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佐賀新聞論説 2006年5月12日付 共謀罪 修正の余地は残る
「共謀罪」新設を柱とした組織犯罪処罰法改正案の国会審議が大詰めを迎えている。三年以上にわたる懸案事項だが、適用対象をはじめ多くの問題点が指摘される法案であり、国民の不安も大きい。数の力で押し切ることなく、慎重な扱いが求められる。
共謀罪ができれば犯罪が実行されなくても、謀議に加わるだけで処罰が可能になる。これまでは実行して初めて罰せられるのが原則だったが、計画した段階で罪に問われるケースが出てくる。規定のあり方次第では乱用の余地を残し、人権を脅かす恐れも秘めている。
「酒席の冗談であっても、犯罪計画を立てて盛り上がると共謀罪になる」。そんな誤解まで出ているが、それだけ政府の説明は不足し、国民の理解は深まっていない。
共謀罪はテロや暴力団などによる組織的な犯罪、麻薬の密輸など国際犯罪を取り締まるのが目的である。二〇〇〇年の国連総会で採択された国際組織犯罪防止条約がきっかけで、日本も署名した。だが、加盟には共謀罪などの国内法整備が条件で、日本は批准できない状況にある。
国際社会の一員として、組織犯罪を防ぐ枠組みに入るのは意義がある。国民を守るという観点からも理解を得られるだろう。それが誤解を含め、さまざまな批判が出ているのは適用される対象や罪が広いことにある。
条約の趣旨を考えれば国際的な犯罪だけで済みそうだが、条約は四年以上の懲役・禁固に当たる罪に共謀罪を適用するよう義務づけている。これに従うと日本では殺人などの重大犯罪だけでなく、公選法や道交法違反など六百を超える犯罪が該当する。
民主党は性質上国際的な犯罪で、懲役・禁固五年以上の罪とする修正案を出している。これでは条約と合致しないが、「留保すべきだ」と主張している。
条約批准を最優先として、さまざまな懸念を押さえ込んでは国民の不安をぬぐい去れない。国際犯罪に限って適用することは条約の趣旨に反するものではないし、批准を一部留保するなどして絞り込んだ規定にできないのか、さらに検討を重ねるべきだ。
適用対象についても反発は大きい。政府案は「団体」の活動として共謀した者となっているが、企業や労組、市民グループなども処罰される恐れがある。民主党は「組織的犯罪集団」とする修正案を出し、与党も譲歩する案を示した。この定義も乱用の余地を残さないように、限定的な表現にすべきだ。
このほか、どんな行為をどの段階で処罰対象とするのかや配慮規定の内容などについても意見は分かれている。
衆院法務委員会の参考人質疑では与党修正案を支持する意見もあったが、「成立すると独り歩きし、捜査当局の恣意(しい)的な判断が優先される恐れがある」「どこまで拡大解釈するかは誰も責任を持てない」などの不安が上がった。
与党修正案について、日本弁護士連合会は解決していない問題点を指摘するとともに「予備行為」で処罰するという刑法の体系を根本から覆すことに強く反対している。
共謀罪では会話や電話、メールの内容が犯罪となるため、盗聴法の適用範囲が拡大するという指摘もある。
組織犯罪や国際犯罪を取り締まるのが目的であるのに、生活が脅かされるようでは何のための法律なのか分からない。不安解消に向け、修正の余地は残っている。採決は来週以降に持ち越されたが、拙速を避け、慎重に詰めていくべきだ。(大隈知彦)
http://www.saga-s.co.jp/pub/ronsetu/index.html
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