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(回答先: 「愛国心」求める声相次ぐ 教基法改正で自民の会議(共同通信) 投稿者 片瀬テルミドール夏希 日時 2006 年 4 月 04 日 21:19:40)
共謀罪:新設審議ヤマ場 「内心の処罰」で攻防
実際に犯罪行為をしなくても事前に謀議しただけで罪に問われる「共謀罪」の新設を巡る国会審議が、近くヤマ場を迎えそうだ。政府・与党は「組織的な重大犯罪から国民を守れるようになる」として今国会での成立を目指し、早ければ今月にも審議に入る構えだ。だが、法曹界や市民団体には「話し合うことが処罰され、内心の自由や表現の自由が脅かされる」との批判が根強い。野党は廃案を主張している。【森本英彦】
◇与党、適用範囲絞り修正/野党、あくまで廃案要求
「最初の提案からもう3年たつ。そろそろ審議に入りたい」
「今国会は重要法案が多い。共謀罪を先に審議すれば他の法案が吹っ飛ぶリスクを負いますよ」
2月以降、与野党の間では、こんなやりとりが繰り広げられている。
共謀罪を新設する組織犯罪処罰法などの改正案は、3度目の提案となった昨年秋の特別国会でも継続審議になった。早期の審議再開を求める与党に対して、野党は強く抵抗し、審議日程を巡る攻防は激しさを増す。
与党は当初、衆院法務委員会で予算関連法案の採決が終わる3月中旬に共謀罪の審議に入る方針だった。しかし、野党が応じず、別の法案を先に審議している。
その法案の採決が済めば、今月にも審議に入る可能性がある。いったん審議に入れば、数の上で圧倒的に有利な与党が採決に持ち込むことが予想される。
危機感を強めた市民団体や日本弁護士連合会は2月以降、反対集会を相次いで開いている。
3月28日に東京都内で開かれた集会では、戦時下最大の言論弾圧事件とされる横浜事件の再審請求人で、元中央公論社社員の故・木村亨さんの妻まきさんが「事件は治安維持法下ででっち上げられた。法律は一度できると取り消すのは難しい。共謀罪を阻止し、人権を大切にする社会を作らねばならない」と訴えた。同9日に国会近くで開かれた集会で、足立昌勝・関東学院大教授は「合意しただけで処罰できる共謀罪は、既遂を処罰する刑法の基本原則を根本的に変えるものだ」と指摘した。全国52の単位弁護士会のうち49の弁護士会も、共謀罪に反対する会長声明を出し、廃案を求めている。
与党側は2月14日、(1)何らかの準備行為を成立の要件にする(2)対象となる団体を限定する(3)乱用防止規定を設ける−−を柱とする修正案を民主党に示した。批判や懸念の高まりを前に、原案のまま押し通すのは問題があると判断した。
共謀罪への主な批判の一つは「何の行為もないのに処罰すれば、内心の自由や表現の自由が脅かされる」というものだ。このため修正案では、共謀罪が成立するためには「共謀をした者のいずれかが『犯罪の実行に資する行為』をすること」を必要とした。例えば、現場の下見に行くといった行為が想定されている。
政府は、市民団体や労働団体など「正当な団体」には適用しないと国会で答弁している。しかし、これらの団体メンバーからは「共謀罪が自分たちに適用されるのではないか」という懸念の声は消えない。そこで、修正案は「共謀罪の適用は、対象犯罪を実行することを共同の目的とする団体に限定する」という趣旨の規定を盛り込んだ。
「共謀罪の運用にあたっては、思想・良心の自由を侵害したり、団体の正当な活動を妨げてはならない」との文言を条文や付帯決議に盛り込むことも提案された。
しかし、野党や日弁連の大勢は(1)「犯罪の実行に資する行為」という規定はあいまい(2)犯罪目的の団体かどうかの判断は警察に委ねられ、恣意(しい)的捜査の恐れが残る(3)乱用防止規定は訓示に過ぎず実効性がない−−などと批判的だ。共謀罪の対象を国境を越える犯罪に絞るべきだという意見も根強い。
◇取材活動も対象に?−−日弁連が事例提示
日弁連は1月、懸念される共謀罪の適用事例をまとめた。「団体に犯罪目的はなくても共謀罪に問われる可能性がある」と指摘する。
<ケース1>マンションの建設に反対している住民団体が工事着工を間近に控えた会合で、当日は資材搬入を止めるため未明から現場に座り込むことを決定した=組織的威力業務妨害罪の共謀罪
