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『SPA!』2006.05.23号
「ドン・キホーテのピアス」 鴻上尚史
今、まさに成立しようとしているトンデモナイ法律
なんだか、どんどんやばい方向へ行っているなあという気がしています。
というような文章は、本当は書きたくないわけで、やっぱり、ノンキな文章の方が、書く方も読む方もいいわけです。
「『恋愛戯曲』の稽古をしていると、体がどんどん恋愛体質になっていく。稽古場までのバスの中に、途中にある女子大の生徒達がたくさん乗ってくる。20歳前後の娘の匂いに、おいらは、全開する。バス停5つ分で、毎日、違う女の子に一目惚れして、バスを降りながら別れを告げる」
なんつー、ノンキな文章の方が、間違いなく春っぽくていいわけです。
ここで『共謀罪』について書くのは、自分でも嫌だなあと思うわけです。思うんですが「今週にも成立か!?」なんてニュースで言われていると、「どうしてこんな世の中になっちまったんだい」と激しくのけぞってしまうのです。
問題点は、ちょっとネットで調べてみれば、すぐに分かります。
「国際的な組織犯罪に対抗する」という名目で、どうして、国内で600近くの犯罪に、「共謀罪」が適用されないといけないのか。
「犯罪組織」ではなく、ただの「団体」も対象になりますから、NGOや市民団体が、「公害をまき散らすあの企業に実力行動を起こそうか」と相談しただけで、実行しなくても、罪になる(!)のです。
個人も、2人以上が相談すれば、「国際的な組織犯罪」とはなんの関係もない相談の数々が「共謀罪」になります。セクハラ課長を会議室にとじこめてしまおうかという相談も、CDをコピーして売ろうかという計画も、実行ではなく「相談」しただけで、罪になるのです。
相談も、「目配せした」「その場で具体的に反対しなかった」というレベルで成立するんだと言われたら、「本気なのかい?」と突っ込みたくなります。
誰だって、いけないことを夢想する瞬間はあります。「車で飛び込んだろか!」と首を切られた会社に叫ぶこともあります。それが、2人以上の場所で言えば、罪になるのです。
そんなバカなとあなたは言うでしょう。
問題は、「警察は、それを罪にすることができる」ということです。ですから、ある人を逮捕したい時は、その人の発言、電話での会話をちゃんと記録・盗聴していればいいのです。人間、どこかで、不道徳的なことを言うものです。
その時、「共謀罪」は成立するのです。
この法律で、この国はますます息苦しくなるでしょう。
だって、相談を「実証」するためには、盗聴も尾行も、もっとたくさんやらないといけなくなりますからね。
誰が、自分の不道徳的な発言を覚えているんだろう、誰に聞かれたんだろう、と、みんな、びくびくしながら暮らすことになるのです。
この原稿を書いている時点で、自民党は、民主党との修正協議をしていますが、自民党が修正をもちかけた理由が、「小沢新代表になったから」だと、これまたニュースで言ってました。
だとすれば、「小沢代表じゃなかったら、あっという間に成立していたのか」と震えます。
二度、廃案になった法案は、圧倒的な自民党政権で、強行採決されるのではと、現時点で言われています。
あなたが、もし小泉自民党政権に、前回の選挙で投票したのなら、この法律を作った一人は、あなたです。
ますます息苦しい国になっていく……
そして、もうひとつとんでもない法改正が実行されそうになっています。
6月1日から全国270の警察で、駐車禁止の取り締まりが民間に委託されるのです。
そして、1分でも現場を離れたら、問答無用で違反金を払うという制度がスタートするのです。
今までのミニパトのお姉さんがチョークで印をつけて、10分とか20分とか待って取り締まるのではありません。民間人が、とにかく、車から人が離れたらすぐに、「駐車違反」にするのです。
田舎の広い道でも都会の交通ラッシュの道でも、とにかく、現場を離れたら、ただちに違反金なのです。
完全に時代に逆行した制度です。
日本の警察の犯罪検挙率がどんどん低下している原因のひとつが、交通警察の反則金のノルマだということを、警察は分かってないのでしょう。
車の流れに乗って走っていたのに、突然、現れて切符を切る。ネズミ取りを頻繁にやる。病気などの緊急の停車なのに、「違反は違反だ」と言って切符を切る。
そういうノルマをあげるための繰り返しが、どれだけの警察嫌いを生んできたか。
刑事犯罪に対して「あんなひどいことをする警察に、絶対、協力してやるもんか」と思った人がどれだけいることか。
民間の「駐車監視員」とドライバーは、間違いなくもめるでしょう。そして、そこに警察は現れて、反警察感情は、ますます高まるのです。
どうしてこんな法改正が、問題なく通ったのでしょう。
中古電気製品に関するPSE問題は、ミュージシャンや中古販売商という”戦う主体”がはっきりとありました。
そして、それは、何ら政治的な主義を争う問題ではありませんでした。
ですから、非常にねじれた形ではありましたが、なんとか、悪法を悪法のまま成立・執行させることは阻止できました。
が、「共謀罪」は、政治的な主義の問題と国民には、誤解されています。
ですが、国民一人一人の問題です。
「駐車監視員」問題も、もちろん、国民の問題です。
いや、小泉自民党を支持した国民だから問題ないんだ、そういう国民なんだ、と言われればそれまでなんですが。
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