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日本版CIAの中身とは
『長いウサギの耳必要』
「おはようフェルプス君、今回の君の任務だが…」で始まる往年のテレビスパイ番組にわくわく見入った方も多いのでは? 懸念されるテロや海外での妨害工作などに備えるため、自民党の検討チーム(座長・町村信孝前外相)が、米中央情報局(CIA)や英秘密情報局(MI6)のような対外情報機関創設を提言した。そのミッションは? (坂本充孝、大村歩)
■町村座長に聞く 『工作活動の前提情報はいる』
――本格的な情報収集機関が日本に必要だと考えたきっかけは。
9・11テロ事件の対応に当たり、わが国にはしっかりとした海外情報がないと痛感していたが、後に外相になり、いよいよ驚いた。例えばイラクで人質事件があり、テロリストはどこに潜伏しているのか、動向はどうかと聞いても誰もわからない。国内の治安情報ならば警察、公安調査庁というような組織がカバーしているが、在外となるとからっきしだ。海外を見回してこんな国はほかにはない。
――日本にも内閣情報調査室、外務省国際情報統括官などあるが。
インフォメーションとインテリジェンスは違う。公開の情報に分析、評価を加えたのがインテリジェンスで、これを持っている組織はない。日本も戦前は、軍部が一定程度やっていた。ロシア国内の反政府運動を支援したりの活動をしていた。戦後は「そんなことはダメ」という政党もあり、できなくなった。
――今の例は工作活動では。
工作活動までするかどうかは政策判断と思うが、いざやろうというときの前提となる情報は持っていなければいけない。CIAを例えていえば、情報収集の上、当該国の政府が反米的であるとすれば転覆活動もするでしょう。そこまで、やるかやらないかは政治の判断。しかし基礎としての能力がなければ、やろうにもやれない。私は諸外国で転覆活動をやろうと思っているわけではないが、日本は専守防衛の国だからこそ長いウサギの耳が必要だ。ところが実際は貧弱な耳しかない。日本の存立、広義の安全保障のために、そういうものが必要だと思う。
――新設する対外情報機関とは。
情報補佐官が情報を分析する役割で完全なペーパーワークであるのに対して、対外情報機関は実際に海外に出て情報をとって来る人たちだ。語学に堪能で現地の人脈を持つ人がよい。元商社マンとか、民間の人を登用し、並行して独自に養成していくようになるのではないか。衛星情報を分析する、既存の内閣衛星情報センターに併設する。
――国会に設置するという情報委員会とは何か。
情報委員会は米国にも英国にも国会内に存在する。英国の例では委員は首相が指名する。(内閣情報委員会は)この委員会に、予算、人員、活動内容などを報告する。報告を受けた委員会は、もう少しこういう活動にした方がよいという意見を首相にあげる。英国ではかつてMI6が何をしているのか、完全な秘密だった。この反省で十数年前に、こうした委員会ができた。もちろん秘密会で議員は完全な守秘義務を求められる。
――内閣に情報を集めれば、時の政権に利用されてしまうという危険はないか。
従来は外務省が情報を持っていたが、外務省は政策をつくる機関であり、自分の政策にあった情報を集めてしまう危険もある。むしろ政策官庁が情報収集をしない方がいいという観点に立っている。
――米国は日本に国際テロ対策の一翼を担うように求めているが、情報戦略面でも貢献するよう要請されたのではないのか。
これは私が考えたことであって、米国からの要請など一切ない。インテリジェンス要員の養成などは何十年もかかる話で、米軍再編など近場の話とは結びつきようもない。
町村氏の提案に対し、本家にあたる外国の情報機関はどんな組織なのか。
CIA公式ホームページ(HP)によれば「外国の情報を収集することで大統領と米議会上院が国益に関係する判断をする際、手助けを行うこと」が使命だという。また大統領の命令で秘密調査活動も行う。
MI6のHPでは「ジェームズ・ボンドの映画での描写はどれくらい現実的か?」という質問について「(元MI6職員の)イアン・フレミングが書いた原作の一部は彼の体験に基づいたものだったが事実より誇張がある」との記述もある。
両機関とも機密保持を理由に、職員数や予算を明らかにしていない。CIAの場合、一説には職員数二万人規模だとされている。国際政治や戦争の背景に暗躍するというイメージは強いが、具体的にどんな活動をしているのかは機密のベールに包まれている。
■政争の具になる恐れも
元内閣安全保障室長の佐々淳行氏によれば、戦後間もなく当時の吉田茂首相らが中心になり、内閣情報局という対外情報機関を立ち上げようとしたが、「特高警察の再来だ」などと批判され頓挫した。そのあおりを受け、日本では本格的な対外情報機関の創設は見送られ続け、内閣情報調査室(内調)はわずか八十人の正規職員しかおらず、CIAなどから見ると幼稚園並みの組織だという。
佐々氏の体験では、大使館員でも防衛庁や警察庁の職員という立場で接することで、情報が得られたが、その情報も外務省本省に握りつぶされることも多々あったという。
佐々氏は「まずは各国日本大使館に派遣された警察、防衛両庁の職員に対し内閣官房との兼務辞令を出し、これらの兼務職員に情報機関職員としてのノウハウをちゃんと教育する。例えば上海領事館の館員自殺事件のようなハニートラップ(色仕掛け)などは情報の世界では初歩の初歩だが、知られなさすぎている」と解説する。
今年六月、PHP総合研究所がまとめた論文「日本のインテリジェンス体制 変革へのロードマップ」の共著者で東京工科大の落合浩太郎助教授は「今、内調に出向しているのは各省庁の課長補佐クラスでそもそも所属官庁は情報を出してこない。町村提言での情報補佐官については、強い権限を付与するなど、よほど強力に官邸がリーダーシップをとらないとまた情報の出し惜しみが起きてしまう」と心配する。
佐々、落合両氏に共通する指摘は「内調とは関係なく、まったく独立した対外情報機関を法改正のうえつくるべきだ」という点だ。
一方、こうした動きに懸念を示す向きもある。
ある政治団体顧問は活動経験を踏まえこう疑問を投げ掛ける。
■『まず明確な外交方針が』
「日米で情報を共有化していくという流れの中で、こうした話が出てきたのだろう。だが、むしろ米国にべったりしているからこそテロ組織に狙われる可能性がある。やたら危機感をあおって対外情報機関をうんぬんする以前に、日本がどういう外交方針をとるのかが問われているはず。順序が違うのではないか」
軍事評論家の神浦元彰氏は「今の政治システムでは、諜報(ちょうほう)機関が設けられても、権力者側がこれを使って政敵の失点を探ることもできるし、自分のポイントになるように情報操作をすることもできる」と問題点を指摘しながらこう訴える。
「最近のテポドン動向も完全に米国の情報におんぶにだっこ。これでは自前の組織ができたとしても、結局、CIAの日本の出先機関になりかねない。確固とした国家戦略を持たなければ、諜報部員を政治家のだれも使いこなせないでしょう」
<デスクメモ>
トム・クルーズ演じる映画「MI3」の主人公は任務に出掛ける際、婚約者から「何やってるの?」と詰問される。同僚も「スパイに結婚は無理」。日本版CIAも大変だ。ただカミさんに「実はオレには重要な任務が…」と言えば何かと便利では。うそがばれた場合、自動的に消滅させられるかもしれないが。(蒲)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060704/mng_____tokuho__000.shtml
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