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「コーポレート・ガバナンス」欺瞞の三角形・福井スキャンダルの深層 【NET EYE 田村 秀男 編集委員】
http://www.asyura2.com/0601/senkyo23/msg/485.html
投稿者 レイ 日時 2006 年 6 月 30 日 00:12:38: mRt2rX4ca0PnA
 

 表向きは証券取引法違反容疑だが、村上ファンド事件の裏の構図は村上世彰容疑者、福井俊彦日銀総裁とオリックスの宮内義彦会長を相互に結ぶ「欺瞞(ぎまん)の三角形」である。欺瞞は「コーポレート・ガバナンス」から派生した。

 横文字を置き換えたカタカナ言葉は流行すると、ときとしていかがわしさの温床となる。日本語を強引に当てはめたところでなかなかこなれない。定義があいまいなのをいいことに目端のきいた有力者が自分流に広げれば社会を支配することもある。


米国では「買い占めに対抗する防衛側の手段」

 「企業統治」の訳語がある「コーポレート・ガバナンス」がまさしくそれである。コーポレート・ガバナンスとはその本家米国では乗っ取り屋や攻撃的な投資ファンドによる株の買い占めに対抗する防衛側の手段である。投資ファンドが「ガバナンスの悪い」企業を標的に株を買い占めるのは、それこそ強盗が押し入った家の者に「財産管理が悪い」と説教して強奪するようなものである。  


 日本では村上世彰容疑者が「コーポレート・ガバナンスの徹底により日本を変える」と言い出し、当時富士通総研理事長だった福井俊彦氏は心の底から賛同した。福井氏の悲劇は日銀総裁になってもこの2月までは村上ファンドへの資金運用委託を解約しなかったことよりも、いまだに村上容疑者の「当初の志」が正しかった、と信じているところにある。

 「コーポレート・ガバナンス」に焦点を合わせて事件の構図を探ると、核心を握る人物として浮上するのはオリックスの宮内義彦会長である。宮内氏は1999年の村上ファンドの中核会社であるM&Aコンサルティングの立ち上げに全面協力した。村上容疑者が2000年1月にはその第一弾のコーポレート・ガバナンス徹底のためと称した企業買収の標的に東証二部上場の昭栄の株式の公開買い付け(TOB)に乗り出したときは宮内氏が資金協力を約束した。


「株買い占め」と「モノ言う株主称揚」の狭間に

 宮内氏は2002年にはコーポレート・ガバナンスを担う社外取締役制度を普及させるため、「日本取締役協会」を設立し、ソニーの出井伸之最高顧問ら企業経営者や竹内弘高一橋大学大学院国際企業戦略研究科長ら学者を組織する一方で社外取締役の登録とあっせんに乗り出した。

 宮内氏はまさしく日本流の「コーポレート・ガバナンス」の伝道師とも言える。宮内氏はこの当時、「企業統治には二つの方向がある。一つは最高経営責任者(CEO)が率先して実行する。もう一つは株主の圧力で、株価のためなら仕方がないといって取り組むケースだ。でも日本では機関投資家が目覚めていない。株主として声を上げているのは村上君(M&Aコンサルティングの村上世彰容疑者・前代表)くらい」(2002/02/15, 日経産業新聞)と語っている。


 この発言が示すように、宮内氏は村上ファンドによる株の買い占めが企業統治を促すと考えたからこそ、村上容疑者を「モノ言う株主」として称揚したのだろう。宮内氏は日本取締役協会会長として村上ファンドが阪神電気鉄道に六月の株主総会で取締役選任を求めたことに対しても「株主の権利としては理解できる」と擁護している(2006/05/12, 日本経済新聞朝刊)。


 だが、筆者がこれまでに米国の経営者や専門家から取材したコーポレート・ガバナンスの定義は明らかに異なる。米国流コーポレート・ガバナンスはきわめて単純明快で、株の買い占めファンドを排除することはあっても受け入れることはない。

 コーポレート・ガバナンスとは、1980年代半ばから後半にかけて米国で台頭した企業の乗っ取り屋や攻撃的な株の買い占め屋に対抗するために経営者が考え出した概念である。株主価値を高める経営に努め、一般の株主の離反を防ぐのが目的である。株を買い占める投資ファンドがコーポレート・ガバナンスを武器にするのは一種の倒錯である。


 投機的な投資ファンドはもとより機関投資家ですら、経営戦力にまで口をはさむのは米国では逸脱行為とされ、むしろ株主価値を危機にさらすと考えられている。ついでに言えば、社外取締役の基本的な役割は米国では株主価値を高める最高経営責任者(CEO)の後継者選出であり、日常の経営そのものには参加しない。


「言葉の誤用」で国の進路誤る危険も


 もちろん、「日本型コーポレート・ガバナンス」があってもよい、という反論が出そうだが、買い占めを主業務とする投資ファンドの目的は一般的な株主価値よりも投資ファンドそのものの利益を優先するのだから、株主価値増大を目的とするコーポレート・ガバナンス本来の意味と相反する。

 この点は村上ファンドのこれまでのいきさつが証明している。繰り返そう。村上ファンドはインサイダー取引をしなくても、コーポレート・ガバナンスを口実にする限り、欺瞞そのものである。村上容疑者が開き直ったときに口走ったように、素直に「金もうけのためのファンド」、と終始言えばよかった。

 福井日銀総裁はしかし、「コーポレート・ガバナンスの徹底化」という宮内氏や村上容疑者の言説を信じ、村上ファンドを支援し続けた。さらに福井総裁は2001年に村上ファンド内で拠出先を移し替え、オリックスが「業務執行組合員」を務める投資事業組合と契約し直した。そこ結果、2003年3月に日銀総裁に就任しても解約のタイミングを見失い、現在のように日銀総裁としての信頼性を大きく損なわせる結果になってしまった。


 金融政策のプロとして思慮深い半面で意外と直情径行型の面もある福井氏は言葉を操る人々に騙されたのか、それともコーポレート・ガバナンスという言葉の拡大解釈と乱用に幻惑されたのか。

いずれにせよ、欺瞞の被害者になるのは福井総裁に限らず、政治を含む日本の指導者全体に広がる可能性すらある。インサイダー取引は罰して排除すればよいが、指導層が言葉の誤用に惑わされてしまっては日本の針路がゆがんでしまう。「コーポレート・ガバナンス」そのものを再整理して日本の企業社会を欺く手段に二度としないようにするのが、村上ファンド・福井日銀総裁事件の教訓ではないか。

http://www.nikkei.co.jp/neteye5/tamura/index.html

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