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http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060522/mng_____tokuho__000.shtml
音響機材を積んだトラックを先頭に、踊って行進する「サウンドデモ」。先月30日、フリーター団体が主催したこのデモで、音響を操作するDJが道路交通法違反容疑で現行犯逮捕された。従来は認められていただけに「表現の自由への侵害」という反発も強い。国民的論議となった共謀罪導入で、政府は恣意(しい)的な運用はないと釈明する。しかし、今回の件をみる限り、懸念は強まるばかりだ。 (田原拓治)
デモを主催したのは「自由と生存のメーデー06」実行委員会。昨年に続き、フリーター全般労働組合を中心に各種の団体が集まり、「フリーターのためのメーデーを」と開催した。
当日は、午後からJR原宿駅に近い神宮前穏田区民会館で集会を持ち、夕方から渋谷駅方面へ向けて約二・五キロのサウンドデモを予定。約百人が参加した。
「嫌な感じはあった。集会前から会館近くに私服警官が数十人集まって、参加者をビデオ撮影。しかもデモ規制の警官は、約百八十人で参加者の倍近くいた」と主催者の一人は語る。
勘は的中し、デモ開始からわずか十五分ほどで、先導の音響トラックの荷台でDJを務めていた三十代の団体非常勤職員Aさんが道路交通法違反容疑で逮捕され、その混乱で別の男性も公務執行妨害(公妨)容疑で逮捕。運転手は減点一の反則切符を切られ、トラックはその場で押収された。
サウンドデモは歩道からの飛び入りも多い。だが、この日は歩道側にも警官が並んで歩き、新規の参加者をブロック。渋谷駅前の交差点近くでは、同じく三十代の予備校講師Bさんが公妨容疑で逮捕された。
逮捕された三人とも五月十一日までに釈放され、トラックも押収された夜に返された。ちなみに三人とも特定の政治団体に所属したことも、逮捕歴もない。
■荷台に乗れるのは荷物見るときだけ
公妨容疑で逮捕された二人は「機動隊の盾に肩で突き当たった」などとする被疑事実を全面否定する。ただ、今回特異なのは、DJのAさんが道交法違反で身柄拘束され、家宅捜索まで受けているという事実だ。
Aさん逮捕の理由を原宿署の小宮正副署長はこう説明する。「道交法55条ではトラックの荷台に乗れるのは荷物を見る目的だけ。今回はそうではなく明らかに違反。しかも、警告に従わなかった。それでも軽微な犯罪で通常は現行犯逮捕には至らないが、今回は当人が名を名乗らず、逃亡の恐れもあると判断した」
同副署長は「表現の自由との兼ね合いで、音を出すなとか、デモを認めないというのではない。助手席での音響操作なら問題はないが、荷台上での違法な形態は認められない」と話す。
しかし、これまで都内だけでも、イラク反戦などをテーマに五回以上、同じ形態のサウンドデモが認められてきた。この点を聞くと「私個人はよく分からないが、新しい形態で検討が十分されてこなかったのではないか」と言葉を濁した。
今回もデモの許可申請は先月二十一日に出され、二十八日に都公安委員会と原宿署長が認めた。書面上、申請に細かなデモ形態の説明はなく、逆に許可の条件書にも「危険な物件を携帯しないこと」「交通秩序を乱す行為をしないこと」といった記述しかなかった。
ただ、原宿署へのデモ申請段階で、主催者側はサウンドデモをすると言明している。その後の経緯について、Bさんはこう語る。
「申請時、こちらはDJの人数には触れなかったが署の側から『それなら荷台の上は三人だな』と言われた。たしかに通常はその編成。でも、当日、デモの出発直前になって、署の人から『今日は荷台の上は一人にしてくれ。本庁はそれでなきゃ逮捕すると言っている。署としては何ともできない』と頼んできた。不満だったが、こちらも従って相手は感謝していた。さらに『機材を押さえる格好をしてくれ』と注文してきた」
デモ出発後、Aさんは当然レコードを回し、間もなく「警告」「道交法違反になる」などと印刷されたA4判ほどの紙が私服警官によって次々と示された。
Bさんはそのとき、助手席にいたが「警告は印字されていて、警察は事前に準備していた。車を止められ『窓を開けろ、開けないと割るぞ』と言われ、レンタカーだったので割られちゃ困るとすぐ開けた。そして混乱。DJが荷台から引きずり降ろされ、逮捕されてしまった」と振り返る。
ちなみにDJのAさんは名乗らなかったが、所持品には携帯電話や免許証もあり、身元はすぐに割れている。その点でも留置する必要があったのか、疑問だ。
三人は原宿、渋谷両署、警視庁と分散留置された。Aさんは「取り調べは一日二時間程度で、刑事に『表現の自由も分かるが迷惑だからな』『道交法で十日間も泊まりたくないだろう』と言われた」と語る。Bさんは「取り調べは一日二、三時間。黙秘したが、相手側の刑事もやる気がなさそうだった」と振り返る。
■DJ作業は「表現」 抵触するとは…
逮捕直後、事件を担当した浅野史生弁護士は「警察側が、最初からデモ参加者を敵視していた様子がうかがえる。サウンドデモは一般のデモより緩い形態。警察側は逆にそれが飛び入りを誘い、集団暴徒化しかねないという妄想を抱いたのだろう。でも、警告したとはいえ、DJを拘束することは表現の自由に対する過度の制限だ」と批判する。
一方、道交法違反と憲法上の表現の自由の関係をどう解釈すべきなのか。静岡大の笹沼弘志教授(憲法)は次のように解説する。
「憲法の表現の自由が当然、上位に置かれなくてはならない。それゆえ、多少の渋滞が起きてもデモは認められ、お祭りの際の道路封鎖が認められている。道交法の目的は、道路での危険防止と交通秩序を守ること。歩く速度の車の荷台で作業することが、それに抵触するとは思えない。むしろ、DJの作業は表現行為の一部だ。それを保証する観点が警察側にはない」
警察側の今回の対応が「デモのアピール力を恐れたゆえの道交法にかこつけた弾圧」(笹沼氏)だとすれば、委縮成果はあったのかもしれない。今回の事件を非難する今月十一日の集会には、デモ参加者を上回る百四十人が集まった。
しかし、Aさんは「また頼まれても正直、ちょっとためらう。次に拘置されれば、職場をクビになりかねない」とため息をつく。
論議の的になっている共謀罪法案で、法務省は再三「国民の一般的な社会生活上の行為」や「表現・言論の自由」が対象になることはないと釈明している。
だが、住居侵入罪で起訴された一昨年二月の立川反戦ビラ事件(二審で有罪、上告中)では、ビラの内容が問われた。今回の道交法違反でも、法の恣意的な運用が表現を規制している。
Bさんはこう語る。「一度、デモを許可して逮捕するんじゃ、まるでワナ。やった事実を問題にするんじゃなくて、デモが暴徒化するかもと懸念して弾圧してくるのなら、もう共謀罪は機能しているのも同然だ」
<デスクメモ>
許可しておいて逮捕する。さしずめ「追い込み漁」のようなものだ。わずか百人程度のデモ、警官を大動員するほどの“脅威”だろうか。筋違いを承知で書くが、未解決の栃木県の女児殺害や、秋田県の男児殺害など、警察力を問われる事件が相次ぐ。こちらの方がよほど脅威だと思う。力を注ぐべきは−。 (透)
<憲法21条1項> 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する
<道路交通法55条1項> (略、貨物自動車で)貨物を積載しているものにあっては、当該貨物を看守するため必要な最小限度の人員をその荷台に乗車させて運転することができる
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