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http://list.jca.apc.org/public/aml/2006-May/007037.html
[AML 7367] 共謀罪・政府・与党の国会答弁の「嘘」と矛盾
toshimaru ogura ogr at nsknet.or.jp
2006年 5月 28日 (日) 12:08:48 JST
小倉です。この間の共謀罪についての政府答弁と、これまでの共謀罪についての
政府の見解の間に見過ごせない矛盾やごまかしが目立ち始めています。つまり、
第一に、共謀罪はいつのまにか「テロ対策を中心」とする法律ということになっ
てしまっているが、法案提出の理由に反するし、条約の国内法整備とも関係ない
話だ。
第二に、国会答弁ではあいまいな合意でも共謀であると認めているのに、法務省
のウエッブでは明確な合意がなければ共謀ではないと書かれている。国会審議を
傍聴したり、会議録を読んだりしないマスコミや世論の眼をごまかす体制になっ
ている。そもそも法案審議の前提となる法や条約解釈が支離滅裂で、一貫性がない。
条約、国際法については、海渡雄一さんの分析参照
http://www.labornetjp.org/news/2006/1147857272292staff01/view
====================
http://alt-movements.org/no_more_capitalism/modules/weblog/details.php?blog_id=55
政府・与党の国会答弁の「嘘」と矛盾
「嘘は泥棒のはじまり」とすれば、泥棒取締りのトップが嘘をついているという
ことになると、いったいどーゆーことになるんだ?
共謀罪をめぐるこの間の政府・与党の国会答弁における事実のねじまげや自己矛
盾には目に余るものがある。しかし、嘘やごまかしの答弁それじたいのなかに共
謀罪になぜこれほどまで執着するのか、その政府側の本音を読み取ることができる。
杉浦正健法務大臣(弁護士であり、自民党憲法改正プロジェクトチームの座長で
もある)はこれまで繰り返し共謀罪の立法意図を次のように主張してきた。
4月28日の衆議院法務委員会での答弁
「戦前の治安維持法は別にして、この法律は、テロ対策で条約を国際的な場でつ
くったわけですね。そこで日本も参加して条約をつくった。国際間で協調してテ
ロ対策をやろうじゃないかというのが出発点でございまして...」
5月23日の記者会見
「要するに二つの条約,組織犯罪防止条約とサイバー条約,この二つの条約を施
行するための国内法だと。これはいずれもテロ対策を中心にして,組織犯罪とど
う戦うか,サイバーの方はいわゆるコンピューターウィルス,これを国際的な枠
組みで,防除しようというわけで。」
「テロ対策が主になって,国際社会で協調してやろうということですから,共謀
罪を一部組織犯罪,重大な組織犯罪についてだけ導入するわけです。一般国民に
は全く関わりのない導入なので,世間には,まだ,一部誤解されている向きがあ
るけれども,いずれその誤解は解消する」
法務大臣が強調してやまない共謀罪(とコンピュータ監視法案)は「テロ対策を
中心」「テロ対策が主」というのは本当だろうか。これは明らかに間違いであ
る。共謀罪は「一般国民には全く関わりのない導入」だということを主張するた
めにはテロ対策だと言い訳する以外にないために、意図的に事実をねじ曲げた嘘
の答弁を繰り返しているとしか思えない。非常に悪質なのだ。
共謀罪法案の提案理由は、「近年における犯罪の国際化及び組織化並びに情報処
理の高度化の状況にかんがみ、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の
締結に伴い、組織的な犯罪の共謀等の行為についての処罰規定、犯罪収益規制に
関する規定等を整備する...」ということであって、テロ対策は関係がないの
だ。「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」について外務省『外交青
書2004年版』では「組織犯罪を防止し、これと闘うための協力を促進する国
際的な法的枠組みを創設するものである。」と説明されており、「特に、米国同
時多発テロ発生以降は、国際組織犯罪対策の知識や経験をテロ対策に効果的に役
立てるという観点から、 G8テロ対策専門家会合であるローマ・グループとの合
同会合が開催されている」というように、テロ対策は条約の趣旨とは別枠の話な
のだ。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2004/hakusho/h16/html/G3341000.html
しかもそもそもの条約では、「組織的な犯罪」を次のように定義している。
「三人以上からなる組織された集団であって、物質的利益を得るため重大な犯罪
