| Tweet |
http://www.janjan.jp/government/0605/0604303625/1.php
政府によって国会に提出され続けている、刑法改正、組織的犯罪処罰法改正などの一連の共謀罪法案は「平成の治安維持法」とも言われている。
政府、与党は４月中の衆院委員会採決を目指していたが、慎重審議を求める野党などの声に押され、国会の審議日程は変更され、５月９日に衆院法務委員会の参考人招致が決まった。共謀罪法案をめぐっては「治安維持法の教訓をいかせ」という意見も出ている。そこで私はまず、治安維持法についてのべることにしたい。
治安維持法は、１９２５（大正１４）年、加藤高明護憲三派内閣が普通選挙法と抱き合わせの形で制定した。成立背景には、日ソ国交樹立による共産主義思想の流入、普選による無産政党の議会進出、虎の門事件がもたらした社会不安、日本共産党の再建の動きなどがあった。
目的は、天皇制を否定し、資本主義経済体制を変革し私有財産を否定する共産主義者の活動、思想・信条そのものまで踏み込み処罰するものであった。治安維持法は、１９２６（大正１５）年、学生社会科学連合会の検挙に早速、適用された。１９２８（昭和３）年、緊急勅令によって改正され最高刑が「死刑」となった。同年、共産党員を検挙した三・一五事件、１９３５(昭和１０)年の大本教の弾圧など、猛威をふるったのである。
治安維持法の歴史を見れば、その恐ろしさは改正されるたびに処罰対象が拡大していったことにある。１９４１（昭和１６）年、３月、第二次近衛内閣のとき、違反者再犯防止を目的で「予防拘禁ニ付スル」ことが可能になった。予防拘禁制が追加され、共産主義者のみならず、統制経済の障害になる労働運動、学生運動、戦争に反対する自由主義者的な言論も一切封じ込められることになったのである。
治安維持法を実施するうえで全国に特別高等警察（特攻）の網が張り巡らされた。共謀罪も実行為が存在・発生する前に処罰可能となるので警察権力が肥大し、監視・盗聴・潜入捜査が強化される可能性がある。戦前の治安社会に戻るという批判の一つもこのような事を想定してのことであろう。
治安維持法は、天皇制と資本主義制度に公然と反対する共産党弾圧を目的とし、言論・結社・思想の自由を抑圧、国民を戦争へと駆り立てたが、いま問題となっている共謀罪は明確な定義が見えない。「テロを目的とした組織犯罪を処罰」とあるが、それが日本ではどのような状況で起こりうるのか、犯罪状況が見えない。見えないものを処罰する法律はとんでもない方向に向かう危険性がある。無軌道な拡大解釈・運用は恐ろしい。また、刑法・刑事訴訟法の内容が変わってくることも不安だ。
テロを目的にした過激な組織犯罪を未然に防ぐことは重要である。だが、犯罪への合意を「予防」するという、あたかも、もっともらしい理由で平和・環境・人権などの市民団体の活動や一般生活のコミュニケーションまで及ぶ無秩序・無軌道な処罰があってはならない。
治安維持法の教訓をいかすならば、国民がどの程度「組織犯罪を事前に早期阻止する必要」を考えているのか、事前捜査が必要となった場合でも、基本的人権を犯さず、真の意味で国民の生活を守ることができるのか等を明確にすべきである。
共謀罪の定義・内容がはっきりせず、その事前防止が民主主義の基本である議論・討論を処罰し、集会・結社・表現の自由すらも保障しないとするならば、性急な共謀罪関連の法制定を断じて行うべきではないと思う。
(菊池清麿)
◇
関連記事：治安維持法の教訓と共謀罪(ひらのゆきこ)2006/04/28
http://www.janjan.jp/government/0604/0604273442/1.php
▲このページのＴＯＰへ HOME > 政治・選挙・ＮＨＫ21掲示板
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,ＭＬを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。