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http://blog.goo.ne.jp/e-hori/e/50e2ef3d5d4192635a734dde988d8771より転載。
2006-05-10 15:09:42
教育基本法の改悪案について日本教育法学会の教育基本法研究特別委員会(委員長・成嶋隆新潟大教授)は九日、教育の自主性を保障した現行法を百八十度転換して権力統制を正当化するなど「極めて違憲性の強い改正法案」であり、「廃案にするべきだ」との見解を発表しました。
この新聞報道に接して加藤周一さんの「それでもお前は日本人か」の一文(『夕陽妄語 Z』朝日新聞社2004所収)を思い出しました。
昔1930年代の末から45年まで、日本国では人を罵るのに、「それでもお前は日本人か」ということが流行っていた。
加藤さんはこう切りだします。
「それでも」の「それ」は、相手の言葉や行動で、罵る側では「それ」を「日本人」の規格に合わないとみなしたのである。
その規格は当時の軍国日本の政府が作ったもので、天皇制軍国主義の国策に沿うものであったことは言うまでもありません。
政府が作った規格日本人の集団から少しでもはみ出せば、「それでもお前は日本人か」となり、「非国民!」となりました。
加藤さんは詩人の宗左近さんの詞華集『詩(うた)のささげもの』(新潮社2002)から、宗さんの出征歓送会でおきた次のような興味深いエピソードを引用されています。
当時東大法学部の学生であった橋川文三とその同級生の一人が、海軍司令部に勤めていた白井健三郎に食ってかかり、「きみ、それでも日本人か」といいだした。
そのきっかけはわからないが、白井は落ち着いて、「いや、まず人間だよ」と答えたという。
そして、「まず日本人だ」という主張と「まず人間だ」という主張が対立して、問答がおよそ次のように続きました。
「まず人間とは、なんだい。ぼくたち、まず日本人じゃあないか」
「違うねえ、どこの国民でも、まず人間だよ」
「何て非国民!まず日本人だぞ(・・・)」
「馬鹿なことをいうなよ。何よりもさきに、人間なんだよ」
こうして、橋川とその友人の二人が、殺気立ち、あわや殺傷ざたとなったらしい。
加藤さんはいいます。
「相手を『非国民』と称ぶのはほとんど常に、『まず日本人』主義者であり、『まず人間』主義者ではなかった。
・・・45年8月以前に、国民の圧倒的な多数が前者に、ほとんど例外的な少数が後者であったことはいうまでもない。
・・・多数意見は官製であった。
『まず日本人』説を作り、鼓吹し、教育して、多数意見としたのは、国家権力である。」
『まず日本人』主義者と『まず人間』主義者との多数・少数関係を45年8月を境に逆転させたのが、戦後の憲法であり、教育基本法でした。
人権は「まず人間」に備わるので、「まず日本人」に備わるのではありません。
先の見解発表の席で、教育法学会の堀尾輝久前会長(東京大名誉教授)は教育基本法改悪案について「教育を人権としてとらえた現行法から、国民統制の手段に変質する」ものと批判しました。
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