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【めでぃあ・オフノート2006】
▼1379号から1384号まで、西山太吉インタビュー「「密約」が
いまの日米関係の起点だった/沖縄返還交渉という虚像」(「
世界」2006年5月号)を転載したが、西山太吉第2弾。
「琉球新報」5月15〜17日付で3回にわたって連載された「日米
軍事再編 沖縄返還の今日的意義」を、西山さんの快諾を得て
転載する。
アメリカの話題って本誌では伝統的に人気がないんだが、まあ
、しつこくやりますよ。
琉球新報5月15日付12面文化欄
日米軍事再編 沖縄返還の今日的意義<上>
西山太吉
最大規模の同盟変革
34年前の秘密手法 再び
いま、ほとんどのメディアが呼んでいる「米軍再編」は、実の
ところ、「米軍再編」といわれるべきものではなく、「日米軍
事再編」ないしは、「日米軍事共同体の結成」といわれるべき
ものである。
今度の場合、在日米軍と自衛隊の「一体化」を認めた上で、一
部の米軍基地のリロケーション(再配置)を実現しようとする
防衛庁主導のいわゆる“トータル・パッケージ方式”による対
応で事が運ばれた。
小泉首相は、任期も残り少なくなったいま、この問題について
、リーダーシップを発揮しなかったともいわれているが、この
“真空”時間帯の中で、“日米同盟”強化至上主義をモットー
とする小泉内閣を基盤に、防衛庁が、かねてから狙っていた“
同盟の変革”に突き進んだというのが実情であろう。
▼決定的な転機
ローレス米国防副次官が、いみじくも述べているように、いま
、まさに「沖縄返還以来、最大規模の日米同盟の変革が、実行
されようとしている」のである。このような基本認識の上に立
って、問題をとらえ、その本質を究明していかなくてはならな
い。
額賀防衛庁長官が、最終報告のあと、「米側に対し、日米安保
の新しい枠組みについて、議論するよう提案した」と語ってい
るように、日米安保体制は、これまでたどってきた一連の変質
過程から、さらに、大きく抜け出して、決定的ともいえる転機
を迎えようとしている。
つまり、日米安保は、「日本本土と極東の平和と安全の保持」
を目的とした当初の防御的性格から完全に脱して、主として、
中東を中心とした「不安定の弧」(注・米国の立場からの規定
)をにらんだ米国の世界軍事戦略の基軸へと変化しようとして
いるのだ。
「最終報告」の冒頭でも、とくに強調されたのは、“中国脅威
論”ではなく、「日米閣僚(注・2プラス2)は、イラク及び
アフガニスタンを再建し、これらの国々において民主主義を強
化するとともに、より広い中東における改革の努力を支援する
ための、日米の努力の重要性に留意した」とあるように、いわ
ゆる米国流民主主義を中東全域に輸出しようとする“逆ドミノ
理論”の高らかな“宣言”であった。
この理論は、失われたイラク戦争の大義名分を再構築するもの
として、持ち出されてきたものであるがその有効性が、いかに
もろいものであるかは、すでに泥沼の様相を呈しているイラク
情勢が如実に物語っている。にもかかわらず、最終報告には、
それへの反省など、みじんもない。
▼歴史は繰り返す
それにしても“歴史は繰り返す”というが、今回の日米軍事再
編の動きをみていると、まさに、あの沖縄返還時の手法そのも
のの再現といっても、決して言い過ぎではない。
いや、“繰り返す”というよりは、あの当時、まいたタネが、
その後、芽を出し、どんどん成長して、この手狭な庭園の中で
、必要以上に、深く、広く根を張りめぐらすほどの巨木として
もはや、ちょっとやそっとで動かすことのできない存在にまで
なったといったほうがよい。しかも、この巨木の周囲には、“
立ち入り禁止”の柵が張りめぐらされた感すらする。
これまで、二度にわたって公開された米国の外交機密文書さら
には、先に、世間を驚かせた吉野文六元外務省アメリカ局長の
証言にみられるように、米国は、沖縄返還に際し、二つの基本
方針でのぞんだ。
一つは、巨大な沖縄の軍事基地の自由使用であり、ほかの一つ
は、基地関係諸経費の日本側による肩代わりの推進である。
この二大方針に基づいた米側の強い要求に対し、日本側は、大
幅な譲歩をもって応じ、対米コミット(約束)を国内に流した
場合の摩擦や混乱を避けるため、あるものは隠し、また、ある
ものはウソをつくといった外交史上、例のない情報操作を繰り
広げ、交渉成果の“美化”(吉野証言)に奔走したのである。
▼空手形
例えば、“核抜き”の問題では、それを「永久秘密」とするこ
とをあらかじめ想定してか、正式な外交ルートとは別に、「密
使」をもって衛に当らせ、表向きは“核抜き”をうたいながら
、裏では、緊急時における核の沖縄への持ち込みについての日
米両首脳による秘密合意議事録の署名という政治犯罪をやって
のけた。
また、返還後の米軍基地の扱いについても、「返還が先決であ
り、そのため実質的な話し合いは、ほとんどしなかった」(吉
野証言)にもかかわらず、「都市部を中心に、基地の整理縮小
を推進する」と宣伝し、「基地返還リスト」を公表したのであ
る。
これがいいかげんな“空手形”であったことは、三十数年たっ
たいま、沖縄の米軍基地が、日本全体の米軍専用基地の75%を
占めているという事実が証明している。
▼思いやり予算原型
財政面では、米側支払いの形をとったVOA(ボイス・オブ・
アメリカ)の沖縄外への移転や米軍用地の復元補償などを対米
支払い三億二千万ドルの中に含める一方、
今日の「思いやり予算」の原型ともいえる米軍施設改良・移転
工事費、六千五百万ドルを地位協定から、はみ出していること
と対米支払いの増大につながる(米外交機密文書)という判断
から、ついに、発表しないまま実行に移し、
さらに、円をドルに交換して、無利子のまま、米国に自由に使
わせて一億一千万ドル以上の便宜供与を実施したことも公表し
なかった。
以上の一部すなわち、対米支払い根拠の偽装と復元補償の肩代
わりや、六千五百万ドルの件は、返還時に暴露された電信文中
に明記されていたが、ほかの問題も、すべて米外交機密文書に
より詳細が表面化し、吉野氏もこれを追認したのである。
×××
沖縄が日本に復帰してから十五日で三十四年。日米は一日、在
日米軍再編の最終報告について合意した。沖縄返還時の密約を
報じた元毎日新聞政治部記者の西山太吉さんに、今回の在日米
軍再編と沖縄返還時の日米交渉を比較してもらい、日米同盟の
今後を論じてもらった。
(つづく)
http://www.emaga.com/bn/bn.cgi?7777
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