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http://www.janjan.jp/column/0604/0604021838/1.php
春、4月。サクラが咲き、散っていきます。しかし、今春の日本の政治は花が咲かぬままに、うつろいそうです。政界をかき乱した犯人の筆頭は、「偽メール事件」。この騒ぎに埋没して、政党もマスコミも、なにが国民生活にとって大事なのか、すっかり見失ってしまったようです。
うやむやになった「偽メール」の真相
「偽メール事件」で、民主党の前原誠司執行部が総退陣し、事件の火付け役だった永田寿康氏が国会議員を辞職したこと(3月31日)によって、衆院懲罰委員会は「偽メール」の情報仲介者だった元フリーライターの西澤孝氏に対する証人喚問を取りやめました。
釈然としなかったのは、私だけでしょうか。確かに永田氏が衆院議員でなくなれば、懲罰の対象がなくなります。懲罰委員会が審議を続ける理由がなくなったといえます。理屈の上では、そうなるのでしょうが、国会の機能を一時止させた政治的大事件の真相を解明せず、国会がうやむやのままで幕を引いていいものでしょうか。
民主党が発表した「偽メール事件」の調査報告書によりますと、永田氏が当時の野田佳彦国対委員長と相談し、西澤氏に1000万円程度の提供を打診していたといいます。また、野田氏が「西澤氏と情報提供者を(民主党の)職員として雇用して生活を保障することも考える」と語ったことや、永田氏が西澤氏の妻を「秘書とすることを検討してもいい」と西澤氏に伝えたことも明らかになっています。
しかし、報告書は西澤氏のいう情報提供者の存在や、メールの作成者については、「不明であり、その調査は不可能である」としています。報告書をまとめた検証チーム座長の玄葉光一郎幹事長代理は記者団に「政党がこれ以上のことをやるのは、捜査権がないとなじみにくい。政党としてはこれで終わりにする」と語ったそうです。
この報告書の内容だけでも、相当にうさん臭いのですが、偽メール作成の意図、目的ははっきりしていません。なにか政治的陰謀はなかったのか、ぜひ究明すべきです。「政党がこれ以上できぬ」と放置してすまされぬ問題です。
民主党には、これ以上追及しては困る事情があったのでしょうか。マスコミも次の民主党代表の人事をめぐる報道に集中して、真相究明は忘れてしまったようです。しかし、この日本政治史でも稀有な事件が、なぜ起こったか、究明しないで、民主党の体質改善が出来るのでしょうか。
事の本質から目をそらして、目先の出来事に引きずられる日本のマスコミの悪いクセがまた繰り返されているようです。事態の思いがけぬ展開に、ほくそ笑んでいる「悪いやつ」が、どこかにいませんか。
1億円のヤミ献金はだれの懐に
不合理な話といえば。自民党旧橋本派に対する「1億円ヤミ献金事件」の展開です。東京地裁が、3月30日に村岡兼造元官房長官に無罪判決を出したことをおかしいというわけではありません。むしろ、私はこの判決を歓迎する一人です。
問題は橋本龍太郎元首相らが日本歯科医師連盟から1億円を受け取ったことは確からしいのに、それは争点にならず、だれが裏金化を決めたのかが争われたことです。事件の本質に迫ることは避けた検察側の態度は不可解です。
2時間半を超える判決理由の言い渡しを終えた後、川口政明裁判長は村岡元長官に、「今、サクラが咲いています。今後のことはどうなるかわかりませんが、せめて、今夜一晩ぐらいは平穏な気持ちでサクラを楽しんでみてはいかがでしょうか」と述べたといいます。裁判官の目にも余りにも不合理な起訴と見えたのでしょう。
この事件はさらに高裁で争われますが、どうも政治献金のあり方の本質をただだす裁判にはなりそうもありません。
こじれる日中関係
もう一つ、橋本元首相関連のニュース。なにも橋本氏を標的にしているのではありません。たまたま、時期が一致しただけです。場所は中国の北京。橋本氏は、中国の胡錦涛国家主席と人民大会堂で日中友好7団体代表団の代表として約1時間半にわたり会談しました(3月31日)。
