮に、ここで首相が参拝を中止すると二度と靖国へ参拝するのは難しくなるのではないか。
(今後の見通し)
小泉首相が退陣までに参拝するにせよ、しないにせよ、次期総裁の有力候補、安部官房長官は判断力ある人なので、僕は首相になっても参拝しないのではないかと考えています。(小泉首相の場合、当選前に言ってしまったためやめられなかった感が強い)
つまり、安部長官が首相になる可能性が現在高く(人気の福田氏は森派内の調整の結果、不出馬になったと今日、報じられているわけだし)、彼が靖国参拝しないと思うので、問題が政治イシューではなくなります。
そこで、ようやく分祀にしても何にしても、議論は始まるのではないかと僕は思います。
付言すれば、僕は平和を願うのであれば、靖国に祭られている英霊を記憶し、祈る必要が当然あるように思います。僕は靖国神社が政治問題化するたびに、本当に申し訳なくなります。被害と加害という問題もあるのでしょうが、戦争で死ななければならなかった先人に安らかさを与えられない、その悔しさです。天で「やれやれ」と思って、見ているのではないでしょうか。
最後に、本日、日経新聞東京本社に火炎瓶がなげこまれたようですが、今回のスクープとの関連性がきわめて高く、言論に対するこのような行為を非難しておきます。
(西尾邦明)
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