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特報
2006.04.27
在日『米軍再編マネー』負担
日本は現金自動支払機?
在沖縄米海兵隊のグアム移転経費問題で、約七千百億円の負担に驚いていたら、実は在日米軍再編で日本が負担するのは、六、七年間で総額約二兆九千八百億円にもなるらしい。ローレス米国防副次官が二十五日、初めて明らかにしたが、これも「控えめな試算」(同副次官)だそうで、経費はさらに膨らむとも。米国にとって日本は都合の良い“現金自動支払機”のようだが、本当にこんなに負担する必要はあるのだろうか。
「米軍に三兆円支出」のニュースは基地移設問題で揺れる町も駆けめぐった。「随分と大盤振る舞いをするものだ」とあきれ顔なのは田村順玄・山口県岩国市議。在日米軍基地監視団体リムピースの運営委員でもある。二十三日の市長選では空母艦載機部隊受け入れ反対派の井原勝介氏が当選した。田村市議は「安倍晋三官房長官は選挙応援で、基地を受け入れれば給食費や医療費をただにするとまで言った。これ以外にも交付金やら数千億円も出すつもりらしい。これも三兆円の中に含まれるんですかね」と痛烈な皮肉を飛ばす。
沖縄県名護市のヘリ基地反対協議会、仲村善幸事務局長も「米国はいよいよ攻勢をかけてきたという感じだね。しかし、こうやって矛盾点が明らかになっていくのは、むしろ良いことだ」と淡々と話した。
しかし、三兆円という「とんでもない金額」(安倍官房長官)の根拠は、どこにあるのだろうか。
軍事ジャーナリストの神浦元彰氏には、思い当たるところがあるという。
■よみがえる沖縄の『密約』
「一九七二年の沖縄返還の際の『密約』の存在は有名。本来米国が払うべき土地の原状回復補償費四百万ドル(当時のレートで約十二億円)を秘密裏に払ったとするものだ。嘉手納基地の一部返還が実現し、重金属などで汚染された土壌の回復費を払う羽目になったら、同様の費用が必要になると聞いたことがある」
辺野古、岩国に基地を建設する費用に加え、この土壌処理費用が金額を押し上げている−という推論だ。
また、やはり軍事ジャーナリストの前田哲男氏は「硫黄島のNLP(夜間離着陸訓練)施設を広島に移すという案が再浮上するのかもしれない」と指摘する。辺野古の基地建設、横須賀基地の原子力空母対応工事などを考慮しても、ほかに大規模な建設工事が予定されていなければ、三兆円には届かないからだ。
ただし「カウントの仕方による」とも。「米軍と自衛隊の垣根を低くし、基地施設などの共有を進めるのが今回の再編。青森・車力分屯地に配備されるXバンドレーダーなどミサイル迎撃システムは自衛隊、米軍共有で、こうしたものを計算に入れた可能性もある」と説明する。
ところで、これほどの費用を日本が負担する「米軍再編」とは何だろうか。
■説明もなくなし崩し進む
「米軍と一緒に世界的な対テロ戦争を展開するためのネットワークづくり」と話すのは、「在日米軍」の著書もあるNPO法人ピースデポ代表の梅林宏道氏だ。
「米国は日米同盟について『責任分担から権限分担へ進むときだ』といっている。米国の世界戦略に主体的に参加せよという意味だ。しかし、問題は、これほど大切な選択が国民に問われることなく、なし崩しで進んでいることだ」
前出の前田氏も「やくざに用心棒代を払って、この町が安全になるのかという話。ミサイル防衛網についても、守るのは首都圏と在日米軍基地だけで九州などは網の外だ。もっとも防衛庁は、日本が攻撃を受ける可能性はないと認めており、なおさら国防に大金を使う必要もない」と話す。
日本政府は米軍にこれまで年間二千三百億円の思いやり予算(在日米軍駐留経費)や基地用地の提供をしてきた。概算すれば、今後はその負担が年額で数倍になるということだ。その巨額負担に日米同盟の価値は見合っているのだろうか。
「イラク戦争で費やす米軍の年間戦費は約五百八十億ドル(約六兆六千億円)。米国には少しでも負担を同盟国に課したいという理由があるが、日本側にはカネを払う理由がない」。そう断言するのは琉球大の我部政明教授(国際政治)だ。
