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□在日米軍再編を日米の共通利益に [日経・社説]
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20060502MS3M0200H02052006.html
社説 在日米軍再編を日米の共通利益に(5/3)
日米両政府は外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で在日米軍再編に関する最終報告を決めた。これが実施されれば日本が目標とした抑止力の維持、基地負担の軽減は一応達成される。今後の焦点になる経費負担をめぐっては国会で徹底した議論を要する。自衛隊の一層の効率化も対象になる。知恵を絞り、在日米軍の再編を日米共通の利益にする必要がある。
経費めぐる思惑整理を
米側からみれば在日米軍再編はラムズフェルド国防長官が進めてきた地球規模の再編の一環である。米軍の編成・配備を(1)情報通信など科学技術に適合させる(2)北朝鮮など従来型脅威への対処だけでなく、長く続くテロとの戦いに対応させる――などが基本にある。日米間の最終報告によって世界レベルでも計画段階はほぼ終わり、実施段階に入る。
日本にとって在日米軍の再編は、北朝鮮などの近隣情勢やテロとの戦いに機動的に対応する構えを整えるだけでなく、沖縄の基地負担を減らす機会でもあった。普天間基地の代替施設は新たな計画がまとまり、2014年完成を目指す。沖縄海兵隊司令部要員8000人のグアム移転も負担軽減のための合意である。
グアム移転経費102億7000万ドルのうち日本は60億9000万ドル、米側は残る41億8000万ドルを負担する。日本59%、米側41%の分担になるのは、日米地位協定の枠外になるためであり、普天間代替施設の建設や厚木の空母艦載機部隊の岩国移転など日本国内での移転は地位協定に基づいて全額が日本負担となる。
費用負担をめぐっては思惑を込めた発言が飛び交い、整理を要する。守屋武昌防衛次官は「グアム移設経費以外に8年間で2兆円かかる」と述べる。ローレス米国防副次官は日本負担は全部で260億ドル(約3兆円)と試算する。ともに粗い数字であり、守屋発言は日本の財政当局向け、ローレス発言はグアム移転経費の41%負担に対する米議会の不満を封じるために日本側負担の大きさを強調したとみられる。
安倍晋三官房長官はローレス発言に「途方もない数字」と反応したが総額でどれくらいの財政支出を要するのかは現段階では明らかでない。例えば普天間代替施設の地元名護市辺野古地区は1世帯当たり1億5000万円の生活保障や地域振興を要求する。防衛庁が考える基地再編推進法案(仮称)では防音設備など従来の基地対策の枠を超え、商店街活性化など総合的な地域振興資金を提供する構想もあり、調整を要する。
6月の小泉純一郎首相の訪米時にブッシュ大統領との間で新たな日米安保共同宣言をまとめるべきだと防衛庁が熱心なのは、1996年の宣言から10年たち、米同時テロが起き、世界の戦略環境が変わったとの理由だけではない。共同宣言に首相が署名することで、在日米軍再編の費用を関係各省が分担し、防衛庁予算への影響をできるだけ少なくしたいとの財務省向けの思惑がある。
予算に直接関係のない外務省は、05年2月にまとめた日米間の共通戦略目標が既にあるとして新たな共同宣言には必ずしも積極的ではない。一方、財務省は在日米軍再編に要する費用が膨らむ場合、05年度からの中期防衛力整備計画を見直す事態も想定する。キャンプ座間の米陸軍司令部改編にみられるような、とりわけ陸上自衛隊の一層の軽量化、機動化が念頭にはある。
巨額の費用をかけて在日米軍の再編に日本が協力するのはなぜか。脅威と脅威認識の差が日米間で縮小したのが最大の理由だろう。
縮まる日米の脅威認識
冷戦時代、ソ連軍は日米双方にとって脅威だったが、米軍の存在のせいでそれに対する意識は薄くてすんだ。冷戦が終わってソ連の脅威がなくなり一時的に日米間に脅威認識の差が生じた。朝鮮半島、台湾海峡などでは冷戦が終わっていなかったからであり、差を埋めたのが96年の日米安保共同宣言だった。再び世界を変えた01年の米同時テロでは日本人24人も犠牲になった。
現在の日米安保条約が結ばれた60年、日本の国内総生産(GDP)の世界シェアは4.1%、米国は12倍近い48.3%だった。90年代には日本のそれが18%を超え、日米格差は2倍を切った。04年の最新数字では日本11.5%、米国29.1%であり、あわせて40%を超える。したがって日米が同盟で結ばれている事実は世界の安定にとって意味がある。
紛争の地、中東への日本の原油依存度は90%であり、米国のそれは15%とされる。日本経済は世界の安定を基礎にする。機動的な米軍の存在には紛争抑止機能がある。基地提供でそれを支えるのは同盟国の責任であり、日本自身の安全保障のためでもあるが、政治による丁寧な説明が必要なのは論を待たない。
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