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(回答先: 【河野太郎外務副大臣】条約刑法は共謀罪を新設していない 投稿者 提供人D 日時 2006 年 5 月 16 日 18:57:28)
【コメント】
共謀罪創設の議論が紛糾し、法務省だけではなく条約交渉をしていた外務省も国民から批判されはじめ苦境に立たされているためか、河野太郎議員や遠山清彦議員などの外務担当議員が援護射撃をはじめたようです。
5月16日の法務委員会の審議もネット中継で見ましたが、野党のきびしい質問に大臣や政府委員が答えられず、なんども立ち往生して野次られる場面が見られました。国会の議論では野党に勝負ありというところですが、衆議院の議席だけは圧倒的に与党が優位に立っているので数の力でおしきることも予想されます。
さて、河野太郎氏の議論ですが、法務委員会の参考人だった川端博明治大学法科大学院法学部教授の陳述内容とほぼ同一です。
河野太郎氏・川端博明氏の主張の問題は、一般刑法犯罪と特別刑法犯罪を区別しておらず、特別刑法に共謀があるから一般刑法にもあってよいのだという近代刑法原則を逸脱した議論を展開しているという点に尽きます。
たしかに「共謀」という“言葉”は現行法の一部にあります。しかし、河野議員が指摘した法律はすべて特別刑法として特定前提状況のもとでのみ共謀が成立されるべく規定されており、今回提案されている共謀罪のような、「重大組織犯罪のみ対象だ」と呼びつつもその内実は620近くあるがごとき一般刑罰にも適用される共謀罪とは質的に異なります。特別刑法に共謀規定があるから4年以上の一般刑罰にも共謀が肯定されるとの意見は飛躍しています。
係る暴論が出てくるのは、特別刑法の特別性を正しく理解していないか、あるいは理解していながらその理念を無視しているかのいずれかでしょう。
特別刑法の「共謀」は、大別して三種類あります。ひとつは内乱罪のような国家的重大犯罪、もうひとつは八百長賭博や暗号漏洩など通信の秘密や業務の秘密によって担保される法益を侵害する犯罪、そしてもうひとつは治安維持法や公務員法などの予防犯罪。
刑法の陰謀罪(共謀罪)は、外患誘致や内乱など、国家重大犯罪のみに適用されており、例外中の例外の扱いです。選挙違反と内乱罪の犯人を同じ扱いにせよという議論は非現実的です。破防法の陰謀罪も国家重大犯罪の類型刑罰という考えることができます。
自衛隊法の共謀罪も同様で、多数共同反抗共謀罪、無権限部隊指揮共謀罪などがありますが、これらの共謀罪が適用されるケースはクーデターや外患誘致などの国家重大犯罪が想定される状況が前提です。クーデターが現実に発生し得るような特殊な客観状況があってはじめて成立するという前提で共謀罪が置かれているわけで、だからこそ自衛隊員と会話して意思疎通したからといって共謀罪が適用されるなどという濫用は起こりえなかったわけで、今回提案されている共謀罪の前提とは異なります。
それから、自衛隊法と地方公務員法と国家公務員法にはそれぞれストライキ共謀罪などの共謀犯規定があります。私はこうした予防主義的な刑罰は廃止すべきだと思いますが、このスト共謀は、スターリンの扇動で公務員たちが暴力革命を唱える共産党に呼応してゼネストを起こすといった前提状況が成立していた時期に作られた刑罰で、今はスターリンはいないどころかソ連も無くなっていますし、共産党も暴力革命など主張していませんし、公務員がみんなストをやりたがっているという状況でもないわけで、ストライキ共謀が成立する前提状況はほとんど成立しません。
もし消防など、市民生活に影響をもたらす身分を持つ公務員がストで公務を放り出せば、世論はたちまちストをしている公務員を非難しストをする意義が失われるでしょう。つまりスト共謀などが適用される状況は無くなっているため、消防士さんや警察官などの公務員と会話したからといって共謀罪が適用されるなどという解釈の濫用は起こらなかったわけです。今回提案されている共謀罪の前提条件とはまったく異なります。時代錯誤もいいところです。
それからスポーツ振興投票の実施等に関する法律の共謀罪ですが、「指定試合においてその公正を害すべき方法による試合を共謀した者」(42条)を罰することになっています。賭博共謀は、公営賭博の関係者は莫大な個人的利益をもたらす八百長試合の誘惑が起こりやすい立場にいるため、禁止規定による職員本人の自制心だけに期待するだけでは公正な試合を担保しにくいという特殊事情があるので、職員だけではなく八百長試合を共謀した者も処罰する必要があるわけです。
モーターボート競走法、小型自動車競走法、競馬法といった公営賭博制度も同じ理屈で、小さなリスクで巨額の利益を得ることができる誘惑の多い特殊な身分の人がいるという限定状況を前提にして共謀規定が存在しています。公営賭博の関係者と会話しただけで共謀罪に問われるなどという適用解釈の濫用がおこらないのは、賭博共謀の前提として共謀する職員の競技への関与というという前提状況があってはじめて成立するわけですから、反戦団体に適用されるなどの解釈の濫用は起こらないわけです。
結局、ほとんど拡大解釈される機会が無いような特殊状況だけに適用されるのが特別刑法の共謀罪刑であって、今回政府・与党が提案している共謀罪とは前提がまったく異なるということです。
それから最後に軽犯罪法の共謀ですが、河野氏は誤解しているようですが、条文には共謀という文言はありますが、これは予備行為の存在が前提条件に成立することになっていますので、軽犯罪法の共謀とおなじように条約刑法を考えるのならばなおさら、予備行為を伴わずに既遂に達してしまう政府・与党案の共謀罪は否定されねばならなくなります。
河野氏は野党に塩を送るつもりだったのでしょうか。だとしたらよくやったとほめてやりたいところです。
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