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◇「首相なぜ来ない」水俣で不満の声も 水俣病確認50年
2006年05月01日12時00分
「小泉首相は、被害者に直接謝るべきだ」。1日、水俣病の犠牲者慰霊式を迎えた熊本県水俣市では、そんな不満の声が上がった。式への出席を熱望する地元の思いをよそに、小泉首相はエチオピアなど3カ国を訪問している。この半世紀、現地に足を踏み入れた首相は一人もいない。04年に最高裁が、国の責任を認めたはずなのに。
水俣病で亡くなったすべての生き物を慰霊する乙女塚に手を合わせる砂田エミ子さん(78)。乙女塚は砂田さんの夫の故砂田明さんらが築いた=1日午前8時36分、熊本県水俣市袋で
3月29日、水俣市。
式に向けた会合で、環境省の滝沢秀次郎・環境保健部長は地元関係者から突き上げられた。地元から環境省を通じて式出席を求める要請文が、首相に届いていないことが分かったからだ。
「なぜ伝えないんだ」
「官邸のハードルは高い。扱いを省内で協議しています」
同じころ、東京・永田町の首相官邸。
安倍官房長官が、式が予定された時期に、首相が外遊することを発表した。その数時間後、記者団から聞かれた小泉首相は「水俣病対策はしっかりやらねばならないが、外遊日程が入ってますから」と素っ気なかった。
公式確認から50年という節目の式。首相の出席は「被害者と市民の長年にわたる切なる願い」(宮本勝彬・水俣市長)だった。地元は今年2月、環境省に仲介を頼んでいた。
だが、省内では意見がまとまらず、手をつけられずにいた。消極派は「地元に何の土産もない。首相に恥をかかせるわけにはいかない」。積極派は「行くこと自体が土産だ」と主張した。
首相周辺は「地元は出席が当然と言うだろうが、すべての出席要請には応えられない」と話す。小泉首相は外遊前の4月28日、「率直におわびする」と明確な謝罪の意を示す談話を発表。翌日、アフリカに旅立った。
鳩山一郎首相から小泉首相まで歴代22人の中で、水俣病問題の解決に熱意を傾けたのは旧社会党の村山富市元首相だった。95年に未認定者の政治決着にもこぎ着けた。しかし今でも、「現地の事情はよく知っており、現地入りは考えたことがなかった」と振り返る。
熊本県知事時代に原告との和解を国に働きかけた旧日本新党の細川護熙元首相は在任期間が短く、一度も慰霊式を迎えることなく退いた。辞任会見では「水俣病問題に手を付けられず残念」と述べた。
歴代首相は、水俣入りはおろか、被害者らと面談したのも村山元首相が一度だけ。それも選挙の遊説に合わせ、福岡市内で10分ほど。この半世紀、政策課題の中で、水俣病問題の重要性は、その程度だった。
水俣市に住む認定患者の杉本雄(たけし)さん(66)は「これまで国は患者に対して敵対的とも言える態度を取ってきた。首相が現地に来て謝罪すれば、そうした過去から踏み出せる一歩になるのに」と話した。
http://www.asahi.com/national/update/0501/TKY200605010168.html
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