対テロ政策、中国や北朝鮮の脅威論が日米同盟を支える論拠になりがちだ。しかし、我部氏は「米軍自体が対中脅威に対しては、現行の空母配備やミサイル防衛で対応できると言明している。加えて、日本へのテロの脅威が増しているとは考えにくい。結局は必然性がない」と分析する。
「元凶は日本側だ。日本には世界やアジアとどう関係をつくるのか、という目標がない。目標がないから戦略もない。結局、現状維持という判断停止で、米国の言いなりになっている」
政治レベルでも、米国は日本の国連安保理常任理事国入りを後押ししなかった。ゼーリック米国務副長官は日本の外交官や政治家との会談を拒んでいる。結局、日米同盟は単なる「片思い」ではないだろうか。
「ただ、在日米軍再編の底流は政治ではなく、むしろ技術だ。そこに歯止めの利かない深刻さがある」と桜美林大の加藤朗教授(国際政治)は指摘する。
「日米間の政治家レベルの交流は希薄かもしれないが、制服(軍人)レベルは活発だ。米軍はすべての情報と兵器を結ぶネットワーク戦争型の再編を進めており、日本の自衛隊はその中に組み込まれている。行き着く先は自衛隊の米軍への統合だ。これは現行憲法では違反になる。だから、大きな声で語られていない」
コソボ紛争でもNATO(北大西洋条約機構)軍が爆撃するのに米軍情報抜きではできず、危機感を覚えたフランス、ドイツ軍は米軍からの自立を狙い、イラク戦争での摩擦に至った。
「しかし、自衛隊は米軍から独立すると主張できない。例えば、衛星情報も米軍が握っており、独立には日本独自の軍事衛星の打ち上げが必要だ。そうした動きは“軍事大国化”と非難を巻き起こすだろう」
軍事技術的に対米独立できない状況下、「独立」を目指そうとすれば、外交、経済を含めた国家戦略の根本的な転換が求められる。
ただ、現状では政府はそうした転換より、現状に追随して三兆円支出に踏み切りそうだ。だが当然、それは国民負担。一体、この額の重みはどれだけなのか。
■費用の捻出 米国債売れ
エコノミストの紺谷典子氏は「年間の消費税1%分にあたり、年間公共事業費の四割以上だ」と解説する。「政府は社会保障、地方交付税、教育といったすでに削った分野をさらに削り、国民の痛みなど無視して捻出(ねんしゅつ)しようとするだろう」
経済アナリストの森永卓郎氏は「米軍が新しいお家(うち)に住みたいので、そのために日本の四人家族が十万円も払うというのはどういう理屈なのか」と憤りを隠さず、こう話す。
「高速道路を全部無料にして、耐震偽装問題の被害者を全員救済してもおつりがくる。政府は消費税引き上げで充当しようとするだろうが、山のように積まれた米国債を叩(たた)き売って払えばいい。『占領軍』が引き揚げるのにカネを払う国なんて聞いたことがない」
<デスクメモ> 日本は「世界一気前のいい同盟国」らしい。だが、最近、専門家が日米同盟の空洞化、流動化などを相次いで指摘し始め、本当に両思いなのか、ただ都合の良い金づるなのでは、と不安にもなる。三兆円負担を発表したのはローレス米国防副次官だが、まさか「無法(lawless)」じゃないよね。 (透)
(メモ)在日米軍再編 冷戦終結や米中枢同時テロ後の安全保障環境の変化に伴う米軍の世界的再編の一環。日米が昨年10月合意した中間報告は、普天間飛行場(沖縄県)移設や在沖縄海兵隊司令部のグアム移転のほか、キャンプ座間(神奈川県)への米陸軍第1軍団司令部の改編・移転、厚木基地(同)の空母艦載機部隊の岩国基地(山口県)移転などを明記。額賀防衛庁長官とラムズフェルド国防長官は23日、グアム移転経費102億7000万ドルの59%を日本側負担とすることで合意した。 (共同)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060427/mng_____tokuho__000.shtml
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