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(回答先: 【元公安検事も法案反対】 『共謀』の概念既に拡大 相談なしでも摘発―「東京新聞」特報 投稿者 天木ファン 日時 2006 年 5 月 24 日 08:51:20)
記者の目
失ってからでは遅い表現の自由=臺宏士(社会部)
◇批判逃れに分断図る政府−−メディア、重責自覚せよ
「憲法は、追求すべき目標を掲げた文書だ。現状を表現した文書ではない。改憲が現実的で、憲法擁護が非現実的だというのは間違っている」。評論家の加藤周一さんが今月、ある勉強会で語った言葉だ。加藤さんは04年に作家の澤地久枝さんらと「9条の会」をつくり、同条を堅持する重要さを訴えている。
日本国憲法の改正論議が盛んだ。最近は、改憲手続きを定める国民投票法案の動きが連日のように新聞紙面をにぎわせている。9条改正論議にならって、仮に表現や言論・報道の自由を保障した21条を「現状に合うよう」改正しようとする場合、どんな内容になるだろうと想像してみた。
沖縄返還協定の密約の存在が日米での証言や公文書によって明らかになる中、外務省は依然として密約の存在を否定し続けている。東京地裁は、読売新聞記者の法廷での証言拒否をめぐり、記者の生命ともいえる「取材源の秘匿」よりも、国家公務員法の守秘義務を重視する決定を出した。東京高裁は、自衛官の官舎にイラク派兵に反対するビラを投げ入れた市民に逆転有罪判決を言い渡した。自民・公明の巨大与党は、実行に移されてもいない犯罪を処罰するため共謀罪を新設しようとするなど、内心・言論の自由を制限する法律の制定に躍起になっている。昨年4月に全面施行された個人情報保護法を官僚らは不祥事隠しに悪用し、権力行使の実態は一層見えにくくなっている−−。
これが表現の自由をめぐる現状だ。一部の政治家らが言うように、憲法21条をこうした現実に合わせるために改正しようとした場合、どんな条文になるのか考えるだけでも空恐ろしい。実際、自民党は新憲法草案に、個人情報について「何人も不当に取得、保有、利用されない」と規定した。狙いは明らかだ。憲法が施行されてから60年目を迎えたいま、一人一人が21条の大切さを考えてほしい。
その際、押さえておきたいのは、権力側は自らに対する批判を大きな力にさせないため、巧妙に「メディアと市民の分断」「メディア同士の分断」を図ろうとするという点だ。
72年4月、沖縄返還に絡む外務省の密約問題に関連して西山太吉・元毎日新聞記者が国家公務員法違反(そそのかし)容疑で逮捕された。西山氏は71年、外務省の女性事務官からある電信文を入手した。そこには、沖縄の復帰に伴って、米国が本来負担すべき軍用地の原状回復補償費を日本が肩代わりする密約が記されていた。国会議員を通じ、国会の場で政府の姿勢を追及しようとした西山氏の逮捕に対し、「知る権利」を守る立場から支援の輪が広がった。だが、検察は起訴状で男女関係をほのめかし、取材手法への批判が強まった。
1審・東京地裁の裁判長を務めた山本卓さんは「日本にけしからん罪はない。感情では人を裁けない」と西山氏に無罪を言い渡したが、控訴審で有罪となり、上告は棄却された。TBS出身のテレビプロデューサー、吉永春子さんは「批判されるべきなのは政府の密約なのに、あっと言う間に世の中の空気が変わってしまった」と振り返る。
昨年4月に全面施行された個人情報保護法は、表現・報道の自由への制約が指摘されている。法律の制定過程で、政府・与党は、一部について報道機関の適用を除外したが、例示したのは放送局や新聞社、通信社だけで、出版社については明記しなかった。出版社は、報道ばかりでなく文学、実用書など多様であることから報道機関の典型例として適切ではないというのが、根拠とされた。これに対し、日本雑誌協会などは「政治家らのスキャンダルも盛んに取り上げる雑誌ジャーナリズムを規制し、メディアの分断を図るものだ」と反発する。
今年3月、共謀罪新設に反対する集会で、読売記者の証言拒否を認めなかった東京地裁の決定について、あるフリーライターは参加者を前に「ざまあみろ、と言いたくなる」と語った。
こうした発言が出てくる背景には、特に大手メディアは知る権利に十分応えていないのではないか、という不信感があると思う。政府・与党に、個人情報保護法などメディアに対する法規制や「分断」の口実を与えたメディア側の責任は小さくない。
表現の自由は、かなり危うい位置にある。平和と同様、失ってから大切さを実感するのでは遅すぎる。加藤さんの言うように、私たちが不断の努力で追求すべき「目標」なのだと思う。
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毎日新聞 2006年5月24日 東京朝刊
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