または条約によって定められる犯罪を行うことを目的として一体としてこうどう
するものをいう」(「条約説明書」より)
「物質的利益」を得ることを目的とするわけだから、政治的宗教的な目的をもつ
テロ組織はそもそも対象外なはずだ。
昨年10月28日(163国会、法務9号)の南野法務大臣の答弁では、条約の
主旨が物質的利益に限定されていることを確認しているのだが、他方で、昨年7
月12日(162国会、法務26号)の大林刑事局長の答弁では、猥褻物を手に
入れるのも物質的利益(対価として金を得るからではなく、性欲を満たすからだ
そうだ)だと述べて、「現実的には純粋に精神的な利益のみを得る目的の犯罪等
が除かれる」だけだという想像を絶するこじつけによって、テロ組織も「物質的
利益」をえるものとして条約の趣旨にそうものとみなそうとして苦慮している。
しかし、逆に、こうした政府のこじつけは、非物質的な利益である宗教、政治、
人権、環境などを活動分野とする団体を網にかけたいという意図が露骨だ。
他方で、共謀罪の適用範囲についても、国会答弁と法務省のウエッブでの説明に
は大きな違いがある。
5月19日の法務委員会で与党公明党の漆原良夫議員(彼もまた弁護士なのだ
が、嗚呼!)は次のように述べている。
「共謀が行われたという嫌疑があるのであれば、犯罪が行われた嫌疑があるとい
うことになりますので、仮に、共謀行為はなされたものの犯罪の実行に必要な準
備その他の行為は行われていない段階でありましても、法的には逮捕をすること
は可能」
また、共謀だけで現行犯逮捕もありうるとも述べている。そして、杉浦法務大臣
もまた「共謀には必ずしも明白な意思表示をしたものだけではない部分もあり得る」
要するに、明白な意志表示のないばあいでも共謀が成立ち、しかも「共謀」段階
で、逮捕ができる。現行犯逮捕なら令状もいらないのが悪しき慣例なので、こう
なってしまうと、まさに警察のやりたい放題そのまんまではないか。
しかし他方で、法務省のウエッブでは
「そもそも「共謀」とは,特定の犯罪を実行しようという具体的・現実的な合意
をすることをいい,犯罪を実行することについて漠然と相談したとしても,法案
の共謀罪は成立しません。」
と述べられており、ウエッブしか読んでいない人は相談しただけで罪になるとい
う「市民運動」の宣伝の方が間違っていると勘違いしてしまう。(うまいやりか
ただ)国会答弁ではあいまいな合意でも共謀罪が成立すると述べているのとはか
なりニュアンスがことなる。これほど重要な論点で与党側の説明に大きなずれと
矛盾があるということは、そもそも法律そのものがあいまいだからだ。「共謀」
というあいまいな行為を犯罪化する矛盾がここに如実に表れている。「共謀罪」
の立法化の本質は、共謀罪で立件するかどうかは現場の捜査機関と裁判所が勝手
にきめられるということ、つまり解釈の多義性を前提として、法によって法執行
機関が支配されるのではなく、法執行機関の権力行使の手段として法を自由にあ
やつり、人々のさまざまなコミュニケーション、とりわけ反政府的、反社会的な
言論そのものを犯罪化して規制することなのだ。
こうしてみると、共謀罪には二重の基準があることがわかる。
(a)共謀罪は、条約の要請から一般の犯罪取締りという側面を持たせている。
したがって、文字どおり喫茶店の目配せが犯罪になりうる。なにをもって「共
謀」と判断するかは捜査機関の裁量にゆだねられる。
(b) 共謀罪は、刑事犯罪のための法執行機関の権力行使を911以降の「テロ対
策」に転用している。「テロ」の定義は、日本政府も含めて確立されておらず反
政府的な活動全般を「テロリスト」の活動とみなす傾向がある。刑事司法のよう
に対象を特定して捜査するのとちがって、不特定多数を監視しコントロールする
ことをそもそもの基本的な性格としている国家安全保障対策としてのテロ対策が
刑事司法の分野に入り込むことによって、無差別に人々を監視し抑制する傾向が
ますます強まる。
組織犯罪の規定から「物質的利益を得るため」を排除し、その結果、物質的利益
を目的としない団体の違法行為が取り締まり対象に入れられたのも「テロとの戦
争」体制下での刑事司法の国家安全保障への統合という目論見として理解されな
ければならないだろう。
政府・与党の態度には首尾一貫したものはない。明らかに議会と民衆を愚弄する
詭弁と嘘とその場しのぎの言い訳に終始するものであって、道義的にも許せるも
のではない。こうした政府・与党の態度それ自体がこの共謀罪の本質を表してい
る。結局、共謀罪で与党・政府がやりたいことは、法執行機関に予防検束を含め
て最大限の捜査と逮捕権限を与え、大量の個人データを収集して監視できる法的
な裏づけを得たいということにつきる。修正協議なんて論外である。廃案以外に
ないのだ。(27日午後6時加筆)
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