<ケース2>労働組合が会社の倒産が近いという情報をもとに会社と団体交渉を行うに際して、退職金の支払いの保証のため社長個人の保証を求め、それが得られなければ長時間に及ぶ徹夜団交も辞さないと執行委員会で決定した=組織的監禁罪の共謀罪
<ケース3>ある新聞社が違法な政治献金疑惑がある政治家の自宅に記者を張り付かせ、帰宅した政治家にインタビューし、取材拒否にあっても事実関係についての弁明を必ず取材させることを編集会議で決定した=組織的強要罪の共謀罪
<ケース4>衆院選の終盤に苦戦する候補者が選対会議で、メンバーの会社社長に対し、社員にアルバイト代を支払ってでも1人50本ずつ電話をかけさせてくれと依頼してその承諾を得た=多数人買収罪の共謀罪
◇誰でも適用の恐れ−−前日弁連副会長・中村順英氏
中村順英・前日本弁護士連合会副会長(共謀罪等立法対策ワーキンググループ座長)に共謀罪の問題点を聞いた。【聞き手・臺宏士】
−−共謀罪は「現代の治安維持法」にたとえられます。
集会で共謀罪に反対し法務省前に座り込もうと呼びかけがあった場合、拍手で応えた参加者の中に「座り込みしないで帰宅する」と心の中で決めた人がいても、拍手をしたことで形式的には組織的な威力業務妨害罪の共謀罪に問われる恐れがある。共謀というあいまいで広い概念を持ち出し、実行行為がなくても合意があれば罪に問えるのは、既遂を処罰する近代刑法の大原則を踏み外している。内心の処罰を可能にした法律が思想弾圧に悪用されるのは、治安維持法をみれば明らか。
−−法務省は、英米には同様の規定があると主張しています。
取り調べの可視化(録画・録音)が進んでいる国と、密室での自白を重視する日本では運用の条件が大きく異なる。日本では乱用のチェックもできず、人権への侵害性は極めて大きい。
また、日本の刑法は殺人など重大犯罪に限って例外的に予備罪を置いているが、共謀罪は600以上の罪種が対象だ。誰もが共謀罪の対象となり、いつでも適用できるという状態をつくりだす。共謀罪新設の根拠となった国際組織犯罪防止条約が本来目的とした国際的な犯罪集団だけでなく、適用対象が拡大される懸念は大きい。
−−与党修正案をどう評価しますか。
与党は一定の犯罪を行うことを共同目的にする団体に限定するというが、不十分だ。「犯罪の実行に資する行為」という新たな概念が示されたが、条約が示した「合意を推進する行為」よりも広く、歯止めにはなっていない。横領罪など未遂罪のない犯罪についても共謀しただけで処罰されるというちぐはぐな法体系はそのままだ。共謀罪は、廃案にすべきだ。
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◆共謀罪を巡る主な動き◆
00年11月 国連で国際組織犯罪防止条約を採択
12月 日本が同条約に署名
03年 3月 共謀罪を新設する法案を政府が提出
5月 国会で同条約を承認
10月 衆院解散に伴い、同法案は廃案に
04年 2月 政府が改めて法案を提出
05年 6月 衆院法務委員会で審議入り
8月 衆院解散で2度目の廃案
10月 特別国会に三たび法案を提出
初の参考人質疑
11月 衆院法務委員会で継続審議に
06年 2月 与党側が修正案を提示
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■ことば
◇共謀罪
4年以上の懲役・禁固にあたる刑について「団体の活動として犯罪実行のための組織により行われる場合」の共謀を処罰する。対象となる犯罪は600以上に及ぶ。対象犯罪が「死刑、無期懲役、10年を超える懲役・禁固に当たる刑」の場合は、5年以下の懲役・禁固。それ以外の場合は2年以下の懲役・禁固。実行前に自首した場合は、刑が軽くなったり免除される。日本は国際組織犯罪防止条約に署名しており、国内法の整備を求められている。
毎日新聞 2006年4月3日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20060403ddm012010073000c.html
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