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「複数放送局への出資制限を緩和」(通信・放送懇)に重大な問題あり。
6/7日経記事には、「複数放送局への出資制限を緩和」の短い項目がある。
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『放送メディアの歴史と理論』
(木村愛二、社会評論社、2005)
●「独占集中排除」のおざなり堤防は完全に決壊状態
「規制緩和」の基本的な本質は、すでにアメリカの実例で示したように「弱肉強食」のジャングルの掟の容認である。その典型は、一九九四年二月初旬に発表された東京の「調布ケーブルテレビ」の例にもみられる。総合商社で売上げ第一位の伊藤忠商事が、会社更生法適用中の名門映画会社「にっかつ」所有の株四三・二パーセントを買収し、既得株と合わせて七二パーセントの出資比率を占めるに至ったのである。
外国企業の進出についても「規制緩和」の方針だ。「外資参入」の出資比率に関しては「法律などで決めることはしないが、三分の一未満までをメドとして認めることになるだろう」(『日本経済新聞』一九九三・一二・一〇)という郵政省事務次官の記者会見発言がなされ、以後、その方向にすすんでいる。
だが「法律などで決めることはしない」という一見、物分かりがよさそうでいて、実は典型的な官僚的独断専行は、ラディオ放送の発足当時と同様の策略であり、曲がりなりにも国会の立法権につながる市民の権利への重大な侵害をはらむ。今までにも侵され続けている言論の自由が、法治国家の建前さえかなぐり捨てた「弱肉強食」政策によって、さらに大規模に破壊されるのだ。
既存の地上波による民放テレヴィ局が免許を獲得し始めた時期には、言論機関の「独占集中排除」の行政指導があり、「一社」よりも広い概念の「一グループ」による出資比率が「一〇パーセント以内」に抑えられていた。ところが以後、大手新聞系列などによる放送支配は進行し、「放送の多元化」を理由に一〇パーセントを超える株式取得も野放し状態になってしまったのである。CATVの場合、郵政省は発足当初に「地上波が届かない地域向けの補完的なメディア」と位置づけた。最近では、「高度情報化社会を担う中核的なメディアとして期待される」と言い換えることによって、次世代通信網につなげようとしている。そうだとすれば、「中核的なメディア」に関する「独占集中排除」の議論も、ふたたび腰を据えてやり直すべきであろう。
民放労連が一九九一年に定期大会で決定した「視聴者のための放送をめざす民放労連の提案」では、「マスメディアの独占集中排除」の一環として特に新聞社による系列支配の実情を重視し、「一つの新聞社が特定の放送局の株を所有する場合は五%以内とする」としている。
たとえば銀行の不動産会社への出資は、やはり五パーセント以内に抑えられている。郵政省が本気で「独占集中排除」するつもりだったら、最初から「一〇パーセント以内」ではなく「五パーセント以内」の行政指導をしたはずなのだ。ところが、調布ケーブルテレビの例のようにCATVという有線メディアの一角で、大手新聞社よりもはるかに巨大な多国籍企業の総合商社による七二パーセントもの株式所有が許されているのである。アリの穴から堤防が破れるというが、それどころの話ではない。「マスメディアの独占集中排除」のもともと手抜きだらけでおざなりなつくりの堤防は、完全に決壊したも同然である。
[後略]
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