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(回答先: 民主、「共謀罪」に修正案(日経) 投稿者 天空橋救国戦線 日時 2006 年 4 月 21 日 08:16:17)
■いかなる修正も共謀罪の危険性を減じない
10月6日付の公明新聞によると、5日に行われた公明党と創価学会の連絡協議会で,「漆原良夫広報委員長が、(共謀罪について)『あくまでも組織的犯罪集団を対象とするもの』と説明。その上で(1)適用は組織的な犯罪集団に限ることを法文上明確にする(2)客観的に分かる準備行為を必要とするムムの二つの修正を考えている」と述べました。漆原氏は、公明党の法務部会長で衆議院法務委員会の理事を務める人物であり、この方向で修正論議が進む可能性は高いでしょう。
確かに、共謀罪の適用が厳密に「組織的な犯罪集団」に限定されれば、法案の性格はかなり変わります。しかし、本当にそのような根本的な修正を公明党は考えているのでしょうか。あるいは、そのような根本的修正で共謀罪の危険性は減じるのでしょうか。
修正案の内容は公表されていませんが、政府は超短期間での国会通過を予定しているので、公表されてから批判したのでは間に合いません。そこで、7月12日に行われた漆原議員と政府担当者との質疑をもとに、予想される修正案が果たして共謀罪の危険性を減じることになるのかを、検討してみます。
■共謀する団体は「組織的犯罪集団」とみなす
すでに、12日の政府答弁の内容は、拙稿で検討済みですので、その結論だけを再度確認すれば次のようになります。
@ 共謀罪の「団体」の定義には、犯罪性のない株式会社、市民団体、サークル、労働組合などが含まれることを政府は認めました。
A その上で、政府は、市民団体などを「共同の目的が犯罪行為と相容れない正当な団体」とそれ以外に分け、前記の団体には適用しないが、それ以外には適用すると明言しました。
B 適用される団体について、政府は「犯罪行為を行うことが共同の目的に沿う団体」なるものにねじ曲げて規定しました。この団体は犯罪性のない市民団体などですが、政府は意図的にこのような団体をいわゆる「犯罪を目的とする団体」と混同・同一視することで、これへの共謀罪適用を正当化し、“適用するのは犯罪組織のみ”と強弁したのです。
いかなる団体も犯罪を目的としてある行為を行うわけではありません。団体の目的を実現するためにある行為を行った場合に、それが政府により合法あるいは違法とされます。
たとえばマンション建設反対の住民団体が、資材搬入を阻止するために座り込んだ場合に、それが実際に資材搬入という業務を妨害すれば威力業務妨害とされ、摘発される可能性が出てきます。
このようなケースでは、威力業務妨害という犯罪行為(座り込み)は、団体(住民団体)の共同の目的(マンション建設反対)に相容れないわけではありませんから、住民団体は共謀罪適用を免れる正当な団体とは言えません。したがって、政府答弁によっても、この住民団体が座り込みを行うことを合意した段階で共謀罪が適用されます。
ただし、適用にあたっては“住民団体は「正当な市民団体」とは言えないから、市民団体に適用したわけではない”と、政府は説明しようとしているのです。
以上のような政府答弁を踏まえて、漆原氏は、共謀罪が、「あくまでも組織的犯罪集団を対象とするもの」と述べています。そこで、公明党の修正案の前提には、「団体の目的実現のために行う行為が犯罪とされる団体」→「犯罪行為を行うことが共同の目的に沿う団体」→「正当」ではない団体→共謀罪適用団体→ 「組織的犯罪集団」という論理が存在していることになります。
その上で、「適用は組織的犯罪集団に限ることを法文上明確にする」といっても、それは以上のような展開を法文に明記するにすぎず、せいぜい、“「正当」ではない団体は「組織犯罪集団」と同じようなもの”というこれまでの政府見解を一歩進めて、“「正当」ではない団体は「組織犯罪集団」とみなす”という内容を何らかの形で法文に反映させるというにすぎません。
市民団体などに共謀罪が適用された時に、現在の条文のままでは「正当な団体とは言えないから適用した」と言われるのが、修正後は「市民団体に仮装した組織的犯罪集団に適用した」と言われるのです。
■「組織的犯罪集団」の法的定義は困難
では、共謀罪の適用対象を厳密に「組織的犯罪集団」に限定するというような“根本的”修正が行われるとしたら、共謀罪の危険性はどうなるでしょう。
