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社説「あいまいさ」を取り除け 共謀罪審議
犯罪が実行されなくても謀議しただけで摘発、処罰できる「共謀罪」の新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案をめぐって、国会での与野党の攻防が大詰めを迎えている。9日の衆院法務委員会では参考人質疑が行われた。
国連が2000年に採択し、日本も署名している「国際組織犯罪防止条約」を批准するために国内法を整備する必要があるとして、法務省が03年に最初に提出した改正案である。
凶器準備集合罪など例外もあるが、日本の刑法は「行為主義」を原則としている。処罰の対象となるのは、罪を犯すか、犯す恐れのある行為であって、犯す意思があるだけでは罰しないという基本的な考え方だ。
共謀罪には、行為主義とは対極の「予防主義」的な側面がある。戦前戦時中、内面的な営みである個人の思想を危険視して大勢の人を予防拘束し、少なからぬ人を獄死に追いやった治安維持法は、予防主義に立っていた。
こうしたことから日本弁護士連合会(日弁連)や市民団体は共謀罪の新設に対し、「人権侵害につながる恐れがある」と強く反発してきた。
国会審議も曲折を重ねてきた。03年と05年の2度、衆院解散で廃案になり、05年秋の特別国会でも継続審議になって現在に至っている。
これまで私たちは、政府案が刑法の原則と相いれない点などを指摘しながら、条約に過不足なく対応する内容の法案を一からつくり直すべきだと主張してきた。しかし、与党と民主党は政府案に対し今年4月に相次いで修正案を提出し、審議入りした。
政府案には、拡大解釈を許す恐れのある部分が多い。適用対象については特にそうだ。「団体の活動として、犯罪を実行するための組織として行われた共謀」としている。市民団体や会社さえも対象に含まれてしまいそうな、あいまいな表現である。
与党の修正案では「共同の目的が罪を実行することにある団体」、民主党の修正案では「組織的犯罪集団」としている。与党の修正案は、政府案とそれほどの差がない。「団体」の定義は、民主党の修正案をさらに工夫し、拡大解釈の余地がない表現にすべきだ。
適用対象を厳格に制限するには、しっかりした内容の配慮規定を設けておくことが何よりも肝要である。
与党の修正案では、憲法第19条の「思想及び良心の自由」に沿った配慮内容としている。民主党の修正案では、それに加え「信教の自由」の第20条と「表現の自由」などの21条の精神も合わせた表現とした。後者の方が望ましい。
あいまいさを残して誕生した法律は、時の権力の運用次第で変質し国民を抑圧することがある。共謀罪からあいまいさを厳しく取り除かなくてはならない。
=2006/05/10付 西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20060510/20060510_002.shtml
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春秋
目には見えないが、探せばいくらでも見つかりそうな危険物
目には見えないが、探せばいくらでも見つかりそうな危険物に「もろ刃の剣」がある。使い方や加減を間違えると種々の害を伴うことの例えだ。
▼広くとらえていえば、言葉は人間関係の潤滑剤にも凶器にもなる。過ぎたる競争社会は要らざる格差を生む。現代は科学技術の発達がもろ刃の剣を増やした。倫理問題に直面したクローン技術など例を挙げればきりがない。
▼もろ刃の剣は国を治める人たちの中でも芽を宿す。危険の質も規模も科学技術の産物とは別物だが、国民の不安に乗じて刃が研がれる場合もあるから油断がならない。1例が日本で進行中。
▼「共謀罪」新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案の国会審議が大詰めを迎えている。この法案は6年前の国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」に基づく。日本も署名し、国境を越えた組織犯罪に対抗するための法整備を急ぐことになった。
▼条約が念頭に置くのはテロ組織などだ。法案が通れば拡大解釈で市民団体も対象にされかねないという。民主党は「国際的組織犯罪」などと明記するよう主張している。これなら分かる。なぜ与党側はそうしないのだろう。
▼国際標準仕様を求めた条約に独自仕様でこたえた与党案は、ふつうの片刃の刀を注文されたのに勝手にもろ刃に仕立てるようなものだ。かつて「治安維持法」を独り歩きさせた苦い経験を日本は持つ。過去に学べば、焼き直しから始めるほかはない。
=2006/05/13付 西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syunzyu/
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