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「共謀罪」創設問題は、自民・公明両党が民主党の修正案を全面的に受け入れると表明し、採決とも伝えられたが、二日、一転して継続審議の見通しとなった。小泉首相の得意技“丸投げ”ならぬ、与党は“丸のみ”戦術も駆使したが、野党側の抵抗で迷走状態に。共謀罪創設には反対の世論が盛り上がり、与党側も抗しきれなくなったようだが、与党側が「丸のみ、のち迷走」に陥ったわけは?
審議入りで紛糾した衆院法務委員会が始まったのは、二日午後六時。民主、社民など野党の姿はなく、議席には与党議員だけ。
保坂展人議員(社民)は「丸のみは自民党の巧妙な戦術。仮に共謀罪が成立して批判を浴びても、悪いのは民主党だと言い抜けるつもりだ。大成功のつもりが、口が軽い人がいたばかりに台無しになったのかな」と話し、引き揚げた。
委員会では、西川公也議員(自民)が、前日の理事会まで採決の約束ができていたが、当日になり野党の理事が態度を翻した事情を説明。憤まんやるかたない表情で「理解できない状況だ。私たちは野党の案に賛成すると言っているのに、なぜ困るのか」と述べた。
与党案を提出した早川忠孝議員(自民)も法案提出後の五月中旬から再三にわたり野党側と法案のすりあわせを行った経緯を説明。
麻生太郎外相の代理で出席した塩崎恭久外務副大臣が外相のメッセージを読み上げたが、その後、突然、立ち上がった石原伸晃委員長が声を出さずに「お、わ、り」と口パク、さらに右手を顔の前で振って、いぶかる議員たちの視線をさえぎった。顔を見合わせる議員たちを尻目に、理事は懇談会のため隣の部屋に。開会まで五時間もかかった委員会は、わずか十五分で終了した。
開会前には、松島みどり議員(自民)が「今日は強行採決をやるよ。民主党案を自民党が強行採決するんだから前代未聞だ。歴史的な日にする」とまくし立てたが、結局、結論は先延ばし。前日からのドタバタ、迷走状態を象徴した。
ではなぜ、野党案を丸のみしてまで共謀罪法案を成立させようとするのか。
■法案成立優先 中身問わず?
共謀罪法案は国連で採択された国際組織犯罪防止条約の批准に必要な法整備と位置づけられている。小泉首相にとって最後となる来月の主要国首脳会議(サミット)や訪米を控え、「手みやげ」にしたいという思惑も透けて見える。
政治評論家の小林吉弥氏は「国会を会期通りに終わらせ、安倍後継の支援態勢づくりに向け早くフリーハンドを得るための策」と総裁選絡みとの見方をする。
そもそも与党は、民主党案では「条約の批准ができない」と主張してきたはずだ。にもかかわらず、民主党案丸のみという“奇策”に出た。「要は法案を成立させればいいというだけで、共謀罪の中身はどうでもいいということだ」と政治評論家の森田実氏は厳しく批判する。
「与野党で議論して、修正点を詰めていくなら分かる。しかしそんな手続きもなく、手のひらを返すように無原則に野党案を丸のみしようとするのは、国会の権威を失墜させるものでしかない」
この奇策、実際に行われた前例もある。
一九九八年、日本長期信用銀行(当時)の経営不安をきっかけに高まった金融不安にどう対処するかが焦点となった「金融国会」で、自民党は民主党提出の金融再生法案を丸のみし、成立にこぎ着けた。
当時、民主党事務局長を務めていた政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「この直前に行われた参院選で大敗を喫し、参院での与野党逆転を許した自民党は、民主党案を採用しない限り法案を通せない状況に追い込まれていた」と振り返る。
しかし、この「丸のみ」後、小渕政権は自由党、次に公明党を政権に取り込み、参院での少数与党状態を解消していく。結果的に、丸のみが政権浮揚のきっかけをつくった形だ。
■『凍結』し提出 後から解除…
また、法案成立後、自分好みに改正するという戦術もあった。メディア規制法案と批判された人権擁護法案に関する自民・公明両党の協議で、数年前、話し合われたという奇策だ。
焦点となっていたのは、政治家への取材規制につながるとされたメディア規制条項。批判をかわすため、同条項を「凍結」して国会に提出するのか、凍結せず提出するか。関係者によると、同法案成立にこだわる自民党大物議員が、こう言ったという。「まあ、まあ。凍結して法案提出しましょう。成立してから凍結を解除しちゃえばいいんだから」
与党が衆参両院で安定多数を占めている現状は、小渕政権当時とは異なる。巨大与党から、「丸のみしたい」と提案を受け、民主党は、拒絶しにくい状況に陥ったともいえる。
事実、野党関係者は丸のみ案が示された一日夜、「与党は民主党が次々条件を出しても妥協する意向を示している。今や民主の意見は何でも法案に反映できる情勢だ」としたうえで、苦しい胸中をこう吐露した。
「これは罠(わな)なんです。明日(二日)、衆院法務委員会が開かれても、政府側は『受け入れられます』という確定的な答弁を避け、『民主党案が国連で受け入れられるよう努力します』と答弁するだろう。ここがミソで、民主党案成立後、『これでは国連の納得が得られなかった』と言い出し、法務省原案に近づく改正をするに違いない。その場合、共謀罪成立に手を貸した民主党は世論から袋だたきにあう。だから、政府与党にとっては一石二鳥の罠なんです」
さらにこう続けた。「民主党案でよいというなら、これまで政府原案や与党案の方が優れている、民主党案は欠陥だらけだと言ってきた国会答弁は、国民向けの虚偽答弁だったことになる。そうした説明責任も追及しないまま丸のみ案に乗ってしまってよいのか」
前出の伊藤氏も「社民、共産両党との共闘を分断されるマイナス面と自党の案をのませたというプラス面のどちらをとるか、党内にはかなりの戸惑いがあった」と解説する。
しかし、麻生外相が二日午前、「民主党案のままでは条約の批准はできない」と蒸し返したため、民主党側が自民党との協議を拒否する姿勢に固まった。
■三権分立違反 法相に抗議も
さらに、野党側が“憲法違反発言”と呼ぶ杉浦正健法相の“ある発言”も、野党を活気づけた。杉浦法相は五月二十三日の記者会見で、「今国会中に一日も早く可決してもらいたい。審議は尽くし、機は熟している。国対が腹を決めれば(採決は)すぐにできる」と述べた。これに野党側が反発し、民主、社民が共同で法相に抗議する事態を引き起こした。
野党議員は「共謀罪の法案は、法務省が作った政府原案、自公両党の与党修正案、民主党修正案という三種類があるが、政府原案が提出されたのが発端であり、行政府(法務省)は、立法府(国会)に審議をお願いする立場。法相の発言は、憲法の三権分立原則を踏みにじるものだ」と話す。
それにしても今回際だったのは自民党のドタバタ劇。ここから見えてくる小泉政権の全体像を前出の小林氏はこう表現する。
「小泉政権はもはや政策論争に力を入れようという気持ちを失っている。政権の末期症状がはっきり露呈した」
<デスクメモ> 自民党の細田国対委員長は、丸のみ戦術を自らの頭文字を取って「ウルトラH」と自画自賛したらしい。しかし、その後の迷走ぶりをみると、五輪の体操でも「ウルトラE」までしかないのに、その上の「H」とはならなかったようだ。継続審議のようだが、もしかしたらこの「H」、「廃案」の頭文字かも。 (透)
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