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http://blogs.yahoo.co.jp/yuubokuminn2003/35781110.html から転載。
掌編小説「え?これが共謀罪?」 著作 晴香
ある日の昼下がり、30代の主婦が3人集まっていた。
聡美、洋子、律子だ、
3人は同じマンションの住人で、子供たちも小学生で友達同士。
今日は、聡美の部屋で紅茶とクッキーでおしゃべりだ。
「ねえ、私たちの詩集、ホントに出そうよね」
「業者に頼むと高いから自分たちで作ればいいよね」
「私たち3人はみんな詩がお得意。
今まで書いたもので子供向けの綺麗な詩をたくさん載せて、PTAのお母さんたちに一部300円で買ってもらおうよ」
「収益は、養護施設に寄付したいね。たいした額にはならないけど」
「洋子、パソコン得意だから、作ってよ。私たちはデザインとか考える」
「ねえねえ、この雑誌に載ってる、子猫の写真凄く可愛い! これ使わない?」
「あ、ホントだ。この詩にぴったりのイメージだよ」
「こっちのイラストもいいね」
3人は目を輝かせて、雑誌の写真やイラストを眺めている。
「でもさ〜、これって勝手に使ったらいけないんじゃない?」
聡美が素っ頓狂な声をあげた。
「けど、私たち自分が儲けるためじゃないんだよ。収益は寄付するんだから構わないよ」
「やろうやろう、これ載せて素敵な詩集をつくろうよ」
3人は盛り上がった。
翌日、聡美から洋子と律子に電話がかかってきた。
やけに元気のない声だ。
「昨日のことでさ、ちょっと相談があるの。うちへ来てくれない?」
午後、3人は聡美の部屋に集まっていた。
「やっぱ、この雑誌の写真やイラストは使えないよ」
「え〜?何故? もしかして著作権とかってこと?でもこれって全く無名の人の作品だから関係ないんじゃない?」
洋子は強気だ。
「ゆうべ、うちの夫に注意されたよ。こういうの勝手に使うと著作権法違反になるんだって!」
「そんなぁ。じゃあ駄目なんだね」
すると一拍おいて律子が言った。
「あ、まずいよ! この間、共謀罪ってのが出来たでしょう」
「それってテロとか暴力団の対策なんでしょ」
「甘いね、それがやばいんだよ」
律子は部屋の中を見回した。
そして電話機のところで視線がとまった。
「聡美、あんたのとこ、この間、光ファイバーに変えたばかりだよね。業者が来たでしょ?」
「それがどうかしたの?」
きょとんとしている聡美と洋子。
「うわ〜やばい、これって!」
洋子は電話機をひっくりかえして調べ始めた。
その時だ。
玄関のチャイムが勢いよく鳴った。
3人はぎょっとして顔を見合わせた。
聡美が恐る恐る玄関のドアを開けると、二人の男が立っていた。
「世田谷署のものです。山田聡美さんは貴女ですか? あ、そちらは三上洋子さんと中田律子さんですね」
男たちは警察手帳を呈示した。
「な、なんですか?」
聡美の声が震える。
それにしても全員の名前を知っているのが不気味だ。
「ご足労ですが、3人とも任意で署の方へ同行願えませんか?」
その時、真っ青になってる聡美と洋子の後ろから、律子が毅然とした声で答えた。
「何の容疑でしょうか?」
「はい、著作権侵害の共謀罪の容疑です」
刑事は鋭い口調で言った。
「卑怯です!電話機に盗聴器なんか仕掛けて。
そうでなければ私たちが昨日何をこの部屋の中で話していたか、わからないはずです」
「ははは、そんなもの警察では仕掛けませんよ。
勝手なこと言わないで下さい。そういう謀議は何となくばれるんですよ。
みなさんの合意があったんでしょ? さあ、行きましょうか」
3人はあっけにとられた。謀議だって? 誰が謀議なんかしたの?
それにしても警察のやり方は卑怯だ!
業者に指示して、電気工事などのときにさりげなく盗聴器を仕掛けさせるのだ。
刑事に囲まれてとぼとぼと出てきた3人を他の主婦たちが恐怖のまなざしで見送った。
有罪と決まれば2年以下の懲役或いは禁固刑が待っているのだ。
終わり
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