この席で、胡主席は日中関係の改善に強い意欲を示す一方、昨年4月以来開かれていない首脳会談について「日本の指導者がA級戦犯をまつる靖国神社をこれ以上参拝しなければ、いつでも開く用意がある」と述べました。
胡主席はポスト小泉政権でも、日本の首相が靖国に参拝するかどうかを対日外交の基準の一つとする考えを表明したのです。中国としては、当然の発言でしょう。
これに対し橋本氏は、朝日新聞の報道によれば、「多くの日本人の心の中にある靖国神社は身近な人の姿ではないか」と反論しました。その上で「胡主席の話は日本に対する一つのメッセージと受け止める。率直なご意見に感謝する」と述べたといいます。
なぜ、橋本氏はここで「感謝」したのか、すこぶる疑問に思います。私は小泉首相の靖国公式参拝には反対です。しかし、その是非は日本国内の政治と宗教のあり方の問題として、日本国民が判断すべきことです。もちろん、中国に強硬な反対意見があることは、重要な判断材料として、十分に承知しておくべきことですが、この席で「感謝」する必要があったのでしょうか。
この「感謝」とは、かつては日本を代表する立場にあった政治家が、有力な日中友好団体を代表して口にすべき言葉ではなかったと思います。橋本氏の見識を疑います。
私がこのような言葉遣いにこだわるのは、靖国問題がポスト小泉の重要な争点に浮上しているからです。いかにも、中国の意を受けて、首相選びが進行するような印象を与えることは、日本の国際的地位を低くします。「土下座外交」といわれぬよう心すべきです。
一方、小泉首相の側も挑発的でした。小泉首相は橋本氏らの訪中を意識したように、予算成立にともなう3月27日の記者会見で「中国、韓国の政府による批判も、私の靖国参拝を理由に首脳会談を行わないことも理解できない」と改めて強調しました。これが、胡主席の発言を誘発したともいわれます。
これ以上、日中間の対立をあおるのは、国益になりません。その意味で気になるのは、3月31日に読売新聞が一面トップで報じた「自殺上海領事館員の遺書入手」という記事でした。私はこのトクダネ記事には、賞賛と激励の拍手を送ります。トクダネを抜けぬ新聞は歌を忘れたカナリアです。
一方、このトクダネが生まれた背後事情はどうなのでしょうか。だれがどのような意図で、橋本氏らが胡主席と会談する時期に、長文の遺書の内容を漏らしたのでしょうか、読売の記事の見出しには中国当局が「執拗」「恫喝」など、刺激的な言葉が踊っています。
そんな推測はしたくはないのですが、橋本訪中団が伝える中国側のメッセージを打ち消すために、仕組まれた情報漏えいであるとすれば、なかなか巧みな世論工作です。読売新聞が三面の主見出しに使った「手段選ばぬ『情報戦』」がなんとも、皮肉に見えます。
『週刊新潮』が4月6日号で報じた「『中国サイト』が流す小泉首相『国辱写真30枚』」」は目を覆いたいような気持ちで読みました。このような記事が中国側でも、日本側でも報道されないような日中関係を創り上げていかねばならないと痛感しました。アジア平和のために、国境を超えてマスコミの責任はますます重大です。
この国を導く政治理念の論争を
民主党の再生のためには、なぜこの党が日本の政治には必要なのか、根源的な問いかけがなされています。単なる党首の首のすげ替えですまされぬ事態です。新聞もテレビも、人事報道だけに熱中するのではなく、ことの本質をえぐる政治記事を書いて欲しいものです。
自民党も「敵失」に浮かれていてもらっては困ります。多くの国民は「小泉治世」によって、貧困層と富裕層、地方と大都会、大企業と中小企業といった具合に、格差が拡大したことを実感しています。「格差社会」の是正にどう取り組むか、真剣に考える時です。「ポスト小泉」では単なる人事報道に止まらず、新聞やテレビが主導して、国の未来をめぐる指導理念の論争が、花盛りとなるように期待します。
(小田原敦)
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