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【天木直人 ニッポン外交の迷走】006年7月10日 掲載
笑うしかない小泉の北朝鮮外交
国民の安全と生活に直結する「外交」というものを茶化して論ずるのは本意ではない。しかし5年半にわたって繰り広げられた小泉外交に論評に値するまともな外交があったか。笑い飛ばすしかないであろう。その小泉外交が最後の最後まで笑わせてくれた。
国賓級と持ち上げられた訪米の目玉が、エルビス・プレスリーの邸宅を訪れ、娘の肩を抱きよせて歌うことしかなかったからではない。それをはるかにしのぐオソマツで笑止な外交が訪米直後の小泉首相によって繰り広げられたのだ。
7月5日の未明ついに北朝鮮がミサイル実験を敢行した。しかも、驚き慌てふためいた小泉首相を尻目に、まるで花火をあげるように次々とぶっ飛ばした。いったい小泉首相はブッシュ大統領と何を話し合ってきたのか。北朝鮮にミサイル発射はさせないと凄んできたのではなかったのか。
極悪非道の独裁者である金正日と国交正常化を図ろうとして唐突に始まった北朝鮮外交は、実は小泉首相が最後まで未練を残して、その成功に固執した外交であった。「歴史的な偉業」を達成してノーベル平和賞――。だからこそ絶対服従の米国にまで内証で決行した。拉致問題の解決が行き詰まっても、拉致家族の訴えに目もくれず、世論の怒りも無視して、北朝鮮へ経済制裁を決して行おうとしなかった。金総書記の機嫌を損ね、平壌宣言を破棄されたら自分の夢はおしまいになるからである。
今度の北朝鮮のミサイル実験はその小泉首相のはかない望みを完全に断ち切ったようだ。「対話と圧力」といいながら対話ばかりを重ねてきた小泉首相も、今度のミサイル発射を黙ってやり過ごすことは出来なかった。
驚いたのはその日の夕刻に行われた記者会見での言い草である。北朝鮮が「過去の約束にとらわれない」と平壌宣言を破棄しているのに小泉首相はいまだに「北朝鮮との対話の余地は常に残しておかなければなりません」などと未練タラタラだ。
揚げ句の果てに内輪の酒の席で驚くべき放言をぶっ放している。「俺はついてる。プレスリー邸で歌っている時に撃たれたら格好悪いよな」「国会を閉会しておいてよかっただろう。(会期延長していれば)大変だった」――どこまでも国民を舐めきっている。こんな男を任期末まで総理にとどまらせる必要はない。即刻クビにして新たな指導者の下で出直すほかはない。誰がなっても小泉首相よりはマシであることだけは明白である。
▼天木直人(あまき・なおと) 元レバノン大使。1947年生まれ、京大法学部中退で外務省入省。イラク戦争に反対する公電を送り、小泉首相の対米追従外交を批判して「勇退」を迫られる。著書に「さらば外務省!」「ウラ読みニッポン」(講談社)など。
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