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◇沖縄返還からみる米軍再編
沖縄が本土に復帰してから三十四年がたち、在日米軍専用施設の約75%を抱える沖縄は再び米軍再編という大きな転換期に差し掛かっている。沖縄返還をめぐる「密約」を告発し、日本の外交・安保問題で発言を続ける元毎日新聞記者の西山太吉氏(74)、沖縄返還の密約を裏付ける米公文書を発掘するなど日米外交に詳しい琉球大学の我部政明教授(国際政治学)に、今月一日に最終報告が出された在日米軍再編について、沖縄返還当時の状況と比較しながら、今後の問題点を聞いた。
西山太吉氏・元毎日新聞記者
日本左右する大転換期/少ない本質をえぐる報道
―米軍再編について。
「世界に類をみない先進二国間の濃密な軍事同盟で、国際関係の潮流からみて奇異。米国はテロ対策を重点に軍事戦略体系を再編成し、日本はそれに一体化しようとしている。沖縄返還は日米安保変質の原点だった。一九九〇年代の日米安保共同宣言や日米防衛協力指針(ガイドライン)で大きく変容していったが、米軍再編はその枠組みをはるかに超えた究極的な変革だ」
「(艦載機の移駐を拒否している)岩国市の反応や沖縄の負担軽減問題は、安保変革という本質から派生しているテーマととらえるべきだ。日本の百年を左右する重大な時期に、政治や民衆の反応はあまりにも鈍く、本質をえぐる報道も少ない」
―沖縄返還が契機とは。
「沖縄返還で日本は米軍の基地の自由使用を受け入れ、基地固定化の土台をつくった。財政面では、施設維持経費の肩代わりをはじめ、施設区域の提供のみならず改善・移転費(=密約)も負担するようになった。この費用は「思いやり予算」に発展した」
「米軍再編では、普天間飛行場の移設費用にとどまらず、米海兵隊のグアム移転に伴う国外への新施設建設にも莫大な金を出そうとしている。米軍と自衛隊は一体化し、米軍の基地の自由使用と施設維持経費の負担という沖縄返還時の米側の二大方針は、米軍再編で集大成している」
―沖縄返還と米軍再編の構図は似ているのか。
「沖縄返還では『核抜き本土並み』だとか『沖縄返らずして戦後終わらず』といったキャッチフレーズで返還の負の側面はカムフラージュされた。米軍再編では『抑止力の維持』や『負担軽減』の名の下に、米軍と自衛隊が一体化する安保の大変革が粛々と進んでいる」
「沖縄返還でも米軍再編でも、その厳しい代償や有効性は明らかにされていない。グアム移転費を、積算根拠があいまいなまま“つかみ金”として負担することを受け入れているところもよく似ている。米側の解釈によって、負担は今後膨らんでいくだろう」
―日本がとるべき道は。
「米軍再編の起因となっているテロへの対応は、政治的、社会的、宗教的、経済的な対処が必要で、軍事はその手法の一つにすぎない。テロは軍事的な圧力をかければかけるほど分散し、抵抗を強め、反米感情を募らせていく」
「ロシアも中国もフランスも、少しでも国益の一致できる国を見いだし、できるだけ多くの国と関係を築いて安定性を高めようとしているではないか。米国の要求をストレートに受け入れているだけでは日本は国際的な孤児になる。その最たる犠牲は沖縄だ」(聞き手=社会部・粟国雄一郎)
我部政明氏・琉球大学教授
対米支出際限なく膨張/負担軽減後付けにすぎず
―沖縄が本土に復帰してから三十四年。沖縄を取り巻く米軍基地の状況は何が変わったか。
「沖縄返還の際には、米軍の役割を自衛隊が一部補完するようになったという意味で大きな転換期だった。今回の米軍再編では米軍と自衛隊の一体化が進み、自衛隊が前面に出てくるケースもある。場面によっては、これまでの主従関係が逆転し、自衛隊が主、米軍が従という関係に変わるかもしれない。この三十年の大きな変化だ」
―米軍再編では沖縄の「負担軽減」を強調している。
「負担軽減より米軍の再編が先にある。米軍にとって基地を使いやすくすることが狙いで、まず海兵隊のグアム移転ありきだ。だが、海兵隊が八千人もグアムに移転して抑止力の維持が可能なのか。米国が基本方針を変えたら、お金を出してグアムに出て行ってもらうという。これでは日本政府が主張してきた海兵隊が沖縄に駐留する根拠とつじつまが合わない」
「軍属を含めた一万七千人がグアムに移れば、もっと返還される施設があってもいいはずで、その数字も疑問。負担軽減は後付けにすぎないということだ」
―沖縄返還と米軍再編をめぐる背景に共通項はあるか。
「一つは米軍から自衛隊への役割の移管、もう一つは財政支援の問題。日本側がかなりの経費を負担するようになる。沖縄返還では『思いやり予算』の原型がつくられたが、米軍再編ではグアムへの移転費という形で国外へも拡大しようとしている」
―国外の移設に日本が財政支出することの問題点は。
「『思いやり予算』の原型になった基地移転費では明確な積算根拠が示されなかった。グアム移転も同様だ。負担割合(日本59%、米国41%)は決められたが、総額を増加させることによって、日本の負担分で建設できる規模になるかもしれない。今までの『思いやり予算』がそうだった」
「米国が求める応分の負担とは、計画の規模が膨らめば日本の負担額は増えていくという意味。一度、支出してしまえばプロジェクトごとに負担を負わされる。そういう意味ではグアム移転は前例となり、負担は際限なく広がっていく」
―米国の思惑は。
「基地は政治的な資産。物としての価値は目減りしているのに、米国はタイミングよく返還することによって、移設という形で元の価値以上の新しい施設を手に入れる。日本政府は基地から派生する悪影響を軽減するため多額の支出をしてきた。その悪影響をもたらしている米軍が出て行くというのだから、これで終わりのはずだ。日本が去り行く海兵隊に金を払うというのは、二重払い以外の何物でもない」(聞き手=政経部・長浜真吾)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200605151300_02.html
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