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http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060427/mng_____kakushin000.shtml
元一級建築士の姉歯秀次容疑者(48)ら八人が逮捕された耐震強度偽装事件。偽装の温床になった建築士の名義貸し、建設会社の粉飾決算、確認検査機関の架空増資という三つの「虚飾」にメスを入れることで、警視庁などの合同捜査本部の捜査が本格的に動きだした。だが、これらの容疑は業界ではよく知られていたり、行政がチェックできなかったりした不正だった。国の建築システムが抱える欠陥は深刻といえる。
(社会部・森川清志、早川由紀美)
■名義貸し
姉歯容疑者は、一級建築士の名義を無資格の建築デザイナーに貸した容疑で逮捕された。だが、建築士法は名義を借りた無資格者への罰則は定めているのに、名義を貸した建築士への罰則は明文化していない。このため姉歯容疑者は、無資格者の設計をほう助した(容易にした)容疑での立件になった。
日本建築士事務所協会連合会(東京都中央区)の北野芳男常務理事は「名義貸しの実態は把握しようがないが、普通に聞く話だ」と明かす。国土交通省は住宅局長通知に基づき、名義貸しにも行政処分を行っている。二〇〇五年度は処分を受けた建築士計二十八人のうち、七人が名義貸しだった。
北野理事は、名義貸しの再発防止について「各都道府県が持っている(建築士事務所の)データを互いに照会できるシステムをつくれば、複数の事務所の管理建築士として登録する“二また”の名義貸しをチェックすることはできるだろう」と説明する。だが、事務所を開設せず、会社勤めなどをしている建築士が名義を貸す場合は、実態の把握は難しいとみる。
今国会で審議が始まる予定の建築士法改正案には、名義を貸した建築士への「懲役一年以下または罰金百万円以下」の罰則規定が明文化されている。だが、罰則だけで名義貸しがなくなるのかどうかは不透明だ。
■粉飾決算
木村建設社長の木村盛好容疑者(74)は、粉飾決算が捜査の対象と知った際、弁護士に「極めて意外だ」と漏らしたという。「『業界では多くの会社でやっていることなのに…』という認識だったのだろう」。この弁護士は話す。
木村建設が粉飾を始めたのは一九九八年とされる。それ以来八年間で、同社は建設業の国土交通大臣許可を二回更新。公共事業を受注するため、国交省による経営状況や技術力の審査(経営事項審査=経審)も毎年受けてきた。それでも、粉飾は見過ごされた。
同省建設業課によると、全国では約十九万の建設業者が経審を受けており、決算書の虚偽記載などによる行政処分は昨年が三十八件、一昨年は六十四件に上る。一昨年には滋賀県内で最大手の建設会社が、決算書類の虚偽記載などで刑事責任を問われた。
建設業課は「行政処分までいかなくても、経審で間違いなどを見つけて是正させる例は無数にある」と言う。仮に行政処分を受けても、翌年に再び経審を受けるのは可能だといい、悪質業者を排除する仕組みにはなっていない。同課は「経審などのあり方を検討する」としている。
■架空増資
民間の確認検査機関イーホームズ社長の藤田東吾容疑者(44)が逮捕されたのは、国交相の指定を受けるために資本金の架空増資をした疑いだ。
そのような場合にも、行政側のチェックは届かない。国交省建築指導課は「指定を行う際には会社の定款や登記簿などの提出が必要だが、書類で架空増資を見抜くのは無理」と認める。
耐震強度偽装事件を受けて国交相の諮問機関「緊急調査委員会」は今月、建築確認制度のいたる所に「深刻な破たんが表れ始めた」とする報告書をまとめた。だが、この報告書がまとめられた時にはまだ、逮捕容疑となった三つの「虚飾」ははっきりしていなかった。
委員を務めた和田章・東京工業大学教授は「架空増資の話なんて、委員会の論議では何も出なかった。国の法制度のあり方に根本的な欠陥がある証しではないか」と話している。
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