共謀罪推進派の村上泰弁護士は、9月25日に放映されたNHKの番組の中で、「組織的犯罪集団」を法的に定義することの立法技術的困難さを認め、市民団体に適用するかしないかは取り締まり当局の運用にまかせるしかないという趣旨の発言をしています。
このことは、あらためて「組織的犯罪集団」の定義を定めてそれに対象を限定するという修正の困難さを示しています。仮にそれが可能としても、定義の妥当性の検討が必要であり、組織犯罪の取り締まりを目的とする組対法と「組織的犯罪集団」を取り締まる法案とは性格も大きく異なるため、共謀罪はいったん取り下げるべきです。
■全市民対象の「組織的犯罪集団」結成罪へ
ただ、もう一つのやり方があります。
例えば、条文の「団体として」の部分を、「当該行為を目的とする団体として」と修正すればどうでしょう。確かに、この修正でも共謀罪の規制対象は「組織的犯罪集団」に限定されるということになるでしょう。
私は、これまで共謀罪を批判するにあたって、市民団体にしても、「組織的犯罪集団」にしても既存の団体を前提にしてきました。これは、“団体”の定義における「継続的結合体」に着目し、条文の「団体として」が「共謀した」にかかるか「遂行」にかかるかにかかわらず、「共謀」の段階ですでに「団体」が存在していることを必要とすると考えるものです。これまでの国連越境組織犯罪防止条約の討論・締結の過程もそれを示しています。
しかし、すでに共謀罪の条文の分析で明らかにしたように、「団体として」は「遂行」にかかり「共謀」自体には何の限定もつきませんので、「団体」も「組織」もただ合意内容の中に架空の存在としてあるだけで十分なのです。既存の団体である必要はありません。
さて、前記修正による「当該行為(犯罪行為)を目的とする団体」とはいつ登場するのでしょうか。実は、このような団体は“共謀(合意)”によって初めて登場するのです。そして、団体の定義における継続性は、共謀の時から実行予定の時まで計画の中に継続的に存在していれば良いとも考えられます。
例えば、次のような例が考えられます。
ある飲み屋で、刑務所で知り合いだったAとBが偶然出会って、銀行強盗を行おうと意気投合したとします。その中で、いつ、どこを襲うかを詳細に計画し、Aは襲う銀行の調査、Bは逃走用の車の手配など任務分担を決めたました。これまで私は、このようなケースではAとBの関係は、共謀段階での「継続的結合体」とは言えないから共謀罪の適用対象ではないと考えてきました。
しかし、前記の修正に従えば、AとBが合意した段階で銀行強盗を目的とする団体(組織的犯罪集団)が結成されたことになります。共謀ですから「共同の目的」「多数人」の要件は当然満たします。AとBの関係は強盗実行の日まで継続することが予定されていますから、「継続的結合体」という要件も満たすことになります。任務配置を決めることで「当該行為を実行するための組織」も同時に作られたことになり、AとBは意気投合した段階で完全に共謀罪の対象となってしまいます。
これは実に危険なものと言わなければなりません。
例えば、マンション建設反対の住民団体の中で、メンバーの中のCとDがどうしても許せないと他の者に相談せずに座り込みを決めたとします。CとDは、威力業務妨害を目的とする「組織的犯罪集団」を結成したとして、合意の段階で共謀罪の対象となるでしょう。住民団体の他のメンバーが薄々気づいていながら明確に反対しなければ、黙示の共謀によりCとDの「組織的犯罪集団」の一員として摘発される可能性が出てきます。住民団体のメンバーでないものが座り込みを精神的・物質的に応援しようとしても同じです。
また、まだ何の団体にも入っていない人が、近くにマンションが建設されると困るから座り込みでもして反対しようと友人と具体的な計画の話をすれば、まだ住民団体をつくる前から共謀罪の対象とされる可能性も出てきます。
結局、既存の団体が市民団体であろうとなかろうとそれとは無関係に、既存の団体の範囲を超えて、あるいは団体が存在しなくても共謀罪適用の範囲は制限もなく広がっていくのです。
このように「組織的犯罪集団」へ限定するという根本的修正は、実は共謀罪を無限定の「組織的犯罪集団」結成罪のようなものに変質させ、無制限の適用を可能とする、より危険なものとなりかねません。
修正案がいかなる内容であろうと共謀罪の危険性はいささかも減じるものではありません。共謀罪の廃案のために全力を尽くしましょう。
http://blogs.yahoo.co.jp/felis_silvestris_catus/13728074.html
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