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【天木直人 ニッポン外交の迷走】
2006年5月15日 掲載
小泉首相の不誠実を突く横田早紀江さん
小泉首相は終生この女性に頭が上がらないだろう。
4月30日の午後、私は成田の到着ロビーで偶然にもワシントンから帰国した横田早紀江さんを見つけた。こぼれるばかりの柔和な笑顔をたたえて通り過ぎる早紀江さんを見ながら、私は軽薄で非情な小泉首相のうすら笑いを思い浮かべていた。虚勢を張ってみても小泉首相はこの女性の前にはひざまずくほかはない。
その最大の理由は、もちろん拉致問題に対する小泉首相の不正義にある。功名心という不純な動機によってみせかけの日朝国交正常化を成し遂げようとした小泉首相は、その一方で拉致被害者の命を軽視し、拉致家族の心をもてあそび続けた。その小泉首相はいま北朝鮮の暴挙の前になすすべもなく立ちすくんでいる。
すべての原因は02年9月17日の電撃訪朝の時、拉致を認めさせることと引き換えに巨額の援助を与える裏取引を行ったことにある。誰が生還するか、どれだけの人数が救出されるかなどということは、国交正常化の偉業の前ではたいした話ではないといわんばかりであった。ところが国民感情はそれを認めなかった。世論の圧力に押されて金正日との裏約束を破らざるを得なくなった。この時点で小泉首相のもくろんだ拉致問題の解決は頓挫した。もはや小泉首相にとって拉致問題は邪魔な問題でさえあるのだ。
そんな小泉首相の不誠実を早紀江さんは見逃しはしない。早紀江さんは決して小泉首相を声高に批判はしない。しかし残りの人生のすべてをかけて娘を救い出そうとする母親の真心は、無言の抗議となって小泉首相をすくませている。
その早紀江さんが外交においても小泉首相を圧倒した。「工作船の暗い船底の壁をかきむしって『お母さん、助けて』と絶叫した娘をなぜいまだに助けられないのか、悔しくて、悲しくてたまりません……」。米国議会で毅然として語った早紀江さんは、並み居る議員の心を揺さぶった。これほどの説得力ある言葉を小泉首相は5年のうちで一度たりとも発したことがあったか。拉致現場を視察したシーファー駐日大使は「私が聞いた話でもっとも悲しい話だ」と漏らし、朋友ブッシュ大統領との面会実現に尽力した。早紀江さんの誠意はブッシュ大統領の心を動かし、「人権問題の訴えに耳を貸せないほど私は忙しくはない」とまで言わしめた。別れ際には「マム(奥さん)……」と言って両手で早紀江さんを抱きしめたという。なんと見事な首脳外交であろうか。小泉首相が到底勝てる相手ではない。
▼天木直人(あまき・なおと) 元レバノン大使。1947年生まれ、京大法学部中退で外務省入省。イラク戦争に反対する公電を送り、小泉首相の対米追従外交を批判して「勇退」を迫られる。著書に「さらば外務省!」「ウラ読みニッポン」(講談社)など。
http://gendai.net/?m=view&g=syakai&c=020&no=26283
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